キャラクターの裏に隠された声優たちの素顔に迫る、インタビュー企画『声優図鑑 by声優グランプリ』。
今回登場していただいたのは、好評放送中のTVアニメ『ホテル・インヒューマンズ』の灰咲沙羅役に抜擢され、注目を集める白浜灯奈乃さん。
幼い頃からお芝居に興味のあった少女がコロナ禍の外出自粛期間中に深夜アニメと出会い、やがて声優の道を志す。夢を叶え、声優となってからの意外な初仕事やTVアニメ初レギュラーとなる『ホテル・インヒューマンズ』への思い、そしてその先に思い描く声優としての理想像まで、まぶしい笑顔の奥にある芯の部分を掘り下げます。
![]() 白浜灯奈乃 しらはまひなの●11月14日生まれ。東京都出身。ヴィムス所属。主な出演作は、アニメ『ホテル・インヒューマンズ』(灰咲沙羅)、『来世は他人がいい』(女子高生)、『カミエラビ GOD.app』、ゲーム『グリム・ガーディアンズ サーヴァント・オブ・ザ・ダーク』(クイーン・ガルデナス)、海外ドラマ『ピックル・ストーム 異世界からの転校生』(ミア)ほか。 公式HP:https://www.vims.co.jp/talent/349/ ★白浜さんの手書きプロフィール&コメント動画は2ページ目に! |
自分のやりたいことにフィットしていたのが声優という職業でした
――白浜さんが声優を目指すようになったのは、いつ頃だったんですか?
実は明確なきっかけはなかったのですが、幼い頃からお芝居に興味のある子供ではありました。たとえば幼稚園のお遊戯会だとか、学校の学芸会とか文化祭とか、そういうところでお芝居するのが楽しいし、みんな当たり前に楽しみにしているものだと思っていたんですね。逆に「面倒くさいなあ」と言っている子を見て「なんでだろう?」と思っていたくらいで。中学生の頃は運動部に入っていたんですけど、有志で演劇をやる集まりが学校にあって、それに参加してみたりして。演劇部とかには入らずとも、ちょっとずつお芝居に触れる人生を歩んでいたようなところがありました。
そして高校に入学して2年生になったタイミングでコロナ禍になって、在宅の時間が増えたのですが、その時にサブスクリプションで深夜アニメに触れるようになって、アニメがそれまでよりも好きになりました。でも、その時はまだ声優になろうという気持ちはなく、大学に行って、就職して、いわゆる普通の人生を歩もうと思っていました。そこから高校2年生の後半で大学の志望校を考えていた時期に、たまたま友達が舞台の公募オーディションを申し込むと言っていたので、試しに自分もやってみようと受けたんです。結局そのオーディションはダメだったんですけど、そこからお芝居の道により興味が湧くようになって。具体的に自分がどういう形でお芝居をやりたいのかと考えたときに、声優が役者業の中でも自分のやりたいことにフィットしているかもしれないなと思いました。なので、最初から「声優になりたい」と思ったというよりは、「やりたかったことが声優という職業だった」という感覚が近い気がします。
――その“自分のやりたいこと”を具体的に言うと?
自分の見た目に縛られないというか。声優以外に興味を持ったのが舞台で、たとえばドラマとかよりも見た目とかの条件に縛られずに表現ができるところが魅力的だと思いました。さらに声優さんは男女とか、何なら人間、人間じゃないみたいなところの垣根を越えて表現ができる。あと、歌うことも好きなので、そこも含めて幅広くお仕事ができるんだなというところで、この声優さんというお仕事がフィットしているなって。
――ということは、歌のお仕事もいずれはやってみたい気持ちがある?
でも、まずはうまくならないといけないですからね(笑)。
――高校2年生で声優になると決めてからは養成所に通ったんですよね?
特に女性だと若さが大切なのかなという意識が当時はありまして、大学受験をすることは確定していたんですけど、できるだけ早く養成所に入らなきゃという気持ちが大きかったんですね。それで受験と両立して行ける養成所を探したところ、日ナレ(日本ナレーション演技研究所)が週1回のレッスンでできるということで、学費もほかの養成所と比べれば少なかったので親に交渉をして、1回断られちゃったんですけど、粘って説得して通うことができました。
――ということは、受験勉強をしながら声優のレッスンに通っていた?
大学受験の勉強はしんどかった部分が大きかったんですけど、だからこそ週1のレッスンが自分にとってすごくいいリフレッシュになって。逆に養成所があったからこそ受験も乗り越えられたかもしれないなという感じがしますね。
――事務所に所属して、最初のお仕事は覚えていますか?
初仕事は少し特殊だったと申しますか、事務所の先輩である堀江由衣さんのファンクラブイベントでミステリーコーナーに容疑者役として出演するというものでした。堀江さんのファンの皆さんがたくさんいらっしゃるところで、舞台の上で仕事をするという。
――それは緊張しますよね。
でも、堀江さんのファンクラブイベントだったのもあって味方が多い現場だったというか、そのミステリーコーナーも自分以外にもお二人の先輩が出ていらっしゃって、頼れるところがたくさんあったので、個人的にはすごく楽しめました。
――会場の雰囲気も温かいでしょうし。
本当に温かかったです! すごく印象深かった出来事として、私が犯人役だったんですが、いわゆるミステリーの犯人って、自供することが多いじゃないですか。そこで私は堀江さんのファンの皆さんに対してけっこう失礼なことを言わなきゃいけないセリフがあって、「大先輩のファンの皆さんにこんな言葉を言うなんて、いいのか?」みたいな緊張があったんですけど、いざ言ってみたら皆さん大爆笑してくださって、「あったかい!」と思って。
――声の収録を最初にしたのはいつでしたか?
おそらく所属1年目の終わりの2月とかだったと思うんですけど、初めてオーディションに受かったのがゲームのキャラクターで、それも無感情にゆっくりしゃべるようなキャラクターだったんです。『ホテル・インヒューマンズ』の灰咲沙羅よりも感情を出さない、しかも何百歳みたいなキャラクターで(笑)。
――新人でいきなり演じるには難しそうなキャラクターですね。
当時ゆっくり話すことが全然うまくできなかったのですが、自分が思い描いているよりも「もっとゆっくり話してください」「もっと抑揚をつけずに話してください」というディレクションを頂いて、それに大苦戦しました。人って、集中するとこんなに糖分足りなくなるんだって驚きながら、お菓子をいっぱい食べた記憶があります。
――その役にしても、灰咲沙羅にしても、クールな役に縁があるような……。
今のところはそうですね。オーディション以外で振っていただくお仕事でも比較的クールなお芝居をする機会が多いかなという感じがあります。
――こうやってお話をしていても、落ち着いている雰囲気がありますからね。
本当ですか? (クールな役に選ばれるのは)それもあるのかもしれないです(笑)。