堀江由衣さんがリリースする2021年第2弾のデジタルシングルは、TVアニメ『先輩がうざい後輩の話』エンディングテーマ「虹が架かるまでの話」。SNSでトップクラスの人気を誇る社会人ラブコメディー作品のエンディングを彩るのにふさわしい、優しくてちょっとせつない楽曲に堀江さんが込めた想いをたっぷりと語っていただきました。
「虹が架かるまでの話」とハワイで見た虹の話
――「虹が架かるまでの話」はさわやかだけど、ちょっとせつなさも感じられるメロディーが印象的ですね。歌詞もよく読むと考えさせられるような部分があるというか……。
今回もそうですけど、アニメのテーマ曲を担当させていただくときにいつも意識しているのは「作品とどれだけリンクしているか」ということなんです。なので、作詞家の方にも原作のお話やアニメの展開をご説明したうえで書いていただいた曲になっています。
――『先輩がうざい後輩の話』というタイトル通り、主人公の女の子と会社の先輩の微妙な距離感を描いていくお話ですよね。
その二人の関係性がもどかしい感じなので、歌詞でも直接的な言葉をあまり使っていなかったりするんです。その辺りは社会人というより、ちょっと学生っぽい感じですけどね。もどかしかったり、友達が背中を押してくれたり、大人なのに恋愛の部分では学生の頃のような初々しさをもっている感じが作品の雰囲気なのかなって。
――「大人の恋愛」なんて言い回しもありますけど、意外と大人になったからといって恋愛が上手になるわけでもないですからね。
「案外そうだよね」とか「大人でも急に距離を縮めるのは難しいよね」とか、作品にもそういうところは漂っているのかなと思います。むしろこの作品のなかで描かれていることって、わりと「大人っぽい」ようなこととは無縁じゃないですか。なので、社会人のお話ではありますけど、学生の方が見ても共感する部分があるんじゃないかなと思います。あと、この作品に限らず物語のなかではこれくらいの微妙な距離感がいちばん描かれやすい気がしますね。「相手のことが気になって……」とか「お互いに意識しあって……」とか。それってつまり、そういうお話がみんな好きなんだろうなと。少女漫画も付き合っちゃうと意外と話が進まなくなったり、そこで終わりだったりしますからね。
――たしかに、少年漫画のラブコメとかでもそうですよね。
そこが気になるということは、それぞれ思い当たる節があるというか、「想いを言わずに終わってしまった」とか「きれいな思い出のままで取っておきたかったから、言わなくてよかった」とか、そういう経験がみんなにあるということなんだろうなと。だからこそ興味があるんだろうし、この曲にも共感してもらえるといいのかなと思います。
――レコーディングではどんなことを意識されましたか?
テンポ感という意味では、ミディアムテンポで歌いやすいところではあったと思うんですけど、冒頭から歌で始まるので、そこは難しかったところですね。聴く人によっていろんなニュアンスでとらえてもらえるようにと思うと、あまり強く出てもどうなのかなと思うし、ちょっと弱めに歌おうかなと思うと、意外とこのキーだと音程がブレやすかったりして。物理的なところとニュアンスで気を遣って、冒頭は試行錯誤しました。あとは意外とコーラスが多かったのが物理的に大変でした。
――冒頭やコーラスの部分以外は歌いやすかったという感じですか?
すごく歌いやすいかというと、そうでもないのですが、少し前(9月12日)にファンクラブイベントがあって、そこではレコーディングの時よりも歌いやすかったですね。
――その場で先行して聴けたファンの方はラッキーでしたね。
リリース前にひと足早く披露させていただきました。しかも、その直前のMCで「レアだから、ありがたがってください!」とお話ししてから歌ったので、SNSなどで「こんなに早く聴けてうれしいです」とか「レアな楽曲うれしいです」とか書いてくださった人がたくさんいらっしゃいました(笑)。
――タイトルの「虹が架かるまでの話」にちなんで、堀江さん自身の「虹」にまつわるエピソードがもしあれば教えていただけますか?
