いつまでも学ぶ側にいるのは、甘えだと思うんです
――声優に興味を持ったきっかけは、TVアニメ『進撃の巨人』だと聞きました。
そうです。もともと本を読んだり映画を観たりするのが好きだったんですが、小学校6年生くらいから兄の影響でアニメや漫画も観るようになったんです。特に、作者さんの伝えたいことが明確な作品や、余韻から何かを感じ取れるような、重たい作品が好きで。『進撃の巨人』も、そういう理由でハマりました。そうしたら、皆さんのお芝居がすごくて! 「この作品に出ている方たちは、どういう人生を送って今ここにいるんだろう!?」と、声優さんにまで興味が湧いたんです。それが、中学校2年生の時ですね。ただ、「自分も声優になりたい!」とまでは思っていませんでした。
――と言いつつ、中学生のうちに『2022 声優アーティスト育成プログラム・セレクション』というオーディションを受けますよね。この時には声優になりたいという気持ちが湧いていたのでしょうか?
これは、あくまでも「挑戦してみよう!」という気持ちから受けたオーディションなんです。当時は、コロナ禍の影響で、やめてしまった習い事もあってエンタメの世界から少し離れてしまった感覚があったんです。なので、自分の可能性とか将来進むべき道をあらためて考えたい時期だったんですよね。そんな思いで受けたら、ありがたいことに合格を頂きました。審査員の方からは「お芝居が面白い」と言っていただけて、「私はそういう評価をもらえる人なんだ」とうれしく思いました。
――そして、翌年の春に今の事務所に所属したんですね。
はい。ただ、養成所に通わないまま事務所に所属してしまったので、知らないことが多すぎました。ボイストレーニングや発声を学ぶ機会は頂いたんですが、ディレクションにどう返すかといったアフレコ現場での立ち回りに関しては、全部実践で学んでいく感じでしたね。最初の1年くらいは、共演者の皆さんを観察する日々でした。
――では、デビュー後のことも詳しく。声優としての初めてのお仕事は何でしたか?
『VIRTUAL GIRL @ WORLD’S END』というビジュアルノベルゲームのマキ役です。彼女のような“かっこいいお姉さん”的なキャラクターはこれ以降あまりやっていないので、今思うと珍しいタイプの役ができたなと思っています。声も、普段は高めのトーンの役をやることが多いのですが、マキは地声に近い低めの声でできたので、その分演じやすかった気がします。当時の私は滑舌も悪く、たくさんご迷惑をおかけしてしまったと思うのですが、周りの方が優しく丁寧に指導してくださいました。すごく思い出深い初現場です。
――では、TVアニメの初現場というと?
『ハニーレモンソーダ』に、みかりんというクラスメイト役で出演させていただきました。この現場は、今でも「すごくありがたい環境だったな」と思います。このアニメのこだわりの一つに“クラスメイト一人ひとりをちゃんと存在させたい”というものがあって、クラスメイト全員に異なる声優さんがいらっしゃったんです。なので、現場が学校みたいに明るい雰囲気だったのが印象的です。
――いろいろな役者さんの芝居を学ぶ場にもなりそうですね。
そうですね。新人の方からベテランの方までいらっしゃる現場だったので、私が失敗してしまった時は周りの皆さんが一つひとつ教えてくださいました。本当に温かい現場でした。
――失敗というとどんなことを……? 話せる範囲でいいのでうかがいたいです。
アフレコブースって、新人はドアの近くに座るんですが、デビューしたばかりの私はそれをまったく知らなくて。主役の方が座る、真ん中の席に座ってしまいました。後で「あれはダメだよ」と教えていただきました……。あと、テストも本番も同じマイクに入らなければいけないという決まりがあるのも知らず、最初はいろいろなマイクを使ってしまいました。その時は、現場の方々から丁寧にご指導いただきました。「こういう作法は、自分で調べてから行けたよな」と、すごく後悔しましたね。もともとコミュニケーションも得意ではないので、「今日もうまくしゃべれなかった……」と落ち込むことも多くて。デビュー当初は、よく一人反省会をしながら、ボロボロ泣いて帰っていました。
――楽しむ余裕が出てきたのは、いつ頃ですか?
2025年の秋くらいからですかね。その頃に、『魔法の姉妹ルルットリリィ』のアフレコが始まったんです。最初は緊張でガチガチだったんですが、姉妹役の小鹿なおさんをはじめ、キャストの皆さんが本当に親しくしてくださって。お話ししやすいような、明るい雰囲気を作ってくださいました。アフレコがある日は高校からそのまま行くので制服を着ているんですけど、それを見た皆さんが「今日は何限まで受けてきたの?」と聞いてくださったりとか。あと、休憩中にテスト勉強をしているときは、「私もこの教科やってた!」と言って、教えてくださったりもします。本当に優しいです……。
――聞いているだけでもほっこりします。ただ、『魔法の姉妹ルルットリリィ』は主演作でもありますよね。プレッシャーは相当あるのでは?
