2021年6月に、EP『hear me?』でアーティストデビューを飾った山下大輝さんが、3月30日にデジタルシングル「キャンドル」をリリース! そこで、楽曲制作時の思いや、レコーディングについて語っていただきました。同曲の歌詞に込めた山下さんの気持ちとは……?
山下大輝として言葉を発するのは不思議な気持ち
――まずは、『hear me?』リリース直後のお話をお聞かせください。同作は、オリコンランキングでデイリー4位、ウィークリー8位でした。かなりの高順位ですが、それを知ったときはどう感じましたか?
正直、売れる・売れないはあまり考えていなかったんです。僕のアーティスト活動は「新たなチャレンジをしたい」という思いがメインで。そのなかで、役者としての自分も成長できて皆さんに届けられるものが増えたらいいなという部分につながっているので。ただ、そうして発表した5曲が、多くの人に愛されているんだとわかったのは純粋にうれしかったです。「たくさんの人に聴いてもらえているんだ」「何か伝わるものがあったんだ」ということを実感できました。
山下大輝 1st EP「hear me?」Trailer
――アーティストデビューを動機として声優とはまた違った部分で活動を広げられたら、とおっしゃっていましたが、現時点でその実感はありますか?
ありますね。コロナ禍に入ってすぐ、声優の仕事は数カ月というレベルで止まってしまったんですが、声優とは別にアーティスト活動もしている方たちは歌でバトンをつないで、みんなにエールを送っていたんです。それを見て羨ましいなと思ったし、アーティスト活動をしていると、そういう気持ちの共有の仕方もできるんだ!と思ったんですよ。そうして、僕自身も『hear me?』でポジティブなエールを送ることができました。自分のやりたいことができたなと感じています。
――2021年9月には、バースデーイベントでライブコーナーも設けていました。アーティストだからできることを体現されているなと感じました。
あのライブは、すごく不思議な気持ちになったので印象に残っています。ライブ自体はこれまでにも作品関連で何度もやらせていただいているんですけど、その時は演じているキャラクターに没頭しているので「キャラクターを感じてほしい!」という思いがほぼ100%を占めているんです。だから合間のMCでも、「このキャラクターならこう言う」とセリフを言う感覚でいられるんですよ。でも、今回は他の誰でもない“山下大輝”としてステージに立っているじゃないですか。これが僕にとってはすごく不思議でした。歌う時は、その曲をイメージしたキャラクターになれるんですけど、自身のイベントでのMCは自分の言葉をそのままお客様に届けることになるので……。
――そのあたりは、まだなじんでいないところなのかもしれませんね。
そうなんでしょうね。“山下大輝”というキャラクターを発見している途中という感じです。だから今後ブレるかもしれないんですけど(笑)、いつか見つけられたらいいなと思っています。
――では、アーティスト活動に自信はついてきましたか?
ちょっとはついてきたと思いますけど……そこもこれからですかね! 今後の課題だと思っています。僕と同じく声優でアーティスト活動をされている方って、それぞれに異なる考え方をもって臨まれていると思うので、僕なりの考え方を見つけて自信につなげていきたいです。
――声優アーティストをされている先輩方には、相談などしますか?
しょーたん(蒼井翔太さん)にはけっこうします! それこそ、先ほどお話していたような、“自分”としてお話するMCについても聞いてみました。しょーたんからは「大ちゃんらしいね!」と(笑)。どういうことなのか詳しくはわからないんですけど、きっと褒めてくれているんだろうなと受け取ってそれ以上深くは聞いていません(笑)。
自分の気持ちに素直に“決めつけない”楽曲を
――では、デジタルシングル「キャンドル」についても。今回の楽曲を制作するにあたり、山下さんからは何か要望は出したのでしょうか?
