キャラクターの裏に隠された声優たちの素顔に迫る、インタビュー企画『声優図鑑 by声優グランプリ』。
今回登場するのは、アーティストとして活動しながら、声優として『フットサルボーイズ!!!!!』(昂守希役)などで活躍している佐久間貴生さん。子どもの頃からずっと好きだった音楽のこと、バンド活動を経て声優のキャリアをスタートさせるまでの葛藤などを赤裸々に語ってくれました!
佐久間貴生 オフィシャルサイト:https://apollobay.jp/talent/佐久間貴生/ ★佐久間さんの手書きプロフィール公開中! |
誰かの心に一生残るアニソン。聴く側ではなく歌うほうの立場に
――2015年に4人組ロックバンドFo’xTails(フォックステイルズ)としてデビュー。佐久間さんにとって最初の芸能活動はバンドだったそうですね。
中学1年の頃、UVERworldさんに憧れて。それからずっと音楽が好きで、バンドを組みたかったんですけど、なかなか出会いがなく、ギターの弾き語りをしたり、ボイトレに通ったりしていました。高校になってから結成したのがFo’xTails。音楽やお芝居を教えてくれる高校だったので、俳優をしていた時期もありました。
――ちなみに、UVERworldのどんな曲を聴いていたんですか?
好きになるきっかけになったのは「just Melody」。他の曲もみんな大好きで、一番気合いが入るのは「Fight For Liberty」です。
――デビューはどんな経緯で決まったんでしょうか。
ランティスさんからデビューしているメンバーがいたので、そのつながりでライブハウスに見にきてもらったのがきっかけで。「いいじゃん!」みたいに声をかけていただいたんです。「一緒にやろうぜ!」って言っていただいて、ありがたかったですね。
――Fo’xTailsでは、『黒子のバスケ』のEDテーマ「GLITTER DAYS」から始まり、いくつものアニソンを担当されていました。
とにかく音楽をやりたくて、アニソンは絶対ではなかったんです。でも、一緒に頑張っていこうって積極的に声をかけてくれるランティスさんが大好きで。自分たちの中でメジャーデビューは目標だったから、デビューが決まった時の驚きはそこまでではなかったんですよね。正直、通過点だなと。でもタイアップが『黒子のバスケ』だと聞いた時、ジャンプっ子だった僕はそちらのほうが驚いて。「いいんですか!?」ってその場で立ちあがっちゃったくらいでした(笑)。
――いざ、バンドの曲がテレビで流れた時の印象はいかがでしたか?
曲だけで聴くときのイメージとはまた違って、アニメの絵と合わさった時に新しい世界が広がった気がしました。あらためて、アニソンって素敵だなって。僕も子どもの頃からずっとアニメを観てきたから、当時聴いていたアニソンは絶対忘れられないもので…。
――今でも忘れられないアニソンというと?
『BLEACH』のOPテーマになった、UVERworldさんの「D-tecnoLife」とか。『NARUTO』のアジカンさんの曲も大好きだったし、『ONE PIECE』の曲も…。アニソンってロック系やバンドのかっこいい曲がたくさんあるんですよ。
――いまだに色褪せないですよね。
アニメの絵まで覚えてます。「D-tecnoLife」だったら、一護や日番谷冬獅郎が走ってる姿が思い浮かぶし、Yuiさんの「Rolling star」は日常のシーンがありつつ、戦うシーンもあるのがかっこよくて。ユンナさんの「ほうき星」は、人生で一番好きな曲。ほんと、それくらいアニメの影響は大きかったんです。その中でもジャンプは自分の教科書だなと思っていて。
――ジャンプから教わることは多かったですか。
学校では学べないような生き方を教えてもらいましたね。たとえば、女性に暴力を振るわないのはジャンプの王道。『ONE PIECE』にも「おれは女には手をあげん!」みたいなサンジの台詞があるし。子どもの頃はそれがすごくかっこよく思えて。
――アニソンに携わることになったのは、思いがけない幸運の出会いだったんですね。
自分が関わるようになったことで、アニソンをより好きになれたというか。誰かの心に一生残るんだなって思うとプレッシャーもありましたけど、だからこそ、いい曲を作りたいって気合いが入っていました。
声優の芝居を学んでから世界が広がった
――2020年からは声優活動を始められています。
バンドを解散して、自分の人生を考えたときに、音楽以外のこともやりたいってすごく思ったんですよね。バンド時代に「声優やってみない?」って話もありましたけど、その時は音楽しかやりたくなくて。バンド活動を終えた後は、新しいことをしてみたい気持ちが出てきて、専門学校でみっちり1年間声優の勉強をさせていただきました。アニソンがメインのバンドだったから、声優の方との出会いも多くて、そういう出会いを通じて、もう一度芝居をやりたいって思ったのもあります。
――実際に声優のレッスンを受けてみてどうでしたか?