ハワイって、虹が有名じゃないですか。前に撮影でハワイに行ったときに、車で移動していたら、きれいな虹が見えたんですよ。そのときに現地のコーディネーターさんがハワイの虹にまつわる言い伝えを教えてくれて、「一重の虹を見たら、またハワイに来られる。二重の虹を見たら、願いが叶う。三重の虹を見たら、不老不死になれる」という。三重で急に叶うことのレベルが変わったなあって(笑)。それがすごく面白くて、不老不死になれるなら三重の虹も見てみたいなと思いました(笑)。
――みんなで一緒に見たら、全員が不老不死になるんですかね?
でも、ひとりで見るよりもそっちのほうがいいですよね。不老不死って誰にも言えない秘密だと思うので、コミュニティがあったほうが絶対にいいなと思います(笑)。
誰もが懐かしくなるような、素朴で身近な風景のなかで
――ジャケット写真も素敵な風景のなかで撮られていますが、場所がどこなのか気になりました。
これは「Adieu」のジャケ写を撮った湖の近くで、実は同じ日に撮影していたんです。
――ということは、時期的に真夏の撮影ではなかった?
でもこの日は暑かったんですよ。すごくお天気がよくて、暑くて。実は撮影の順番は「虹が架かるまでの話」がお昼で、「Adieu」が夕方だったりして。日が照っている時間帯にマフラーをして撮って、夕方になってちょっと寒くなってきたときに半袖で水に浸かって、「逆!」と思いながら撮影をしていました(笑)。
――このマフラーを巻いている姿は、学生っぽいイメージでしょうか?
学生さんでもいいし、大人でもいいし、この『先輩がうざい後輩の話』という作品が日常的で素朴な雰囲気のある作品だなと思ったので、楽曲もですが、ジャケットも素朴で身近な感じ+エモい感じに見えるといいなというのは意識しながら撮影しました。
――この景色も、思い出のなかにある風景という感じはありますよね。
「自分が子供の頃に住んでいた家の近所って、こうだったな」って思ってもらえたらいいなと。私は東京生まれの東京育ちなんですけど、こんなところが近くにあったような気がするし、そういう懐かしいエモさが出るといいなと思って、こんなジャケットになりました。……ただ、リリースが秋ということでマフラーを巻いているんですが、発表された時点ではまだ8月だったので「マフラー暑そうだな」と思われたんじゃないかなって(笑)。情報は早めに出ましたが、きっと曲を聴いていただく時期にはちょうどいい季節感になっているはずです。
――『先輩がうざい後輩の話』のなかでは、堀江さんは桜井優人という男子高校生の役を演じられていますね。
学生の男の子を演じることがあまりないので、ドキドキしながらアフレコ現場に行ったんですけど、男の子を意識してアフレコしたら「もっとかわいくお願いします」というディレクションをしていただきました。優人君は、特に序盤は「気弱で、自分に自信がもてなくて、でも優しい」男の子なので、その辺を重視したいというのと、この作品の女子は意外と芯が強い人が多いから、優人君は周りの人がみんな「助けてあげたい」「守ってあげたい」と思うようなマドンナ的存在なんですと言われて、「男の子だけど、マドンナなんですね!?」って(笑)。それで少しホッとした部分もありつつ、声的にはそんなに男の子っぽく作っていないというか、優しくて少し気弱なところを重視して演じさせていただきました。かわいらしいキャラクターなので、ぜひ見ていただきたいですね。
――ちょっと気の早い話にはなりますが、2021年もあと2か月で終わりということで、今年中に何かやっておきたいことはありますか?
私は文房具が好きなんですが、なかでも手帳が特に好きで、10月始まりの手帳2冊と1月からのものを1冊、合計3冊買っちゃって。でも、ほかにまだ理想の手帳があるので、できるだけそれに近いものを探して今年中に買おうと思っています。
堀江由衣デジタルシングル 「虹が架かるまでの話」
TVアニメ『先輩がうざい後輩の話』エンディングテーマ
作詞 ⾦丸佳史/作曲・編曲 中野領太
2021年10月16日(土)配信開始
配信サイト:https://yui-horie.lnk.to/rainbow
『先輩がうざい後輩の話』
「次にくるマンガ大賞2018」Webマンガ部門1位を獲得したSNS発の大人気コミックスが待望のアニメ化。入社2年目の社会人・五十嵐双葉と、ちょっとガサツだけど面倒見のいい先輩・武田晴海の日常を描いたラブコメディー。
作品公式サイト https://senpaiga-uzai-anime.com/
取材・文/仲上佳克