上坂すみれ

【声グラ限定】上坂すみれのPROPAGANDA CITY 2021 10/30(土)公演

上坂すみれ

2020年1月にリリースされた4thアルバム『NEO PROPAGANDA』。これを引っさげて行われる予定だったライブツアーは残念ながら全公演が中止となった。あれから1年半の時を経て、ようやく有観客でのライブが実現! 舞浜アンフィシアターに集まりし同志たちとともに熱狂した初日公演の模様をレポートする。

同志との久しぶりの再会はマスク越しでも笑顔が伝わる


昨年のツアーと今年4月に予定されていた公演の中止を経て、ついに実現した『上坂すみれのPROPAGANDA CITY 2021』。この日を待ち望んだ同志たちを引き連れて、たどり着いた決戦の地は千葉・舞浜アンフィシアター。上坂さん自身も作品のライブやイベントで何度か訪れたことのある会場だが、ソロでステージに立つのは今回が初めて。はたしてどんなパフォーマンスを見せてくれるのだろうか?

ライブの始まりを告げるのは、4thアルバム『NEO PROPAGANDA』に収録されたインスト曲「予感(Extra stage)」。生バンドによる迫力のある演奏に美しきダンサーチームも加わって「PROPAGANDA CITY」のタイトルにふさわしい、どこか怪しげな雰囲気の漂う空間を演出していく。その勢いに同志たちも反応して見る見るうちに会場全体のテンションが上がっていき、期待が最高潮にまで膨らんだところでステージ中央から上坂さんがついに登場! その姿は猫耳をつけたピンクのかわいらしさ全開のもので、赤く光るペンライトを手にした同志たちを大いに喜ばせた。

1曲目に歌ったのは、TVアニメ『イジらないで、長瀞さん』のオープニングテーマとして国内外でヒットした11thシングル「EASY LOVE」。疾走感あふれるナンバーで開幕ダッシュを決めると、次に歌ったのはなんと「よっぱらっぴ☆」。まるで上坂さんの私生活の一部を切り取ったかのような歌詞で同志の間でも人気となったこの曲が、まさか2曲目という、酔っ払うにはまだ早い時間帯で来るなんて! 多くの同志たちの意表を突いたに違いないセットリストで、早くもライブは混沌の模様を呈してきた。

最初のMCが始まると「どうも皆様、ズドラーストヴィチェ!」とにこやかに挨拶する上坂さん。ロシア語での挨拶はデビュー以来のトレードマークとなっているが、コロナ禍による自粛期間をはさんだせいか、いつもより懐かしい響きをもって聴こえてくるようだ。だが、そんな感傷に浸る間もなく客席の同志に向けて「生きてたんか、オタク!」と強烈な言葉をぶつけてくる上坂さん。もちろんこれは上坂さんなりの愛情表現であることは言うまでもなく、その後の「みんな、会えてうれしいです~(ウソ泣き)」という照れ隠しも含めて、われらの上坂さんが久しぶりのライブでも絶好調であることを確認できる時間となった。「お水はきっとおいしいでしょう」と言って水分補給を済ませた上坂さん。この日は新曲盛りだくさんということもあり、さっそく次の曲の準備に取り掛かる。

3曲目は『NEO PROPAGANDA』収録曲より「女神と死神」。ここではオープニングを飾ったダンサーたちが再登場し、クールでセクシーなダンスで上坂さんを盛り立てる。続けて歌った「眠れない魔物」と共に、往年のシティポップをほうふつとさせるナンバーは最近の上坂さんの楽曲の中ではもはや定番のジャンルとなりつつある。最近の上坂さんを立て続けに聴いた後は、懐かしい上坂さんも聴きたくなってしまうもの。そんなオタクのちょっとした願望にこたえるかのように、次に披露したのは2ndシングル「げんし、女子は、たいようだった」のカップリング曲「テトリアシトリ」だった。テクノポップ調の楽曲と独特の振付けが印象的なこの曲で懐かしい気持ちに浸れたところで、上坂さんはいったんステージから下がっていく。

このライブのために用意された幕間映像は『ドラゴン菫』と題した、学力の低い生徒を難関大学合格へと導く伝説の教師を上坂さんが演じる、どこかで聞いたような気もする壮大な物語。生徒役としてこんな茶番に付き合ってくれた……いや、快く出演してくれたのは『イジらないで、長瀞さん』や『いわかける!- Sport Climbing Girls -』で上坂さんとの共演経験のある鈴木愛奈さん。後のMCで「あいにゃ(鈴木さん)にギャルの制服を着てほしかっただけ」と上坂さんが裏話を明かしていたが、その言葉通りギャルJKの扮装がとてもよく似合っていた。映像のなかではドラマパートのみならずトークやクイズのコーナーもあり、上坂さんとふたりで楽しい時間を繰り広げていた。

映像が明けて、チェックのアイドル風衣装に着替えて再び登場した上坂さんはTVアニメ『鬼灯の冷徹』エンディングテーマ「パララックス・ビュー」を熱唱。続けて『ポプテピピック』オープニングテーマ「POP TEAM EPIC」を歌い、上坂さんが歌ってきたアニメタイアップのなかでも特にかっこいい2曲を連続で披露する形となった。このブロックはさらにかっこいい曲を続けて、「罪と罰 -Sweet Inferno-」で力強く締めくくった。

