「声優図鑑」乾夏寧

乾夏寧「皆さんの記憶に少しでも印象を残せるような声優になりたい」【声優図鑑 by 声優グランプリ】

「声優図鑑」乾夏寧

キャラクターの裏に隠された声優たちの素顔に迫る、インタビュー企画『声優図鑑 by声優グランプリ』。今回はTVアニメ『日々は過ぎれど飯うまし』比嘉つつじ役での好演も記憶に新しい乾夏寧さんの登場です! その名のとおり夏の太陽のように元気で明るい夏寧さんは、どんなふうに声優を目指して、デビューの現場でどんなことを経験したのか? これからの活躍がますます楽しみになるようなお話がたくさん聞けました。

「声優図鑑」乾夏寧

乾夏寧

いぬいなつね●8月10日生まれ。アーツビジョン所属。主な出演作は、アニメ『日々は過ぎれど飯うまし』(比嘉つつじ)、ゲーム『ブルーアーカイブ』(黒崎コユキ)、海外ドラマ『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル』(エミー)、配信『春日さくらと乾夏寧の夏もさくらを咲かせたい』ほか。

公式HP:https://www.artsvision.co.jp/talent/14429/
X:@inui_natsune

★乾さんの手書きプロフィール&コメント動画は2ページ目に!

初現場は温かくて、わからないことも先輩方が優しく教えてくださいました

――そもそも声優を目指したのは何歳頃でしたか?
もともと小学生の頃に『ラブライブ!』にハマって、そこで初めて声優さんを意識しました。自分がなれるとかはまったく思っていなかったんですけど、高校生になった時にコロナ禍に入ってしまって、アニメを観たり声優さんのラジオを聴いたりする機会が増えたんですね。その時、演技に興味を持って、自分で言ったセリフを録音したりしていたら、YouTubeで日本ナレーション演技研究所(以下、日ナレ)の広告が流れてきて「何だろう?」と思ってタップしてみました。そしたら「こんな養成所があるんだ!」「ここに入れば声優さんを目指せるんだ!」と思って、挑戦してみようと思ったのが声優を目指したきっかけです。

――当時、高校生だったということで、声優を目指すことについてご家族との話し合いもありましたか?
「やってみたいのなら、入ってみたら?」みたいな感じでしたね。親は半分習い事感覚だと思っていたというか、なので事務所に所属した時はびっくりされました(笑)。

――娘が本気で声優を目指しているとは思っていなかったと。
所属してから一気に実感が湧いたみたいです。出身が京都で日ナレも京都校に通っていたので「じゃあ、上京するの?」となって、アワアワしていました。

「声優図鑑」乾夏寧

――事務所の所属となって、初めてのお仕事の現場は覚えていますか?
上京してきてすぐくらいに、初めてお仕事をさせていただきました。それが吹き替えのお仕事で、養成所でもまだあまりマイク前の演技をしていない時期だったので、すごく緊張していたのを覚えています。

――新人で初めての現場が吹き替えというのも、意外な感じがしますね。
マネージャーさんにも意外がられていました(笑)。私もびっくりして、「できるかな?」という心配も大きかったです。

――勝手なイメージですが、吹き替えの現場は先輩が厳しそうですよね。
私も初現場ということもあって怖そうだなと思っていたんですけど、皆さんすごくお優しくて、わからないことも先輩方が優しく教えてくださいました。「現場って、こんなに温かいんだな」と思いました。すごく素敵な初現場でありがたかったです。

「声優図鑑」乾夏寧

――アニメやゲーム等の二次元コンテンツで最初のお仕事は何でしたか?
ゲームでしたね。それも急だったというか、お話を頂いてからすぐに収録だったのでガチガチに緊張して行ったんですけど、こちらも現場の方がお優しかったので、途中からは緊張もほぐれて楽しく収録できました。

