自分らしい演技をするには
自分のことを意識しなくてはいけない
最近のアニメを観ていて感じるのは、たとえば新しいキャラクターが登場したとしても、見た目などで「こういうキャラはこんな感じ」と、演技のイメージが定着してしまっているんじゃないかな、ということです。それっぽく演じれば、それっぽく聞こえてしまう。ですが、これでは誰が演じても変わらないということになってしまいます。以前、アニメ作品で上戸彩さんや宮迫博之さんとお仕事をさせていただいたのですが、彼らの演技はとにかく面白かった。定着したイメージを「声優」ではない彼らは知らないわけですから、何が出てくるのかわからない楽しさがあるんですよね。
自分らしい演技をするには、自分のことを意識しなくてはいけません。だから自分を指さして、たとえば「不細工です! デブです!」と言えることも大切。客観的に自分を見るというのは、人と自分が違う部分があるということを知ること。知っていたら、それだけ人と違う演技ができるんです。役をもらって現場に行くのであれば、どんなに似たようなキャラクターが過去にたくさんいても、自分なりにチャレンジし、明らかに違うように演じる。そして、現場に何かを置いてきてください。デビューしたからといって、一生仕事があるわけではありません。そうやって次につなげ、また一つの役を最後まで演じ、またつなげ、また演じる……。演じ、次につなげながら、仕事をする場を得ていくということ。必要とされ続けるということ。演じることは、一生追求していくことだと僕は思っています。
(2009年インタビュー)