音楽は自分たちが作ったものを世に出すものだけど、声優は求められるものに応えたり、周りの人と協調したりするのがすごく大事。たくさんの方と一緒に作品を作っていくのがすごく楽しくて。
声優のお芝居って細やかだし技術力が必要なので、その難しさもありました。自分はスタートが遅いぶん、先輩方と同じステージに立つことを考えたら、ちょっとやそっとじゃ追いつけないと思ったので、家に帰ってからも小説一冊を全部感情を込めて読むとか、試行錯誤しながら頑張っていました。
――約1年頑張って、最初の頃よりできるようになった実感は…?
ちょっとずつですけど、ありました。ただ、声優のお芝居はひとりじゃ完結しないっていう発見もあって。人と会った時に、自分じゃ見つけられないようなお芝居の仕方を見せてもらったりして、答え合わせをしました。対応力と瞬発力が大事だと思うので、まずは台本をスピーディに読み込んで理解する、というクセがついたのは良かったと思います。
声優としての自覚が生まれた『フットサルボーイズ』
――2020年に予定していたソロデビューが、コロナ禍で約10ヶ月伸びるというショッキングな出来事もありましたが…。
ショックもありましたけど、準備できる時間ができたので。いろんなことがどんどん進んでいく中、嬉しい反面、悩むことも多かったから、その期間にソロとしての方向性が自分の中で固まっていったのは良かったと思います。
――2022年の『フットサルボーイズ』では昂守希役を担当しつつ、初のキャラソンも歌唱されて。
正直、最初は大変なんだろうなって想像してたんです。でも歌ってみたら、役への理解がすごくあったからスッと歌えて、むしろ楽しかったですね。
――役を演じる先にキャラソンがあった、という感じでしょうか。どうやって役への理解を深めていったんですか?
朝ごはんどうやって食べるんだろうとか、役の普段の生活を想像してましたね。キャストのみんなでフットサルの練習をしていたことも大きかったです。チーム感が良かったので、いざマイク前でお芝居したときに、そこまでの大変さを感じることがなく。現場を踏んだおかげで、声優としての自覚が生まれました。
――今年の2月には『氷属性男子とクールな同僚女子』のOPテーマ、「FROZEN MIDNIGHT」をリリース。これがまた、いい曲で。
原作を読ませていただいたときに、もっとアップテンポで爽やかな曲を想像していたんですが、意外とゆっくりめな大人っぽい楽曲で。どういう感じになるんだろうとアニメーションを観てみたら、ぴったりはまっていて。MVもドラマ仕立てで、雪を降らせたり、バスが出てきたり、すごく詰め込まれているな〜と。
――豪華ですよね。
豪華でした。子どもの頃から妄想するのが好きで、バスの中で歌ったり、街の中で歌ったりするのが夢でもあったので、それが叶ったのが嬉しかったです。
――YouTubeでMVのコメント欄を見ると、外国の方のコメントが多くて驚きました。
たぶんアニメの影響が大きくて。バンド時代からそうだったんですよ。アニメって世界共通で、たぶん音楽だけでは届いていなかった人にも届いているんですよね。バンドを解散してから中国に旅行をする機会があって、中国にいる友人に聞いたら、中国でFo’xTailsはすごい人気だよって。中国の音楽サブスクでコメントが上限以上あるって聞いて、すごく嬉しかったです。
自分のテンションが上げるためにもファッションは大事!
――最近はまっていることはありますか?
