「腐りません!」と、泣きながら言った記憶があります(笑)
――声優になるための第一歩を踏み出したのはいつですか?
大学に入ってからです。中学生の頃からずっと「声優になりたい」という気持ちはあったものの、母と祖母は看護師になると思っていただろうし、それを望んでいたはずなので、看護系の大学に進みました。でも、大学に入ってから「私、このまま看護師になるの? 本当に?」「やりたいことをやらずに将来の道が決まるのは、嫌じゃない?」と思い始めて。入学してすぐに声優の専門学校を探して、その年の10月から通い始めました。親には、専門学校入学のタイミングで報告をしました。
――学費はどうしたんですか?
全額、自分のアルバイト代で払いました。「何回払いになってもいい!」と思って。で、通い始めた2カ月後の12月に、青二プロダクションのオーディションを受けたんです。講師の方から「4月に入学した生徒も受けるから、10月から入った夏目さんは難しいかもしれないけど、ひとまず受けてみたら?」と言われて。そうしたら、合格したんです。
――すごい! わずか2カ月でプロの声優になったんですね。
このタイミングで、あらためて親と将来の話をして、「声優で食べていきたい」という覚悟を伝えました。親は「全員が成功する世界ではないから、大学だけは卒業しなさい」「卒業したら好きにしていいから」と言ってくれたので、大学卒業を条件に、事務所への所属を決めました。
――専門学校はいつまで通ったのでしょうか?
1年間通うつもりで入学したので、翌年9月までは通っていました。当時は、大学と専門学校と事務所所属と、いろいろ重なってかなり慌ただしかったです。
――しかも、専門学校の学費を払うためにバイトもしていたんですよね?
そうです。結局48回払いにした気がするので……専門学校を卒業してからもずっと払い続けていました(笑)。
――また、大学に通いながら声優の仕事をしていたということですよね。
はい。ただ、看護の大学には実習があるので、事務所になかなかスケジュールを渡せなくて。大学卒業までは、あまり仕事ができませんでした。モブやゲームなど単発の仕事は頂けましたが、レギュラーには参加できないので、オーディションを受けられない、という感じですね。その間に同期の皆はどんどん仕事をもらい、着々と経験を積んでいきました。
――焦りませんでしたか……?
最初に事務所の方から「このまま大学に通い続ける場合、仕事をする機会は確実に減る。その間に同期は売れて、君は置いていかれるけど、腐らない?」と聞かれていて、「腐りません!」と答えていたんです。内心「そんなことわかってるんだよ!」と思っていたので、泣きながらケンカ腰で言った記憶があります(笑)。なので、とにかく大学を卒業してからが勝負だなと思っていました。
何を言われても「なにくそ!」と頑張れます
――これまでのお仕事で、いちばん印象に残っている出来事を教えてください。
『もっと!まじめにふまじめ かいけつゾロリ』の現場です。三間雅文さんが音響監督をされている作品なんですが、私、その前にも別作品の三間さんの現場で、とんでもなくリテイクを重ねたことがあって。それがトラウマになっていたなかでの『もっと!まじめにふまじめ かいけつゾロリ』だったんです。そうしたら、この現場でもなかなかOKが出ず……。山寺宏一さんに付き合っていただきながら何度もリテイクを繰り返すことが本当に申し訳なくて、ついには頭が真っ白になってしまったんです。なんとか撮り終えたものの、悔しくて、悔しくて……。山寺さんには「本当に申し訳ございませんでした」と謝って、スタジオ近くのカフェにマネージャーさんと入り、ボロボロ泣きました。そうしたら三間さんが近くを通られて、「泣くなら隠れて泣かないと。こんな所で泣いているうちは、まだ弱いよ」と言われたんです。それを聞いて……心の中で、「ふざけるなよ! もう、絶対に負けないから!」と思いました。口には出していませんからね?(笑) あくまで心の中でそう叫びました。
――(笑)。そうして、奮起したんですね。
それからは、三間さんから言われたことをただ受け入れるのではなく、自分の中でかみ砕いて「こういうことで合っていますか?」と、確認のコミュニケーションを取る形に変えました。感覚的には、やりやすくなったように思います。三間さんは、私の性格をわかっているからあえてああいう言い方をしたんでしょうね。私をいちばん成長させてくれた偉大な存在です。
――話を聞いている感じ、夏目さんは相当負けず嫌いですよね?
めっちゃ負けず嫌いです! 三間さんはよく、「面倒くさくて面白い」と言ってくださいます(笑)。言うことを聞かないし、折れないところが面白いと。別に、常にケンカ腰でいるわけではないし、「自分は正しい!」と思っているわけでもないですが、屈するのはやめようと思っています。どんな状況であれ、「ダメだ」「やっちゃった」と下を向くのは屈するということ。そうじゃなくて、その状況を糧にして絶対に上に登っていかないといけないんですよね。
――メンタルは、幼少期から強そうですよね。
そうですね。もともと強かったメンタルに火がついて、熱を帯びた感じです。何を言われても「なにくそ!」と熱く頑張れます!
――アニメのオーディションは「落ちるのが当たり前だ」と言う方もいますが、どんなふうに気持ちの整理をつけていますか?
