堀江由衣さんの最新デジタルシングル「秘密の庭のふたり」は少年とメイドの物語を見守るエンディング主題歌【独自取材】

田舎の小さな屋敷の主人・ゆうりと、彼の前に突然現れたメイドのリリス。素性も目的も不明だが仕事は完璧にこなすリリスが怪しすぎて、ゆうりは困ったことに何も手につかなくなっていた……。孤独だった少年とミステリアスなメイドが少しずつ絆を育んでいく物語『最近雇ったメイドが怪しい』。そのエンディング主題歌に込めた思いは？

表のきれいな庭よりも、小さな裏庭のイメージで

――「秘密の庭のふたり」はTVアニメ『最近雇ったメイドが怪しい』のエンディング主題歌ですが、レコーディングではどんなことを意識されましたか？

今回、私は五条院つかさちゃんという女の子を演じさせていただいていて、つかさちゃんはリリスとゆうりの二人の関係性を見守りながらキュンキュンしている女の子なんですよ（笑）。その雰囲気がちょっと出るといいなと思いました。ものすごく役に寄せて歌うとかではないんですけど、私の思い描くつかさちゃんの声のイメージと歌のイメージがちょっと重なるといいなって。つかさちゃんはモノローグだとすごくおしゃべりなんだけど、本当は少しおとなしい女の子だったりもするので、いろんなつかさちゃんたちがナイショ話をしているみたいな、そういう印象の歌にならないものかなと思いまして。それでレコーディングでメインの歌を録った後にウィスパーで何本か重ねてみるとか、TDの作業のときにもそれをどこに配置したら影から見守ってコソコソ何か言ってるみたいな雰囲気に近づけるかなというのをエンジニアさんと相談して作っていました。

――曲のタイトルは「ふたり」になっていますけど、歌詞としては第三者の目線ということなんですね。

それはどちらとも取れるように、ではありますね。二人のうちのどちらかでもいいし、恋愛相談に乗っている友達みたいな目線でもいいし。

――「秘密の庭」という言葉の響きも素敵ですね。

そこはナイショ話とか、そういうニュアンスを入れたかったんですけど、「秘密」って、そんなようなタイトルのアルバムがあったし、「庭」もそんなようなアルバムがあったし、私はこういう雰囲気の単語が好きなんだなって（笑）。でも、「庭」というのは今回の曲のなかで浮かんだ風景でもあるんです。ゆうりとリリスが暮らす家の、表のきれいな庭というよりは勝手口から出た小さいお庭みたいな。そこに二人がいるほうがただの主人とメイドではなくて、もうちょっと近しい関係性に見えるなと思って、いわゆる洋館のきれいな庭とかではない、ちょっと掃除道具も置いてあるような庭を今回の曲に関してはイメージしました。なので、ジャケット写真も裏庭みたいな雰囲気の場所で撮っています。

――裏庭っぽい雰囲気となると、逆に撮影場所を探すのが難しそうですね。

そうなんですよ。しかも梅雨の時期の撮影だったというのもあって、屋根のある場所を探したら、都内に土の地面があるスタジオがあって、そこで撮影させていただきました。ドアもまさにお屋敷の勝手口みたいな雰囲気で、そこにほうきとかバケツとかを小道具で置いてみたら、本当に裏庭で作業しているような感じになりましたね。

――堀江さんご自身の「庭」にまつわるエピソードは何かありますか？

私は東京生まれ東京育ちなので、家に庭なんてもちろんないんですけど、青森のおばあちゃんの家には普通にお庭があったんですよ。ちゃんと広いお庭で、たまにおじいちゃんが木を切っていたり、庭の一画にある池には鯉とか金魚とかカメとかがいたりして。子供の頃はそういうものだと思っていましたけど、今思うとまあまあの大きさの庭でした。

――いつかは自分も広い庭のある家に住んでみたい？

庭のある家、いいですよね。私の夢は庭に小屋を建てて、そこをシャンプー小屋にして、シャンプーの上手い若手の美容師さんを雇って、毎朝シャンプーしてもらうことなんです。億万長者になったとき用の夢なので、たぶん一生叶うことはないんですけど（笑）。

