声優として活躍する潘恵子さんの娘として生まれ、親への反発もあってなかなか「声優になりたい」といいだせなかったという潘めぐみさん。そんな潘めぐみさんが声優という仕事にかける熱い思いを、応援メッセージとして語ってくれました♪
プロフィール
潘めぐみ はんめぐみ……6月3日生まれ。アトミックモンキー所属。主な出演作はアニメ『HUNTER×HUNTER』 ゴン=フリークス、『デジモンクロスウォーズ 時を駆ける少年ハンターたち』 洲崎アイル、『ポケットモンスター ベストウィッシュ』 コハル、『メタルファイト ベイブレードZEROG』 獅々谷鷹之助、『劇場版 図書館戦争 革命のつばさ』 児島清花、ラジオ『潘めぐみ・伊瀬茉莉也のHUNTER×HUNTER HUNTER STUDIO』パーソナリティ、ドラマ出演『オトメン-乙男-』番めぐみ、映画出演『櫻の園』和田遙/フィーズ、『すべては海になる』 あい、ほか
Vol.1 声優になるためには、まず身体を使ったお芝居ができないといけないと思った。
潘めぐみさんが声優という道を選ばれたのは、やはりお母様の影響が大きかったんでしょうか?
物心ついていないころって、普通はアニメを見ていても、本当にそういう世界が存在していると思って、いろいろと想像して夢をもつじゃないですか。でも私は、傍らに声優を生業としている母がいたというのが大きくて、小さいころからアニメをひとつの作品として見ていたんです。台所に母がいるのに、TVからも母の声が聞こえてくるという環境だったので、声優という存在は私にとって、とても大きなものでした。当時、母は仕事で留守にしがちだったので、学校から家に帰ってきてTVをつけるとアニメをやっていたんです。それを見ながら、私もこういう仕事がしてみたいとずっと思っていました。でも親への反発心もあって、やっぱり違う仕事のほうがいいのかなとか、表現の仕事をするなら舞台俳優といった母とは違う分野にしてみようとか、いろいろなことを考えていましたね。母の存在が大きすぎて、なかなか言い出せなかったんです。
演技の道に進む決心をされたのは、いつごろのことですか?
高校3年になって進路を決めるときに、ようやく「これはきちんと言わねば!」と決意したんです。それで「一から演技の勉強をしたいので、大学もそういう方面に進みたい」と口に出したんです。でも母は昔から気づいていたみたいで、もしかして私がこの道に進むというのを予感していたのかもしれません。それまでは学校に演劇部がなかったこともあり、演技の経験はまったくありませんでした。学校以外で演技の勉強をするということになると、お金もかかるじゃないですか。学生が自分のお小遣いでできることって、さまざまな演劇の舞台を見に行ったり、映画を見に行ったり、さまざまな作品を読んだりすることなのかなって。それが私にできる最大のことで、実際に演技をするようになったのは大学に入ってからですね。
潘さんのデビューは実写映画の『櫻の園』ですが、そのきっかけは?
記念というわけではないんですけど、高校卒業時になにかオーディションを受けてみたいと思ったんです。例え落ちてしまっても、受けたこと自体が記憶として自分のなかに残るじゃないですか。それで、雑誌で見つけた『櫻の園』の一般公募オーディションに応募したんですが、なんと受かったんです。自分でもびっくりしましたね。今から考えてもどうして受かったのか分からないし、いまだに理由を聞けずにいます(笑)。おかげで大学での新しい生活をスタートすると同時に、映画の撮影に参加するということになりました。まだ大学で演技の勉強を始めたばかりだったので、現場でも分からないことだらけでいろいろと大変だったんですけど、それでも休学などはせずになんとか両立できました。
顔出しのお仕事から声優にシフトする、きっかけのようなものはあったんでしょうか。
頭のなかにはずっと「声優の仕事をしたい」というのがあったんですけど、なにしろお芝居というものが全くの未経験だったので、少しでも経験を積んでおきたかったんです。映像だと表現の手段として自分の身体も使えますが、声優のお仕事って声だけですべてを表現しなければならない。そのためにはまず、ちゃんとお芝居ができないといけないと思って、何年か顔出しで頑張ってみようと思ったんです。でも舞台やドラマのお仕事って、ひとつのものに集中するので、なかなかたくさんの作品に関わるというわけにいかなかったんです。一時期パタリと仕事がなくなったときに、「いつになったら声優のお仕事ができるのだろう」「むしろ別の道を探して就職したほうがいいんじゃないか」と考えました。そのときに初めて、母に「声優になりたい」という想いを打ち明けたんです。それまでの私はどちらかというと飽き性で、ひとつのことを長く続けられず、すぐに諦めてしまうことが多かったんです。そんな私が初めて見つけたやりたいことだということを感じてくれたみたいで、母は「やりたいならやりなさい」と背中を押してくれました。でも内心は「この子に耐えられるのかしら」と思っていたかもしれません(笑)。それで、大学4年になってから学業と並行して、アトミックモンキー/声優・演技研究所やワークショップに通うようになりました
『HUNTER×HUNTER』で念願の声優デビューを果たされましたが、そのときのお気持ちは?
