国民的声優・日髙のり子さんが唱える、大事な本番で「失敗しない」魔法の言葉とは?

人前で話すとき、緊張してしまうという人は多いのではないでしょうか。発表会、面接、プレゼンなどの重要な局面であればあるほど、焦って本来持っている実力の半分も出せずに失敗してしまう――そんなとき、緊張をほぐすにはどうしたらよいのでしょう。

『タッチ』浅倉南、『となりのトトロ』草壁サツキ、『名探偵コナン』世良真純……誰もが一度は声を聴いたことがある国民的声優、ナレーターの日髙のり子さんによる「失敗しない魔法の言葉」、そして、「失敗しても、前向きになる方法」を紹介します。

 

1.失敗しない魔法の言葉

魔法の言葉「私、失敗しちゃうので!」を唱える。

頑張っていてもどうせ間違えたりしちゃうんだから、

気負わず、心身ともに柔らかく、楽な気持ちで本番に臨む。


 

NHKで平日の朝に生放送されている情報番組『あさイチ』で、生活に役立つ情報をクイズ形式で紹介する火曜の「クイズとくもり」コーナーのナレーションを担当している日髙さん。放送で流れている画面を見ながら同時に原稿を読む “生ナレーション” が初めてだった日髙さんは、毎回とても緊張していたそうです。

生ナレーションなので、やり直しはできない。10秒なら10秒と決められた時間内に収まるよう、体感で判断して読まなくてはいけない。原稿の情報量も多いし、間違えてはいけないと緊張して声も出づらくなってしまい、スタジオのMC、博多華丸・大吉さんからの呼びかけにも瞬時に答えることができなくて、落ち込んだことも一度や二度ではなかったと言います。

そんなある日、同じくナレーションを担当している『ミライ☆モンスター』(フジテレビ系列)で、ボクシング界のミラモンの言葉が心に残りました。「筋肉を強く鍛えることよりも、柔らかくして柔軟性を保つことに力を入れている」「筋肉が硬いとパンチを繰り出すときにワンテンポ遅くなってしまうけれど、筋肉が柔らかければすぐに反応して瞬時にパンチを打つことができる」。筋肉を鍛えて鍛えて鍛え抜くという人はたくさんいたけれど、緩めると言う人は珍しく「もしかしたら『あさイチ』でうまく受け答えができないのは、硬くなっているからかもしれない。心身ともに柔らかくしたら、うまくいくんじゃないかしら?」とひらめいた日髙さん。

そこで、なぜ自分が緊張してしまうのかを改めて考えました。その結果、ちゃんとやらなくちゃと思うあまり失敗を恐れているからだと気づいた日髙さんは、自らに問いかけます。

「私は失敗するのを怖がる人だった? いやいや、むしろ頑張っていてもどこかで必ず何かやらかしてしまう惜しい人だった。それで落ち込んだんだっけ? いいえ、みんなに笑われて面白がられて楽しかった。しかも生放送のラジオ番組をしていたときなんか、『失敗のない日髙のり子は星のない夜空のようなものだ』と言われていたりした。そうよそうよ、私ってそういう人じゃん!」。

そして思いついたのが、よく観ていたTVドラマの決めセリフをもじった言葉「私、失敗しちゃうので」。この言葉を本番前に心の中で唱えることで緊張がほぐれ、嘘のように失敗が減ったそうです。

「失敗しちゃう」と認めることで、むしろ失敗しなくなる。ちょっと不思議にも思えますが、マネしてみたくなる魔法の言葉です。

2.失敗しても、前向きになる方法

ネガティブな気持ちになりそうなときは、

アスリートになり切って

インタビューをシミュレーションしてみる。


続いては、「失敗しても、前向きになる方法」をご紹介します。日髙さんがナレーションを務める前述の『ミライ☆モンスター』は、将来のスポーツ界を引っ張っていく可能性を秘めた“金の卵”に密着する応援ドキュメンタリー番組。試合で思うような結果を出せず涙をこぼすことがあっても、常にその目は未来を見つめています。試合後のインタビューでは「自分の修正点に気づけたので、そこを強化していきたい」とか「今日のこの経験を無駄にすることなく次の試合に活かしたい」といったように自分自身を冷静に分析し、これから何をすればいいのか気持ちを切り替えることがとても上手な彼ら。フィジカル部分は成長途上でも、メンタル面は一流アスリートと少しも変わりません。

そこで、ネガティブな気持ちになりそうなときにおすすめしたいのが、アスリートのインタビューのシミュレーション。たとえば、こんなふうに。

「今日のお仕事はいかがでしたか?」
「そうですね、ちょっと自分のイメージどおりとはいかなかったんですけど、そこを修正して次回に活かしたいと思います」。

「馬鹿馬鹿しいって思うでしょ? でも騙されたと思って試してほしいな」と語る日髙さん。実際にやってみると、気持ちが自然と前向きになるのがわかります。それは、その場の感情に流されてしまうのではなく、今の自分を冷静に分析して「次に活かす」と言葉にすることで、「ここがダメだった」ではなく「こうすればいいのか!」と心がポジティブなほうへと向かうようになるから。

うまくいかなかったことを引きずって、くよくよしてしまうことがよくある。そんな悩みをもっている人に、ぜひ試してほしいライフハックです。

日髙のり子 天職は、声優。

この記事は、日髙のり子さん書籍『天職は、声優。』の一部を編集部の視点で再編集したものです。