もちろんです。アフレコが始まると緊張で黙り込んでしまって、周りから心配されることもありました。でも、その緊張感はあって当然だと思うんです。変に緊張をほぐそうとせず、このピリッと張り詰めた感じを大切にしてアフレコに臨んでいます。これまでは、ベテランの方が大勢いらっしゃる現場に入らせていただくことが多くて、私は“学ぶ側”というスタンスで現場にいました。だけど、最近は「それって甘えなのかも?」と思うようにもなりました。現場では、「プロとして参加している以上、年齢は関係ない。若いからって失敗していいわけではないぞ」と自分に言い聞かせています。私、ディレクションにうまく応えられなかったりすると、悔しくてすぐに涙が出てきてしまうんです。作品関連のライブに出させていただいたときも、今のところ全部泣いています(笑)。自分への期待値が高いせいか、「もっとできたのに!」と思ってしまって……。もう、やめなくちゃと思ってます。
声の芝居で使うのは、声だけじゃありませんでした
――芝居の楽しさはどこに感じますか?
人って、いろいろな面を持っているじゃないですか? でも、日常生活の中で出すのはほんの少しの面だけ。言わない言葉もいっぱいあると思うんです。そういう、本来表に出さない面を、作品の世界観やキャラクターに任せて放出できたり、自分自身すら知らない自分の一面に出会えたりするのが楽しいです。あと、やってみると意外と“声だけじゃなかった”ということを知りました。つい最近までは、それこそ「声だけですべてを操ろう」と思っていたんですが、体格や姿勢、喉の開き方など、体全体を使ったほうが“生きている声”になるんだなと思いはじめて。最近は、そういう表現の仕方を探るのがすごく楽しいです。
――舞台の芝居と声の芝居で、違いを感じるところはありますか?
違うところは、距離感です。舞台は、まず劇場にいるお客さんにお芝居を届けなければいけないので、声量や表情、しぐさなどを客席に届かせることを優先して考えるんです。なので、役者同士の距離感はそこまで厳密に考えないのですが、声のお芝居は、どんな繊細な音も拾ってくれるマイクがあるので、ある程度リアルな話し方、距離感でもいいんだなと思っています。
――「緊張する」、「泣いてしまう」といったお話もありましたが、芝居への嗅覚はすごく鋭いですよね。声優として、成長したなと思う部分もあるのではありませんか?
えーっ、成長したところなんてあるかな……?(笑) あ、でも、“自分を忘れること”はできるようになってきました。舞台でのお芝居は全身を大きく使うので、自分という個体を意識しながらやらなければいけないんですが、声のお芝居は自分の体を忘れて全部キャラクターに合わせることができるんですよ。もはや、演じている自分のことを忘れて役に徹することができるというか。そう気づいてからは、どうすればもっと演技に没頭できるかいろいろ模索しているところですね。この気づきが成長かもしれません。
――それもまた楽しそうですね。
はい、楽しいです!
――ちなみに、先ほども少しお話に出ましたが、今高校生とのこと。得意教科はありますか?
世界史が好きです。暗記が得意だから向いていそうだなと思って選択した教科なんですけど、授業を受けてみるとすごく面白いんですよ! 『ヘタリア』が好きというのもありますけど、歴史上の人物のバックグラウンドとか、その時何を考えていたのかを考えるのが楽しいんです。
――また、先ほど撮影の時にポロッと「友達が少ない」と言っていましたよね……?
はい(笑)。小学校と中学校は大学まで一貫の学校に通っていたんですけど、高校は別の学校なので、昔からの友達がいないんです。でも、一人しゃべれる子がいます! 歌が好きな子で、一緒にカラオケに行くのが楽しいです。あと、恋バナをするのがすごく好きな子なんですよ(笑)。その子のキュンとするような話を聞いて、「そういう世界もあるんだなぁ」と思いをはせたりします。
――恋愛もののアニメに出演するとき、参考になりそうですね。
そうですね! 『ハニーレモンソーダ』は、まさにそうだったかもしれません。それに、現場で「今、高校生は何にハマっているの?」とか「友達とどんなことをして遊ぶの?」と聞かれたとき、たくさん言えることがあるのはその子のおかげです。いっぱい遊んでくれて、いっぱい話をしてくれて、ありがたいです。
~声優未来予想図~
Q:これからどんな声優を目指したいですか?
1年後の私 現場で泣かない!
今の私は、悔しい、うれしい、恥ずかしい、悲しいと何でも泣くんです。一度泣いてしまったら現場を止めてしまうし、鼻声になってしまうので本当に良くなくて。早いうちにこの癖を直さないと!
3年後の私 アニメの仕事で顔と名前を覚えてもらう!
お芝居を学び続けて、アニメの仕事が今よりたくさんできているといいなと思います。ちょうど20歳になっているので、年齢的に今チャレンジできていないジャンルのオーディションなどにも挑戦したいです。
5年後の私 フェスをバッチバチに盛り上げるアーティストに!
コンテンツのライブに出させていただきつつ、アーティストとしても活動していたいですね。憧れるのは、フェスをバッチバチに盛り上げるようなアーティスト! 体の全部を使ったパフォーマンスはきっと得意なので盛り上げられたらいいなと思います。
10年後の私 声優とミュージカル俳優の二刀流で活躍!
子供時代だけじゃなく、将来的にもミュージカル俳優として活動したいと思っています。アフレコとミュージカルの両立ってスケジュール管理が難しそうで、どこまで両立できるのかわかりませんが……10年後には叶えていたいですね。
撮影/篠田直人 ヘアメイク/Sweets 取材・文/松本まゆげ
橘めいさん手書きプロフィール
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https://youtu.be/gdfs_ryZ-WE
