初めて受けた声優オーディションが『HUNTER×HUNTER』だったので、本当に驚きを隠せませんでした。それだけでなく、『HUNTER×HUNTER』は小学生のときに初めて自分のお小遣いでコミックスを買って、すごく夢中になった作品なんです。アニメも大好きだったので、今また新しくアニメ化されて、しかも自分が主人公のゴンを演じることになるとは思ってもみませんでした。小さいころに触れてきた作品に、再び夢として形になって出会えたというのは、本当にめったにできない経験だと思います。もちろんプレッシャーもありましたし、いろいろとなことを考えましたけど、決まったからにはゴンを演じ抜こうと強く思っていました。最近になって、プレッシャーとか悔しさとかって、自分を強くするものなんだなと考えられるようになったんです。それがあるからこそ、私が今ここにいられるんだと思います。
Vol.2 失敗や悔しさがあるからこそ、自分の成長が感じられるんだと思います。
声優という仕事の面白さ、楽しさは、どういうところにあると思いますか。
老若男女だけでなく、人間以外の役であっても演じられるというところですね。もちろん実写でも特殊メイクなどで変身もできますが、それでも自分の姿が出てしまうじゃないですか。それがキャラクターを通すことによって、見た目の限界を振り切れる、なりたいものになれるというのが魅力ですね。私でも、スタイルが良くて背が高くてキレイな大人の女性になれるし、コロコロしたちっちゃくて丸い物体にもなれるし、夢が広がりますね。
仕事をしていての失敗談がありましたら教えてください。
失敗談というのとはちょっと違うかもしれないんですが、私はキャラクターを定着させるまでにわりと時間がかかるんです。『デジモンクロスウォーズ』のときは放映期間が半年間だったんですけど、ようやく最後のほうになってキャラクターとしての声の振り幅や演技になれてきて、いろいろと遊べるようになったんです。もっと早く安定していたら、もっといろいろな挑戦ができたのに、一生懸命演じることでいっぱいいっぱいだったのが悔しいんです。最初から演技を安定させるってすごく難しいことだと思うんですが、『HUNTER×HUNTER』でも最近になってようやく遊べるようになってきました。だから、今の私がもう一度最初からに演じ直したら、もっと違うゴンになっていたかもしれません。でも、そういう失敗というか悔しさがあるからこそ、今の自分の成長が感じられるということもあるので、失敗もひとつの強みになっているのかもしれないですね。
お母様が声優ということで、苦労されたこともあったのでは?
一緒に仕事をする方のなかにはガンダムの世代であったり、『聖闘士星矢』に出ていた母を知っているという方も多くて、いろいろと私の中でせめぎ合いもありました。でもそういう環境だったからこそ、母の名前という超えるべき壁をしっかり認識できたというのもあります。今は「潘恵子の娘」といわれることが多いんですけど、いつかは「潘めぐみのお母さんって、潘恵子さんだったんだ」といわれるようになりたいですね。母も、自分の娘が声優になると思って仕事を続けてきたわけではないでしょうけれど、母のお陰で大先輩の方々から声を掛けていただけたりするので、改めて母に感謝しています。私の場合は、かなり特殊な環境なのですが、ほかのさまざまな職業に就かれた方にとっても、仕事というのが親に感謝するひとつのきっかけになることが多いんじゃないでしょうか。
演じるときに大切にしていることは?
始まる前はあれこれと考えているんですけど、マイク前では相手役の方の演技を意識しながらも自分は無の状態というか、言葉ではうまくいえないんですけど無意識を意識しているみたいな感覚です。まったくの無意識だと、相手のセリフも入ってこないし、自分もセリフを出せなくなっちゃいますからね(笑)。わりと頭で考えても結局どうにもならないことも多くて、感じたままに動いてみて、それで失敗しちゃったらまた感じたままに動いてみるという、本能的な部分があるんです。そういう感覚って、『HUNTER×HUNTER』でゴンを演じていくうちにつかんだものなので、役から得られるもの、作品から得られるものってすごく大きいんですよ。だからそういう意味では、どんな役でも愛すること、そういう気持ちが一番大切だと思います。
声優を目指す人に「これだけはしておいたほうがいい」というようなアドバイスはありますか。
自分でやってきてよかったなと思う経験談になっちゃうんですが、いろいろなものを見たり、食べたり、勉強したりと経験してきたことですね。学校の勉強は、今になってし足りなかったと思うことも多いんですが……(笑)。例えば美味しいものを食べたことがなければ、演技で美味しいという感覚を表現することができないと思うんです。そういう日常的な感覚を大事にしてほしいです。とにかく目についたことをなんでも経験してみれば、いつか必ず演技に役立つはずだし、声優以外の道に興味をもつきっかけになるかもしれない。声優になるなら、ほかにも魅力的なことがいっぱいあることを知った上で、声優という仕事を選んでほしいですね。私自身としてはもっと勉強しておけばよかったと思う以外にも、もっとひとつのことを長く続けるという経験をしておけばよかったなと思ってます。小さいころにはバレエを習っていたんですが、小学校時代に流行に流されてヒップホップに転向しちゃって、それすらも今は通えていない状態なんです。今になって、親や先生が言ってくれたことって、子供にとってはうるさく思えても、決して間違ってなかったと、すごく感じますね。自分がどの道を選ぶにしろ、もっと素直に聞いていればよかったと思ってます。
今後やってみたいこと、目標などがありましたら教えてください。
お芝居として経験してみたいのはコメディですね。絵と尺が決まっているなかでどれだけ遊べるのか、相手役といかにお芝居の掛け合いができるのか、コメディってそういうところが難しいと思うので、ぜひチャレンジしてみたいんです。そのなかでアドリブを入れられたらどれだけ素晴らしいんだろうと、先輩方を見て感じています。いい意味で遊べる役者さんになりたいですね。あと、舞台は常に続けていきたいなと思っています。声優というのは画面のキャラクターに声を当てるお仕事なので、なかなかお客様のリアクションを、そのとき生で感じる機会がないので。だから演じるときにも「こうしたらどんな反応があるかな」と想像するしかないんですね。でも舞台は目の前にいるお客様のリアクションをリアルに感じられるので、すごく勉強になるし励みにもなるんです。ですから、さまざまな方々とコネクションを作って、ずっと舞台に立ち続けていきたいですね。