「声優図鑑」薮島朱音

薮島朱音「誰かにとっての力になれる存在でありたい」【声優図鑑 by 声優グランプリ】

「声優図鑑」薮島朱音

転機となった『ラブライブ!スーパースター!!』米女メイ役

──デビュー後、最初のアフレコ現場のことは覚えていますか?

覚えているんですけど……正直、セリフの内容とかはほとんど記憶に残っていないんです(笑)。本当にそれくらい緊張していて、頭の中が真っ白になってしまって。ただ、初めて現場に入ったあの空気感や、先輩方の姿勢、スタッフさんの声のトーンなど、細かいところの雰囲気は強く印象に残っています。私がデビューした当時はちょうどコロナ禍で、アフレコも分散収録でした。一度に収録できる人数が3、4人ほどで、マイクも一人1本。養成所ではマイクワークの基礎は教わっていましたが、実際の現場での空気感や、立ち位置の取り方、セリフのタイミングの合わせ方など、いざ実践となるとやはり緊張しました。そんななかでも、先輩方が「困ってることない?」と優しく声をかけてくださったのが本当にありがたくて。その温かさに救われましたね。

「声優図鑑」薮島朱音

──薮島さんにとって大きな転機となったのが、『ラブライブ!スーパースター!!』への出演だと思います。米女メイ役に決まった時のことは覚えていますか?

鮮明に覚えていますね。事務所から小部屋に来てくださいと呼ばれて、「あ、これ、絶対に怒られるやつだ……」と(笑)。その部屋って、打ち合わせや注意のときに使われることが多かったので、緊張しながらドアを開けたんです。そしたらメイ役に決まったことを伝えられて、頭が真っ白になりました。すぐに喜びがあふれるというより、「本当に自分でいいのかな」という不安が大きかったですね。特に『ラブライブ!スーパースター!!』のLiella!というグループは、追加メンバー制度を採用した形だったので、加入に対する反感も少なからずあって。最初からいた5人が好きだったという声も目にして、私はここにいていいのかなと感じることもありました。でも、それでも「メイちゃんを演じるのは自分でありたい」という気持ちだけは、強く持ち続けて。そのためには、自分の言葉や表現で信頼を築いていくしかないと思って、まずは一つひとつの活動に真剣に取り組むことから始めました。

──メイというキャラクターを、最初に演じた時の印象はいかがでしたか?

オーディションで頂いたセリフが、ほとんど怒っているセリフだったんです。「何見てんだよ」とか、「うるせえ」とか(笑)。だから、「この子、ずっと怒ってる子なのかな?」って、最初はすごく戸惑いました。でも物語が進むにつれて、彼女の素直で真っすぐな性格や、スクールアイドルに対する強い憧れ、心を開いていく過程などが描かれていって、そのギャップを知った時には、本当に愛おしくなっていましたね。演じるなかで、彼女の“好きなものに対して一途になる気持ち”にすごく共感できたのも大きかったです。私自身も、好きなことに対して真っすぐでいたいと思っているので、そこは素に近い感覚で表現できたのではないかと思っています。

──『ラブライブ!』シリーズの一員として、ライブへの参加も大きな経験だったと思います。

本当に……大変でした。私はそれまでダンスの経験がまったくなかったんです。なので、最初に振り入れをした時は、不安でいっぱいでした。レッスンでは何度も泣いたし、心が折れかけたこともあって。でも、Liella!の2期生メンバー4人で支え合いながら、少しずつ自信を持てるようになっていって。ステージに立った景色を見た時に、これまでの努力がすべて報われたような気持ちになりました。

「声優図鑑」薮島朱音

──今、声優としてのお仕事に、日々どのような想いで取り組んでいますか?

自分の声や存在が、誰かの背中をそっと押しているかもしれないということを、少しずつ実感するようになりました。以前は、このキャラクターをどう演じるかということに夢中でしたが、今は作品やイベント、ラジオなどを通じて自分の声が届いていると感じる機会が増えました。たとえば、「おかげで仕事頑張れました」とか、「毎週ラジオ楽しみにしてます」といった言葉をファンの方から頂くようになって、本当にうれしくて。こんなにも自分の活動が、誰かの力になっているんだっていう驚きと感動の両方がありました。演じることはもちろん、ラジオもライブも、何かを伝えるという点ではすべて声優の仕事だと思っています。なので自分にできることはこれからもすべて挑戦していきたいです。

“この瞬間に出会えてよかった”と思ってもらえるような時間を届けていきたい

「声優図鑑」薮島朱音

──プロフィールの中でとても気になったのが「ライフル射撃」。珍しいご経験だと思うのですが、始めたきっかけは何ですか?

高校で軽音楽部に入りたいと思って、入部したんです。でも、放課後の時間に思ったより余裕があるなと気づいて(笑)。それで、以前からちょっと気になっていたライフル射撃部も見に行ってみることにしたんです。見学してみたら、すごく集中力が必要な競技で、面白そうだなと思って。兼部できるかも、と考えて、軽音とライフル、両方に所属しました。

──養成所も通っていたことを考えるとかなりハードですね。

今思うとそうですね(笑)。放課後は軽音の練習とライフル射撃の練習、それから土日は日ナレのレッスン、という生活を送っていました。正直、体力的にもスケジュール的にもかなり大変だったんですけど、どれも諦めたくないという気持ちが強くて。特に、声優の夢に向けたレッスンは、土日が唯一の時間だったので、ライフル射撃の大会に出られないこともありましたが、それでも続けていました。

「声優図鑑」薮島朱音

──ライフル射撃の中で、薮島さんはどの種目をやっていたんですか?

私がやっていたのはレーザーライフルという種目で、実弾ではなくレーザーを使って的を狙う競技です。電子的に点数が表示されて、中心に近いほど高得点。反動もないので初心者でも扱いやすくて、集中力がすごく鍛えられるんです。試合では個人戦と団体戦がありますが、基本的には1人で黙々と撃ち続けるので、静かな競技ですね。

──ライフル射撃は今でもやるんですか?

それが全然できてなくて……。道具をそろえるのが難しいんです。でも、機会があればまたやってみたいなと思っています。ファンの方からも「いつか映像で観てみたい」と言っていただけるので、そういうチャンスがあったら挑戦してみたいです!

──あらためて、今後目指していきたい声優像について教えてください。

こういう作品に出たいという具体的な目標ももちろんあるんですけど、根本には“誰かにとっての力になれる存在でありたい”という気持ちがあります。自分が観てきた作品の中にも、元気をもらったキャラクターがたくさんいました。落ち込んでいるときに、アニメの中の一言に救われたり、また頑張ろうと思えた瞬間があったり。そういう“作品の力”を、自分も届けられる側でいたいと思うんです。そのために、表現の幅をもっと広げたいですし、自分の声や演技の可能性を、もっと追求していって、ライブでもラジオでも、“この瞬間に出会えてよかった”と思ってもらえるような時間を届けていきたいです。

「声優図鑑」薮島朱音

撮影/石田潤 取材・文/川崎龍也

薮島朱音さん手書きプロフィール

薮島朱音_手書きプロフィール

薮島朱音さんコメント動画

「声優図鑑」に出てほしい声優リクエストを募集中!

    声優図鑑