堀江由衣さんのニューアルバム『文学少女の歌集Ⅱ-月とカエルと文学少女-』は、2019年にリリースした前作『文学少女の歌集』の流れをくむ作品。どうして『Ⅱ』の制作に至ったのか、今回はどんな楽曲が収録されているのか、そして「月とカエル」とは何なのか? 気になるところをすべて、堀江さんに答えていただきました。
カエルの話をしていたら、カエルの曲が上がってきました
――新しいアルバムは10thアルバム『文学少女の歌集』を引き継ぐ形のタイトルとなっていますが、制作の経緯を教えていただけますか?
前回の『文学少女の歌集』は、写真のイメージやビジュアルの世界観から入っていって、その雰囲気に合った楽曲を集めていくという作り方をしていたんですけど、あれから2年ちょっと経って、自分の好きな世界観があまり変わっていなかったんです。前回は夏のイメージでしたが、今回は秋・冬~春のはじめくらいの季節感のビジュアルをまず作りたいなと思いました。タイトルも前回からの流れということで『文学少女の歌集Ⅱ』になりました。
――「文学少女」で「春のはじめ」というと、卒業のイメージも浮かんできますね。
私の中には最初はあまりなかったんですよね。2年17組だから、卒業しないので(笑)。でも、イメージ写真を作家さんにお渡しして、お願いすると、卒業がテーマになった曲が2曲くらいあったので「なるほど!」と思いました。
――今回はサブタイトルに「月とカエルと文学少女」と入っていて、リード曲のタイトルも「月とカエル」になっていますが、何か関連があるのでしょうか?
サブタイトルで何か付けたいなとは思っていて、「文学少女の逆襲」とか「帰ってきた文学少女」みたいな(笑)。それはまたアルバム制作の最後のほうに考えればいいかなくらいの気持ちでいたんですけど、sajiのヨシダタクミさんに書いていただいた「月とカエル」という曲が上がってきて、「月とカエルと文学少女」というタイトルがパッと浮かんだんです。曲自体もアルバムのテーマを表したすごく素敵な曲だったので、リード曲にさせていただきました。
――いろいろストーリーが想像できるようなタイトルですよね。
語感もいいですし、たまたま「月とカエル」を作っていただく直前に行っていたロケでカエルの話をしていたので、自分のなかでタイムリーだったというのもあって。
――カエルの話とは?
カレンダーやライブのパンフレットの撮影をしていたときに、ちょうどカエルがいたんですよ。私は好きなんですけど、スタッフさんにカエルが苦手な人がいて、その人のためにほかのスタッフさんがカエルを見つけたら除けてあげていたんですね。でも私は「カエル見たいんだけど!」とか言いながら遊んでいて。そんな感じでカエルの話で盛り上がっていた直後に「月とカエル」が来たので、本当にびっくりしたんです。「ヨシダさん、あの現場にいたっけ? なんで知っているんだろう?」って。曲も疾走感があるし、さわやかだし、エモさのある楽曲に仕上げていただいて、すごく素敵だなと思いました。
――歌詞にもカエルが象徴的に出てきていて。
カエルが出てくる曲って、たぶん私は初めて歌うと思うのですが、歌詞に「カエル」という言葉を入れるのって難しそうじゃないですか。自分で作詞をしたとしたら「どうやってカエルを入れる?」という話になったと思うんですけど、ヨシダさんの歌詞になった途端まったく違和感がないし、むしろカエルがすごく素敵な存在に感じられて。
――ヨシダさんとは今回が初タッグになりますよね。
以前『堀江由衣の天使のたまご』という私のラジオにヨシダさんがゲストに来ていただいたことがあって、そのときの台本に作家さんが「堀江由衣の楽曲は書かないんですか?」というようなことを書いてくださっていたんですね。それを収録中に言ってみたら「全然いいですよ」と言って頂けて、その場ではそれで終わったんですけど、その後、私が実際にアルバムを作りはじめた頃にもう1回ゲストで来ていただいて、そこで「あれ? そういえば前に曲を作ってくれるって言いましたよね?」という話になって(笑)。作家さんのおかげで1曲作ってもらえたというか、言ってみるものだなというか……。
――実際は1曲どころか、「月とカエル」を含めて3曲も作ってもらっていますね。
曲を作っていただくことが決まった後に、ダメ元でご相談してみたら、なんと引き受けて下さって。それで「こういう曲とこういう曲がアルバムに足りていない」というお話をしたら、2曲も作ってくださったんです。結果、3曲収録させて頂くことになりました。
――それが「25:00」と「ラブアテンション」ですね。
「25:00」は強めのマイナー曲が足りていなかったのと、それと女の子っぽい曲を作っていただいたんですけど、歌うとなるともう難しくて……! たぶんヨシダさんご自身で歌うとなんてことないと思うんです、ものすごく歌がお上手な方なので。今までの自分にない雰囲気の曲なので、すごく素敵だなと思いつつ、それと同時に「これ歌えるのかな?」と思いながら歌わせていただきました。「ラブアテンション」は元気な女の子のイメージで、今回のビジュアルの世界観からすると元気な女の子の曲って中々はまりづらい気もしますが、しっかりこの世界観に合っていて、且つ明るくて勢いのある曲なので、これもまたアルバムのなかでのポイントになる曲だなと思っています。