けっこう出させていただきました。今回は、(ボカロPの)くじらさんの良さや世界観をそのまま詰めていただきたいというのが大前提で、加えて「みんなの心に寄り添えるような曲」をリクエストしました。テーマとしては、『hear me?』と似ていると思うんですが、あえてガラッと変えなくてもいいのかなと思うんですよ。
――2枚目だからといって。
はい。『hear me?』を制作していたのは1年くらい前になりますけど、当時と今で生活環境はあまり変わっていないじゃないですか。もっと変わるかなと思っていたけれど、まだまだいろんなことを気にしたり気をつけたりしなくちゃいけなくて、息苦しい。なので、伝えたい思いにもそこまで変化がないのが正直なところなんです。
――もの作りをしていると、どうしても「前作と大きく違うものを」と考えがちですが、山下さんは自分の今の気持ちに正直に楽曲制作と向き合ったのですね。そのほうが聴く人たちには響きそうです。
だから大きくは変えず。今は本当に大変だけれど、手を取り合おう。そうして、半歩でもいいから前に進もうという思いを込めました。タイトルになった“キャンドル”は、スポットライトのようにこうこうと照らすものではありませんけど、寄り添ってくれるような、あると安心するし穏やかな気持ちになるイメージなんです。そのイメージが、自分の気持ちや伝えたいこととすごく合っていると思ったので、これをヒントに曲を作ってもらいました。それと、歌詞に関しては全部を“決めない”ようにしてもらいました。男性にも女性にもとれるような内容になっているし、受け止め方も聴く人次第になるような形になっているんです。
――だからなんですね、すごく独特な歌詞だなと感じました。気分によっても受け止め方が大きく変わりそうなくらい抽象的なんだけど、ちゃんと世界が出来上がっているというか。
素敵ですよね。くじらさん独特の言葉のチョイスとかもあって、いろんな角度から考えることができる歌詞になっているなと思います。なので、聴いた方にはいろんな思いを巡らせてもらって、その考えを大事にしてほしいです。
――そもそも、メッセージに幅を持たせた意図って何なのでしょうか?
僕、決めつけられるのが好きじゃないんです。「男らしいよね」「女らしいよね」みたいな言葉は褒めているようで褒めていない気がするし、「君はこうあるべきだ」と言われると息苦しい。「解釈違い」と言って相手を否定するやり方も苦手なんです。そのくらい強い意見があるのは素晴らしいことだけど、その考えを周りに強要すればするほど世界を狭めてしまう気がするんですよね。なんでもかんでも正解を求めなくていいじゃない、という意志を込めて、今回の歌詞はなるべくいろんな思いを巡らせてもらえるような内容にしてもらいました。
――くじらさんならそういう曲を作ってくれるだろうという期待もあったのですね。
そうですね。くじらさんは、聴いている側に余白を持たせた歌詞や世界観作りが非常にうまい方だと思っていたんです。だからこそ、この繊細な感情をどうにか形にしてくれるんじゃないかと。実際、とても素敵な楽曲にしてくださってすごくうれしいです。
――初めて聴いたときのインパクトも大きいでしょうね。
サビ始まりで、その後何回もサビがくる面白い構成になっていて。一度聴いただけでサビが耳に残って、すごくいい曲だなと瞬間的に思いました。サビを何度も歌うことによって思いの強さが積み重なっていく感じがするし、一つの作品というか、物語として景色が見えた感じがしました。
――では、レコーディングはいかがでしたか? メロディーの上下が激しくて、難しそうな楽曲だなと感じましたが……。
難しかったです。でも、くじらさんにお願いしたからにはそういうのを求めていた自分もいたので(笑)、何だかんだ言ってすごく楽しみでした。レコーディング当日は、広いメロディーレンジの中で歌をどうやって響かせようかというところも話し合いながら録っていきました。例えば、実際には地声で出せる高さだけど裏声にしてみる、とか。
――そういう見せ方もあるのですね。
そうなんですよ。で、最後のサビでは裏声ではなくあえて地声でガンといったのもこだわりです。要所でよりエモーショナルなほうを選択していきながら録りました。もちろん、全部をエモーショナルに振りすぎず、バランスを取りながらですけどね。全力で挑もう!と意気込んだ結果、撮り終える頃にはめちゃくちゃヘトヘトになっていたんですけど、その甲斐あってとても良い感じの曲に仕上がったのではないかなと思います。
――山下さんの歌声がすごく心地よい楽曲だなと感じました。メロディやリズムも気持ちいいですし、何度聴いても楽しいです。
本当ですか? なら良かったです。僕はすでに歌いすぎているし、聴きすぎているのでわからなくて(笑)。だからこそ、初めて聴く人たちがどう感じるかすごく興味があります。ぜひ感想を教えてください!
【スタッフリスト】
取材・文/松本まゆげ
【インフォメーション】
2022年3月30日(水)~配信中
デジタルシングル「キャンドル」
作詞・作曲・編曲:くじら
ジャケットイラスト:大鳥
各音楽配信サービスにて配信中
https://A-Sketch-Inc.lnk.to/Daiki_Yamashita_Candle
▼山下大輝 Music Staff Official Twitter @DAIKING_staff
▼山下大輝 Music Official Site https://yamashitadaiki.com/