熊田茜音「アニメで同世代の子が世界に向けて戦っている勇姿を観たら、自分も頑張ろうって」【声優図鑑 by 声優グランプリ】

キャラクターの裏に隠された声優たちの素顔に迫る、インタビュー企画『声優図鑑 by声優グランプリ』。

今回登場するのは、『転生したらスライムだった件』(エレン役)、『ライフル・イズ・ビューティフル』(渋沢泉水役)などに出演し、2020年からソロアーティストとしても活躍する熊田茜音さん。デビューしてからめまぐるしく活動を続ける中で、迷ってしまったことや先輩方から教わったことなどを、じっくりと語ってくれました!

熊田茜音「声優図鑑」

熊田茜音
くまだあかね●2月3日生まれ。 Apollo Bay所属。主な出演作はアニメ『織田シナモン信長』(尾田市子)、『転生したらスライムだった件』(エレン)、『キラキラハッピー★ ひらけ!ここたま』(七瀬千春)、『ヒーラー・ガール』(森嶋響)ほか。

オフィシャルサイト:https://kumaka.jp
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約30社のオーディションを経て、ついにグランプリ受賞

――声優やソロアーティストとして活躍する熊田さんですが、幼少期はどんな子供でしたか?
おばあちゃん子で、動物が大好きな子供でした。家ではアニメが流れているのが日常で、幼稚園の頃に観ていたのは『ふたりはプリキュア』ですね。家族が観ていた『幽遊白書』『宇宙戦艦ヤマト』の影響も強くて。

――ジャンルがいろいろで、アニメ好きになりそうな家庭環境ですね。
好きでしたね〜。中学時代に人間関係に悩んでいた時、影響を受けたのは『魔法少女まどか☆マギカ』でした。まどかやほむらちゃんみたいな同世代の子たちが、世界に向けて戦っている勇姿を観たら、キャラクターというより一人の人間として尊敬できて、自分も頑張ろうって勇気をもらえました。あらためて声優という職業を意識したし、『HUNTER×HUNTER』のゴンやキルアを演じているのが女性だと知ってからは、さらに声優への憧れが強くなりました。

――多感な時期にいろんな作品から影響を受けたんですね。声優を目指し始めたのは、いつ頃から?
憧れはありましたけど、自分の声に自信がなくて……。本格的に目指し始めたのは高校生の時でした。LiSAさんのライブに行った時、泣いて笑ってすごく楽しくって、今の自分の言葉にできない感情を、自分発信で届けられる人間になりたい!と強く思って。それからオーディションやボイストレーニングを受けるようになりました。

熊田茜音「声優図鑑」

――2017年には、声優アーティストオーディション「ANISONG STARS」でグランプリを受賞しています。
30個くらい受けて、最終審査までいくけど合格できなくて……。高校3年で、そろそろ進路を決めないといけない時に、このオーディションを受けました。歌とお芝居の両方できるところに惹かれて。「本気なら自分で頑張れ」って背中を押してくれる両親だったので、当時週6でバイトして自分でお金を貯めながら、ネットや雑誌で見たオーディションに片っ端から応募して、週末はほとんどオーディションに行っていました。

――そこまで頑張って、ようやくのグランプリだったんですね。受けた後の手応えはありましたか?
家を出る時、お母さんに「絶対グランプリ取ってくるね!」って言ったんですよ。手応えというより、やってやる!みたいな気持ちが強かったですね。これでダメなら、私の目指す場所はここじゃないんだって。

普段から心を動かす練習をして、独学で芝居の鍛錬

――声優を始めたばかりの頃、思い出に残っている作品は?
デビュー作の『転生したらスライムだった件』です。声優のお芝居は独学だったので、YouTubeやテレビでアフレコの裏側をチェックしていましたけど、実際に自分がやってみたら、一度にやることが多すぎて、全然できなくて。マイクワークで動きがわからなくなって、マイクとマイクの間でセリフを叫び、声が入っていなかった……っていうドジをするレベルで緊張していました。