最初は、「なんで私が落ちるんだろう?」と思っていました。でも、どれだけ自信があっても役のバランスや巡り合わせはあるものだよな、とすぐに気づきました。それに、実際に放送を観ると「こういうニュアンスは私には表現できないな」「たしかに、この方が合っていたな」と、納得するものですね。ただ私の場合、負けず嫌いすぎて“挫折を味わって強くなる系のキャラクター”を演じると「挫折する感じがしない」「負けなさそう感がすごい」と言われるんですよ(笑)。実際、私も「負けるって何?」「『負けたくない! 勝ちたい!』という気持ちがあったら、もう勝ちじゃん」と思うので、今の私ではまだうまく表現できないのかもしれません。
――学校でもなんでも、「負けた」と思ったことはない?
うーん……ないですね。表面上では負けていても、「でも、勝っているところもあるし!」とどこかで思っているのかもしれません(笑)。
――精神的な「負け」がないんですね。
そうなんでしょうね。頭では理解しているんですよ。かなわなかったことは何度もあるので。でも、根拠のない自信と「私は絶対に勝てるんだ」という気持ちがどこかにあるので、「負けた」がよくわからないんですよね(笑)。
――めちゃくちゃ強メンタルですね……!
わがままと強気が合わさると、こうなります!(笑) 落ち込むこともなくて、「これも経験だ」と思いますね。母は私と真逆の人間で「あなたのことは理解できない」と言われるので、なぜこういう性格に育ったのかはわかりません。
この前、日帰りで韓国に行ってきました!
――一度は看護の道を目指したものの、声優になることを選んだ夏目さん。お話を聞いていると、「うまくなりたい、上へ行きたい」という強い思いが伝わってきますが、ここまで夢中になれたのは、いつからなのでしょうか?
私は、好きなことには一直線なんです。なので、事務所に所属して「声優として食べていくんだ!」と決めたあの瞬間には、夢中になっていたと思います。
――では、声優になっていちばん成長を感じる部分はどこですか?
昔は、自分のことしか考えられなかったんです。演技をするにしても「私はこうするから、このキャラクターもきっとこう動くだろう」と、自分の尺度でしかキャラクターを捉えられませんでした。だけど、いろいろな現場でいろんな先輩や音響監督の話を聞いて、私の考え方では大勢の方々が携わる作品は作れないと気づきました。それからは、作品全体を俯瞰して捉えられるようになりましたね。自分と違う考えを持っている人たちと話すことは、一番の成長になると実感しました。
――そんな夏目さんのプライベートのお話も少し聞かせてください。最近ハマッているものは何ですか?
麻雀とポーカーです。最近はもっぱら麻雀ですね。
――麻雀はいつ頃始めたんですか?
大学生の頃です。アルバイト先の友達がやっていたので、教えてもらいました。
――覚えるのも大変ですよね?
足を踏み入れたからには負けたくないという一心で覚えました。「絶対に強くなってやる!」って(笑)。
――勝負事ですもんね。事務所のHPのプロフィール欄には「競技かるた」も書かれていましたが、これも勝負事だから?
そうです。もう、ずっと戦っていますね(笑)。結局勝ち負けのあるものが好きなんだと思います。
――では、休日はどんなふうに過ごしますか?
最近は、『進撃の巨人』を見返していますが、長時間家でじっとしていられるタイプでもないので、犬を連れて近所を散歩したり、友達と麻雀やポーカーをしに行くことがほとんどですね。あと、少し遠出をすることもあります。二日間くらい休みがあった日は、千葉まで行きました。あと、韓国に日帰りで行ったこともあります。滞在時間は4〜5時間くらいでしたけど、一人でユッケや鍋を食べて、化粧品を買って帰ってきました。
――アクティブですね!
わりとどこへでも一人で行けちゃうんですよね。ただ、ディズニーリゾートにはまだ一人で行けていませんけどね!
~声優未来予想図~
Q:これからどんな声優を目指したいですか?
1年後の私 アニメでメインを勝ち取る!
アニメ作品のメインキャストになることは相当難しいですが、だからこそ叶えたいです。「自分の力で取ったぞ!」という経験をしたいですね。あえて理想を言うなら、守られるヒロインよりも一緒に戦うヒロインがいいです。戦って勝つヒロインが最高!(笑)
3年後の私 レギュラー作品を毎シーズン持つ!
「今期も出てるな」「毎シーズン出てない?」と言われるくらい、ずっとメインを張っていたいです。そうして、ずっとお芝居できていたら幸せです。そのためには、もう少し役の幅を増やしたいですね。今は、勝ち気な役や強気な役といった自分に近い役を演じることが多いんですけど、3年後にはそれ以外の役も武器にできていたらいいなと思います。
5年後の私 ストイック声優になる!
いろいろなアニメでメインを張って、イベントにもたくさん出演して、周りから「ストイックに頑張っているね」と言われるくらいの声優になっていたいです。そうして、憧れの声優として名前が挙がっても恥ずかしくない存在になる……!
10年後の私 全国各地でファンミーティングをやりたい!
この頃には、大人びた女性の役もできるようになっていたいですね。そうして、外画にも挑戦できていたらうれしいです。あとは、全国各地でファンミーティングをしたい! 日々応援してくださっている方々に自分から会いに行って、直接感謝を伝えたいんです。
撮影/石田潤 ヘアメイク/Sweets 取材・文/松本まゆげ
夏目妃菜さん手書きプロフィール
夏目妃菜さんコメント動画
▼動画URLはこちら
https://youtu.be/wK1nC5O18_Y















