約1年ぶりのリリースとなる安野希世乃さんの3rd シングル「フェリチータ/echoes」は『ARIA The CREPUSCOLO』のオープニング&エンディングテーマ。たくさんの人の想いが詰まった作品のテーマ曲に、どんな気持ちを込めたのでしょうか? 「echoes」に“Buddy’s Vocal”(Backing Vocal)として参加した、あの方とのエピソードも聞いてみました。
心を込めて歌うことが何より求められるタイトル
――3rd シングルは『ARIA The CREPUSCOLO』のオープニング&エンディングテーマとなりました。テーマ曲としてお話があったときはいかがでしたか?
プロデューサーさんから「頑張ってね」という言葉をいただき、すごく大事な作品を任せていただいたんだなと思いました。
今回の使命の大きさを受け取りました。
――『ARIA』は長年にわたって多くの人に愛されている作品ですからね。
本当に歴史の重みを感じますし、『ARIA』に影響されて人生が変わったとおっしゃるファンの方やクリエイターさんがたくさんいらっしゃる作品だと聞いていたので、それだけ人の心を動かす、血の通った作品なんだなと。
私も楽曲を歌わせていただくにあたって、心を込めて歌うことが何より求められるタイトルなんだなと感じました。
――「フェリチータ」の楽曲に関しては、どんな印象がありましたか?
幾何学的な、複雑に設計された難しい曲だなと思うんです。
その一方で、生音としてはピアノとストリングスが入っているんですけれども、パキッと硬い音がない、ある意味で現実離れしているというか、生々しさと対極のところにいる感性の楽曲だなと。
なので、緻密な計算によって作り上げられた曲だけれども、自分の歌で表現すべきことはとてもシンプルにしたほうがいいだろうなと思ったんです。
「考えるな、感じろ! 包まれろ!」という感じで(笑)。
――そういう感覚になるのは、安野さんとしても初めてでしたか?
「フェリチータ」に関しては、とても抽象的な楽曲だなというふうにも感じていて。
この楽曲に運ばれながら、自分は別のことを気づいたら考えはじめているというか、この曲が描いている情景を耳から受け取りながら、自分の中の「フェリチータ(=幸福)」の風景を思い出していたりする。
記憶にとてもアクセスする曲だなと思います。
個々が持っている故郷や思い出、印象的な一場面とかを気づいたら思い出したりしているんじゃないかな。
そういう意味で、この曲はすごいんですよ!
聴かせることだけが目的じゃなくて、ぼんやりと「あなたはどう?」って、ずっと語りかけているというか……。
――そう言われると、トランス状態のようというか、ちょっと怖い感じがしますね(笑)。
怖いですかね?(笑)
気づいたら地球も飛び出して、宇宙を漂っているかもしれない……みたいな。
それだけ幻想的ななかで、何を思い浮かべて、何を考えて聴いてもらってもいいよという、包容力がある曲ですね。
だから、これは朝一で聴くと危険だと思います。
瞑想が始まっちゃうので(笑)。
もう今日は頭をオフにして、自分をリセットするだけでいいというときのお供にしてほしいですね。
寝る前とか、お風呂に入っているときとか。
――ミュージックビデオもまた、少し不思議な雰囲気になっています。
「幸せに気付いたそのとき」とか「なにげない日々」とか、詞としてはすごく幸せに満ちた毎日を送っていらっしゃいますよね、この(歌詞の中の)人って。
それをあえて、人に囲まれたMVにしなかったことや、見ただけで多幸感がわかる画にしなかったことも、きっと監督の意図があるんだろうなと思っていて。
もしかしたら、あのMVの世界観は心の中の風景なのかもしれないです。
だからこそ、噛みしめている幸せを引き立たせるために、ああいう寂しい場所で歌わせたかったのかな?みたいなことを感じました。
――撮影でも寂しさを感じましたか?
撮影場所が廃墟だったので、怖かったですね。
地下3~4階くらいのところで、コウモリたちの息吹を感じながら撮っていました(笑)。
本当にコウモリが飛んでいるのを見つけたりしたんですけど、でも、そういったロケーションで実際に「フェリチータ」を流しながら撮影しているというのが、とても幻想的でした。
宇宙どころか、黄泉の国ともつながっちゃいそうな……。
すごく貴重なMV撮影を経験させてもらえましたね。