アフレコで衝撃を受けたキャスティング

――『最近雇ったメイドが怪しい』はタイトルから想像するのと実際に見てみるので、かなり印象が変わる作品ですよね。

私も最初は「どういう話なんだろう？」と思っていました。メイドさんが男の子を誘惑していく話なのかと思いきや、実はゆうり君のほうが天然の人たらしというか、逆にメイドさんが動揺しちゃうような感じのやりとりが繰り広げられていて。率直すぎるゆうり君の、本人は気づいてないけど愛情表現みたいになっているところがすごく微笑ましいですし、リリスはリリスでまだちょっと謎の部分が残されていて、だから二人の関係性は一見ほっこりするんだけど、ゆうり君が家族を亡くしてしまったというのもあって、家族愛みたいなものがテーマになっているような気がします。ほとんど二人しか登場しない話数もあるので、キャストの二人は大変だなとは思いますけど、やりとりがかわいらしかったり素敵だったりするので、見応えのある作品だと思います。

――メイドのリリスが高橋李依さんで、ゆうりが早見沙織さんというのが意外なキャスティングでした。

私も初めてアフレコに初めて行ったときに頭のなかで勝手に逆にしていて、テストでしゃべりだした瞬間に「ええ～!?」って思って（笑）。「二人が入れ替わるみたいなシーンあったっけ？」と思って台本に載っているキャストの名前を確認したら「逆だ！」となって、テストが終わった後に「逆だと思ってたから衝撃が大きかったよ」みたいな話をしたら、同じくその日が初登場だった小松未可子ちゃんも「私も実は……」って（笑）。キャスト表って、言うほどじっくり見ないじゃないですか。勝手な思い込みってすごいなと。でも、逆だからといって何かということではなくて、ゆうり役の早見さんもめちゃくちゃかわいい男の子だし、リリスはリリスで本当にぴったりで、どちらも素晴らしいなと思いました。

――小松未可子さんはつかさの執事の藤崎役ですが、こちらはどんなペアですか？

　こちらも仲よくやれているので楽しいですね。ゆうりとリリスが真面目にやっているなかで、つかさちゃんの心のなかの暴れ具合が強めなので、それを藤崎がたしなめるみたいな感じで。そこはゆうり＆リリスと違う部分ですけど、そういうみんなの関係性がとにかく全部かわいらしいので、ぜひ見ていただきたいなと思います。

――「秘密の庭のふたり」と同日の８月７日には『堀江由衣 LIVE TOUR 2022 文学少女倶楽部Ⅱ～放課後リピート～』のライブ音源が配信されますね。

前にも2019年の『文学少女倶楽部』というツアーのライブ音源を配信していたんですけど、今回も『Ⅱ』なので、同じように配信しようかとなって。ライブ音源というのはちょっと恥ずかしいんですけど、前に配信したときにすごく喜んでくださる方が多かったので、今回もやってみようかなということで配信が決定しました。

――まだまだ夏真っ盛りですが、堀江さん流の夏の過ごし方や暑さ対策などがありましたら教えてください。

暑さ対策はこれです。（カバンから取り出して）日傘！　これはサンバリアという日傘なんですけど、遮光100％なんですよ。あまり100％って言わないじゃないですか。

――なかなか100％って断言はしないですよね。

なんですけど、これは本当に100％と謳っていて、外が白で中が黒というのがいちばんいいんですって。熱を集めずに、照り返しを拾わないようにするみたいな感じで。しかも私は日傘を壊しちゃいがちなんですけど、これはすごくしっかりしていて壊れにくくて、そういう完璧な日傘なので、夏はこれを使っています。

――男性だと日傘を使うのに抵抗があるという人もまだまだいるようですが。

でも、直射日光が当たっているのと当たっていないのとで温度が全然違うので、日傘は無理せず全員差したほうがいいと思います。本当に温度が変わるので！

取材・文／仲上佳克