ゲームは大好きで、何時間もやり続けるのはやめようと思いながら、毎日触ってますね。 普通に生きているだけでは触れられない世界があって、もうひとつの人生を生きられるっていうのが、すごく素敵だなと思います。
ほかには、音楽ソフトを使って、自分の声をちょっといじったりすることもあります。音程はずれてないのに聴こえ方が変だなとか、逆に音程はずれてるのに聴き心地がいいとか、声の研究ができるんですよ。歌って奥深いものなので。
――人間の生声じゃないと出せない音がありそうですね。
機械では測れない部分があって。カラオケの採点って苦手なんですけど、プロだから音程が合っているのは当然として、その先に感情や訴えかけるものがあるからこそ、相手の心に届くのかなと思っていて。踊りやお芝居もきっとそうですよね。感情や気持ちを届けるために技術が必要なんだなとか、そういうことをよく考えてます。
――お話を伺っていると、音楽もお芝居も何事も、深く追求するほうなんでしょうか。
自分の興味のあることにはまってしまうと、そうですね。人から教わることも糧になりますけど、他の人の正解は自分の正解ではないので、自分だったらどうするかって考えるのは好きですね。
――次に、最近買って嬉しかったものを教えてください。
今着ている、この服です! もともと服が大好きで、でも冬は温かさ重視で、ずっと買ってなかったんですよ。この服は普段買わないような色味で、すごい気分が上がったので、人に見せるだけではなく、自分の気分を上げるためにファッションって大事だなとあらためて思いました。欲しかったスニーカーを買えたのも嬉しかったです。人気のあるスニーカーは抽選になるので、買えた時は声出してやったー!ってテンション上がります(笑)。それこそ、今日履いてるのは、なかなか当たらないスニーカーなんですよ。
愚直に自分のやりたいことを目指すのが最高
――バンドを解散して人生を考え直していた時、勇気づけられた誰かの言葉や音楽はありましたか?
ありすぎて…。2つ選ぶとしたら、1つは『ジャッジ!』という映画を観た時の「無謀と書いてチャンスと読め」というセリフ。映画では「無茶」という言葉だったけど、自分はそれを「無謀」と置き換えて。周りが無謀だと思ったことを成し遂げると、周りの評価が変わるんですよ。それってチャンスだなと、落ち込んだ時はこの言葉を思い出すようにしています。
もう1つは、本当に悩んだときに聴いたUVERworldの「Q.E.D.」。TAKUYA∞さんが書いた、「眩い世界 憧れ立ち尽くすだけなら そこにたどり着いて言ってやるよ 俺はお前と同じ場所に立ってた」っていう歌詞が好きですね。今はあんなに素敵な曲を書いて大きなステージに立っているけど、それまでにはきっと彼らなりの苦労があって、もどかしい気持ちがあったと思うんですよ。だからこそ、「俺がいけたんだからお前もいける」っていう歌詞に勇気づけられて。「最低で最高な奴を目指していこう!」っていう歌詞もかっこよくて、周りから見たら最低でも、自分の中で愚直にやりたいことを目指すなら最高なんだと。この曲があったから、人生で二択を迫られた時、進みたいほうの道を進もうって決意することができました。
――誰かの言葉や音楽に勇気づけられながら、ここまで歩んでこられたのですね。これから新たにチャレンジしたいことは?
声優として演じてみたいのはクール系でネガティブな役。『サイコパス』が大好きで、関智一さんや櫻井孝宏さんが演じているようなクール同士の戦いがかっこいいなと思うので。自分にとっては元気な役よりクールな役のほうが難しさを感じられそうで、そういう役ができるようになったら一歩前に進めると思っています。
もう一つ、動画編集もやってみたいなと。MVが昔から大好きで、いつかは自分でカメラワークや編集を手掛けたMVを制作したい。それこそTikTokで動画編集をしたのが楽しかったんですよね。その夢が叶うとしたら、ずいぶん先の話だと思いますけど。
――最後に、ファンのみなさんにメッセージをお願いします。
もともとアーティストとして活動していた僕ですけど、声優もやっているぞ、というのが伝わって、あらためて佐久間貴生を応援していただけたらと思います。みんなも、縮こまらずにいろんなことやっていいんだなって感じ取ってもらえるように頑張っていきますので、これからもよろしくお願いいたします!
【声優図鑑】佐久間貴生さんのコメント動画
次回の「声優図鑑」をお楽しみに!
撮影=石田潤、取材・文=吉田あき、制作・キャスティング協力=吉村尚紀「オブジェクト」