――そんなエピソードがあったとは。この作品は第2期まで放送されて、エレン役を長く演じています。最初に携わった頃から変わってきたことはありますか?
恥ずかしいことですけど、最初はエレンを表現することに精一杯で。現場を重ねて先輩方のお芝居を見ているうちに、周りが見えていないことに気づいたんです。お芝居って、その場でないと受け取れない感情みたいなものがたくさんあるから、今は目の前にいる相手と心を通わせることで、役として生きることができるんだなと感じています。研究する時間も大事だなって。

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――研究したことで、変わることができたんですね。
バイトだけでは学校に通うのが難しかったし、独学でしか学べなかったことがコンプレックスだったので、いろいろ研究しました。この時は、アニメで流れる先輩方のセリフを真似してボイスメモを録っていたんですけど、アクセントや言い方は一緒なのに全然聞こえ方が違って。なんでだろうって思ったら、私は心が動いていないんだ……って。それからは、日常の中でできるだけ本音でしゃべって、できれば目の前にいる人を笑顔にできるように心掛けたりして、心を動かす練習をしました。

――その後、2019年の『ライフル・イズ・ビューティフル』では、高校生の渋沢泉水という等身大の役を演じていました。
ありがたいことに、全話出演させていただいた作品です。渋沢泉水ちゃんは、芯はあるけどフワッとした雰囲気のお姉さんポジションだったので、友達だったらあの子に近いかな〜って人間観察をしながら演じていました。Machicoさん、南早紀さん、八巻アンナさんと4人組ユニットを組んでからの収録だったので、和気あいあいと演じることができて。同世代の仲のいい雰囲気が、作品にも乗っているなと感じます。

私にとっての音楽は誰かのために歌うこと

――2020年1月29日には、ランティスよりシングル「Sunny Sunny Girl◎」でアーティストデビュー。どんな気持ちでしたか?
「アーティストデビューします」っていう告知をTwitterに流す日は、ずっと心臓がバクバクしていて(笑)。アニメで私を知ってくれた人はいるけど、喜んでくれるかな、アニメ業界は認めてくれるのかな、と考えながら、震える手でケータイに張り付いていたのを今でも思い出します。知名度があってデビューする方を目にすることが多かったので、まだ新人の自分がデビューすることが、実はすごく不安で。

――多くのファンに迎えられてから、丸2年経ちましたね。たくさんリリースした中で、思い入れが強い作品は?
1stアルバムの『世界が晴れたら』です。これまで積み重ねてきたものを、自分なりに全部出そうと思った一枚だったし、いつかアルバムを出すことが夢の一つだったので。初の作詞曲もあるし、他の曲もすべて作詞家さんとお話しながら表現させていただいて、やりたいことを詰めこんだ印象深いアルバムになりました。

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――リリース後には1stライブも開催しました。
音楽をやっていて良かったなと心から思いました。1stライブをするまでの自分は、音楽ってすごく自由で楽しくて大好きなものでしたけど、1stライブを経験してからは、私にとっての音楽は、誰かのために歌って初めて音楽になるんだなと感じて。あの時、ステージの上から見た皆さんのお顔は、一生忘れられません。

――高校時代のボイトレから始まり、ずっと音楽を続けられてきますが、今の課題はありますか?
技術的なこともそうですけど、最近はいろんな音楽を聴いて、音楽の中にグルーヴを感じられる人になりたいなって。まだまだ課題ばかりです。でも、届けたいことがあるからこそ、足りない部分がいろいろと見えてくるんだと思います。

――真摯に音楽に向き合っているのが伝わってきますね。キャラソンも多数歌唱されていますが、熊田さんをもっと知りたい方におすすめの楽曲を教えてください。
『キラキラハッピー★ ひらけ!ここたま』で歌った「OPEN MY DREAM!」は、実は初めて歌ったキャラクターソングで、聴いたことがない方が多いのかなと。初めてだからこそ、歌声がセリフに近い感じがするのが自分でも新鮮ですし、キラキラが詰まった宝箱のように元気が出る曲なので、ぜひ聴いてみてほしいです!

――コロナ禍でのアーティスト活動が続いていましたが、先日は初めて“声出しOK”のライブを経験されたそうですね。
これまでのライブとは全然違って驚きました! お客さんも声を出すことで没入感が生まれると思いますけど、私自身も皆さんの声を聴くことでパワーがみなぎってきて。こんなに楽しくていいのかなって思うくらいボルテージが上がって、もっともっとみんなを楽しませたいなと感じて。いつもとは違う世界にいるような素敵な気持ちでした。

悩むヒマがあったら腹筋を!