――いい雰囲気の現場に恵まれていたんだなというのがお話から伝わってきたのですが、その中でも失敗したことはありましたか?
それで言うと、初仕事の吹き替えの現場でガヤの収録の時でしょうか。もちろんガヤというものをやるのも初めてだったので、「どういうふうにやったらいいんだろう?」と思って、セリフを一言一句考えてアフレコへ行ってしまったんです。しかも、長文で誰かと会話している設定を作ってしゃべり続けてしまい、ディレクションで「いろんな役を代わる代わるしゃべってください」とご指摘いただきました。

――ガヤでは一人の人物を演じるわけではなく、たくさんの人物の演じ分けをするものなんですね。
たとえば公園にいる場面だったら「ボール取って!」とか「お待たせ!」とか、代わる代わる言わなきゃいけないのに、それを私はずっと一人を演じてしまっていたのが恥ずかしかったなと、今となっては思います。私は台本にメモをしていたので、収録中もそれをずっと見ていたんですけど、先輩方は皆さん台本を見ずにしゃべっていらっしゃって、それで気づけたはずなのに、夢中になっていたので全然気づけなくて……。

――でも、やらかしてしまったとかではなく、一生懸命取り組んでいたからこその失敗ではありますからね。
今では代わる代わる演じるように心掛けています(笑)。

「声優図鑑」乾夏寧

――今年の春に放送されていたTVアニメ『日々は過ぎれど飯うまし』(以下、『ひびめし』)では比嘉つつじ役を演じられていましたが、こちらがTVアニメの初レギュラーですか?
初レギュラーでした。本当に緊張ばかりの現場でしたね。私はゲームなどで演じさせていただいたキャラクターは明るい子が多かったのですが、今回は感情をあまり表に出さないキャラクターということではじめは苦戦しました。ですが回を重ねていくごとに私の中でも役がつかめてきて、後半はすごくやりやすかったです。

――現場のチームワークはいかがでしたか?
アフレコが始まる前に練習会というのがありました。それが業界でも珍しいことだったみたいで、顔合わせだったり、画面は見ずに台本だけで掛け合ったりしていたんですけど、その時から皆さん本当にお優しかったですね。私がいちばん新人だったのですごく緊張してはいたんですけど、先輩方も優しくて、「こうしたらいいよ」みたいな感じでアドバイスをしてくださって、練習会からやりやすかったイメージがあります。

――メインキャストの方々も豪華なメンバーですし、大食いタレントで有名なもえのあずきさんもいて、いわゆる「TVで観ていた」「声を聴いていた」人たちの間に入るのはどんなお気持ちでしたか?
もえのあずきさんのことは「もえちゃん」と呼ばせてもらっているんですけど、もえちゃんは以前から当たり前のように知っていた方だったので、はじめにキャストの方のお名前を聞いた時に「もえあずさん……?」となって、すごく驚いたのを覚えています。メインキャストでご一緒した方々も全員お名前を存じ上げていたので、まさか私がメインキャラでご一緒する日が来るなんて……!という感じでした

――自分も声優になったんだという実感が、より湧いてきたりもしたんじゃないですか?
すごく湧きましたね。でも、もっとアワアワ取り乱しちゃうかなと思ったんですけど、お会いしてみると意外と冷静になったりする自分がいて、自分で思っていたよりすんなりお話ができました。むしろ、帰ってから実感するタイプかもしれないです。家に帰ってから「今日あの方と現場が一緒だったのヤバいよな」みたいな感じで振り返ったりします(笑)。

――『ひびめし』では『もえのあずきの飯うまし』というYouTubeの動画番組で顔出しもされていました。
実際にアニメに出てきたご飯屋さんに行ってロケをするとか、葛西臨海公園でバーベキューをするとか、いろいろ企画があったんですけど、そういうのも全部初めての経験でしたね。初回の配信とかは緊張して顔が引きつっちゃったりしていたんですけど、だんだん慣れてきて、キャストの方たちとも仲が深まっていきました。

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