2回目のMCでマスク越しでも伝わってくる同志たちの笑顔を眺めて、改めて有観客でライブが開催できたことへの思いを口にする上坂さん。

「なかなかライブが開催できなくて、もう無観客でいいじゃん!と思ったんですけど、私のライブは私ひとりでは成り立たず、同志たちがニコニコしていることによって成立するわけでございます。本当にありがとう、スパシーバ!」

同志たちがみんなマスクをつけたまま、声を出せないのと同様に、この状況下でライブ恒例となっていた客席に行くことも同志に向かってモノを投げつけることも禁止されてしまった上坂さん。お得意の“場外乱闘”を封じられた形ではあるが、そのぶん同志との心の結びつきをより強固にして、ライブ後半もますます熱く激しく盛り上げていく。

堂々の大団円、そして最後のスローガンはどうなる!?


ここからは『NEO PROPAGANDA』収録曲に戻って「SPY」「アウターモスト -超自然恋愛-」、そして最新シングル「生活こんきゅーダメディネロ」カップリングにしてYouTube番組『上坂すみれのおまえがねるまで』テーマソングでもある「ものどもの宴」を初披露。とにかくこのライブは度重なる中止の影響もあって初披露の曲中心で続いていく。とはいえ、従順なる同志たちはきちんと予習を済ませてきているはず。その盛り上がりとライブを楽しむ気持ちはきっと上坂さんに届いていたはずだ。

幕間映像の後半をはさんで、ブラックとシルバーを基調とした制服風の衣装に着替えた上坂さんはスモークの中からさっそうと姿を現し、「すーぱー呂布呂布ぱらだいす!」を一気に歌いきる。アウトロのハイテンションなセリフもばっちり決まったところで、いよいよライブはラストスパートへ突入。

残る『NEO PROPAGANDA』収録曲の中から、まずは「夜勤の戦士のテーマ」を繰り出してくる。ここでは公式Twitterで事前に動画を上げていたサビ部分の振付けを同志にレクチャーするという、上坂さんのライブとしては目新しい試みを取り入れつつ、そのまま流れに乗って「快走!ラスプーチン」「ウエサカダイナミック」と3曲続けて披露した。タイトルからもわかるように、この3曲はアルバムの中でも特にトリッキーな立ち位置にいるものばかりだが、バンドやダンサーのサポートが入ることでいわゆるネタ曲的な雰囲気は薄くなり、むしろかっこよく聴こえてくるから不思議なものだ。ライブで歌うことで曲が化けるとはこのことかと感心しつつ、そんなライブを支えてくれたバンドメンバーとダンサーを紹介するコーナーを経て、本編ラストの楽曲「ネオ東京唱歌」へ。ステージの周りをぐるっと囲む大勢の同志たちに見守られながら、ライブはひとまず幕を下ろした。

エンドロールが上映された後も鳴りやまない、アンコールの代わりの拍手にこたえてステージに帰ってきた上坂さんは「地獄でホットケーキ」を歌い上げる。曲は地獄だが、同志みんなと心をひとつにしたここはまさに天国。本編では時間が限られていたMCもアンコールではある程度長くしゃべっていいということで、上坂さんは水を得た魚のように同志とのコミュニケーションを楽しんだ。しかし、おしゃれをしてきた女子にウザ絡みしたり、古のグッズTシャツを着た古参の同志をいじったりしながら雑談していたらあっという間に時間が過ぎていき、スタッフからの指示で催促されて最後のブロックへ。TVアニメ『ジャヒー様はくじけない!』第2クールオープニング主題歌となっている新曲「生活こんきゅーダメディネロ」と、これまた昔懐かしい「げんし、女子は、たいようだった」の2曲を続けて歌って、ライブはフィナーレを迎えた。

……だが、上坂さんのライブには欠かせない、ある恒例行事もこの状況下では実現が困難となっている。それは全員が声を合わせての「生産! 団結! 反抑圧!」のスローガンのコール。革命的ブロードウェイ主義者同盟、通称革ブロの発足以来行われてきたこのセレモニーがなければ上坂さんのライブは締まらないが、今回は同志が声を出さずにエアで「生産! 団結! 反抑圧!」を行うことに。無音の会場に上坂さんの声だけが響き渡り、それでも寂しさは一片もなく、久々の開催となったライブは笑顔で「解散!」となった。

<10/30(土)公演 セッストトリスト>

1. 予感(Extra stage)
2. EASY LOVE
3. よっぱらっぴ☆
4. 女神と死神
5. 眠れない魔物
6. テトリアシトリ
7. パララックス・ビュー
8. POP TEAM EPIC
9. 罪と罰 -Sweet Inferno-
10. SPY
11. アウターモスト -超自然恋愛-
12. ものどもの宴
13. すーぱー呂布呂布ぱらだいす!
14. 夜勤の戦士のテーマ
15. 快走!ラスプーチン
16. ウエサカダイナミック
17. 踊れ!きゅーきょく哲学(BAND inst)
18. ネオ東京唱歌
<アンコール>
19. 地獄でホットケーキ
20. 生活こんきゅーダメディネロ
21. げんし、女子は、たいようだった

鈴木健太(KENTA Inc)
取材・文/仲上佳克