――プライベートで最近はまっていることは?
ハッピーターンの粉と、スッパイマンの粉は以前からすごいものだと思っていましたが、最近はスッパイマンの梅こんぶ味が好きで、止まらなくって。おかげで梅と昆布にはまりすぎて、梅のお菓子、昆布のお菓子、梅昆布茶、梅干し……って、家がおばあちゃんの部屋みたいになってます(笑)。

――お店に行って自分で選んでいるんですか?
そうですね。今もコンビニで見かけたら絶対買っちゃいますし、わざわざ浅草の昆布屋さんに行ったこともあります。昆布ってピンキリで、中にはすごい高級昆布もあるので、これでお味噌汁を作ったらとんでもないのができるんだろうなと思ったり。まだ私の中の昆布好きな部分は成長できるなって(笑)。本を読むのも好きで、最近読んでいるのは『オードリー・ヘップバーンの言葉』。読むだけで誰かの人生や物語に触れられるのが好きで、毎日1回は読書の時間を作っています。

熊田茜音「声優図鑑」

――他にもいろいろな本を?
小説もよく読みます。好きな作家さんは尾形真理子さん。有名なのは『隣人の愛を知れ』という作品で、常に覚えていたいなっていう言葉がちりばめられていて、文体も大好きなんです。『試着室で思い出したら、本気の恋だと思う』という作品ではお洋服が登場するんですけど、読んでから古着にどはまりしてしまい、今日も全身古着です! 自分なりに一つずつアイテムを組み合わせるのが楽しいんですよ。

――読書を通じて視野が広がっているのが伝わってきますね。声優同士で仲が良い方はいますか?
二ノ宮ゆいちゃんです。すごく気が合うので、お仕事の合間に待ち合わせをしてご飯に行ったりすると話が止まらなくて。面白かったアニメの話とか、アフレコの話とか、ゆいちゃんと話してるといつも以上に熱量が上がりますし、アーティスト性はきっと真逆なので、お互いに発見もあります。一緒にライブに出ると、私が陽で、ゆいちゃんが陰みたいに紹介されますけど、実は私のほうが性格は陰に寄っていて(笑)。

――明るいお人柄の一方で、陰の部分もお持ちなんですね。
そうなんです。そこから生まれたのが筋トレです。悩むヒマがあったら腹筋やるか!って。いろいろ考えちゃうけど、体鍛えたからまあいいかって思えるんですよね。鍛えながら悩むと体調も崩れにくいので、そこが強みかなと思います(笑)。

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パリッとしたかわいい声は出ないけど、男の子役に挑戦できるから

――10代の頃は声に自信がなかったそうですが、今は自分の声に向き合えることもありますか?
向き合えるようになりました。もともとハスキーで、パリッとしたかわいい声が出ないのが嫌だったんですけど、だからこそ出せるニュアンスがあるし、男の子の声に挑戦できるかもって思えたり。歌でも「かすれた部分が好き」「ハスキーボイスが好き」っていうファンの方のコメントを見るたびにうれしくて、私自身も自分の声を好きになることができました。

――ファンの皆さんの声が心強いですね。では、これから声優として挑戦したいことを教えてください。
男の子役を演じている女性声優さんに憧れて声優を目指したので、やっぱり男の子を演じたいです。戦闘シーンって、アニメで観ていてもワクワクしちゃって(笑)。声で戦えたら、かっこいいじゃないですか。

――男の子役での戦闘シーン、期待しています! 記事を読んでくれた方にメッセージを。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。熊田茜音のことを少しでも知っていただけたらうれしいです。歌うこととお芝居をすることが大好きでここまでやってきましたが、これからもいろんなことにチャレンジして、成長し続ける姿をお見せできるように頑張ります。いろんな作品や音楽を通じて、あなたに出会えますように…!

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【声優図鑑】熊田茜音さんのコメント動画

次回の「声優図鑑」をお楽しみに!

撮影=石田潤、取材・文=吉田あき、制作・キャスティング協力=吉村尚紀「オブジェクト」

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