畠中祐

畠中祐のゆっくりすくすく 第49回

畠中祐

このコラムでは畠中さんのお仕事や好きなもの、感銘を受けた作品などについて語っていきます。

今回選んだ作品はNetflixで配信されている映画『希望のカタマリ』。
今回は、ちょっと宣伝になっちゃうんですけど、僕が吹き替えで参加させてもらった作品の話をさせてください。

コロナの影響で、声優の仕事はほぼ別撮りになっちゃいました。だから、お芝居の上で一番大事になる掛け合いができない。一人でお芝居をするほど寂しいものはありません。でもコロナだからしょうがない。苦しいところです。

でもこの作品は、万全の対策をとった上で、今回の主役であるアンバー役の屋比久知奈さんと2人で、掛け合いでアフレコができました。ものすごく繊細な心理描写のある作品でしたので、こうして掛け合いでお芝居ができて、本当に良かったです。

さて、今回の映画は、アンバーという女の子が主役です。彼女は、普通の女子高生として過ごしてますが、実はホームレスです。暮らす家がありません。ミュージシャンだったお父さんを早くに亡くしており、お母さんとの二人暮らしなのですが、お母さんが次に付き合った男性のせいで、アルコール依存に陥り、暴力も振るわれて家庭をめちゃくちゃにされました。しかしお母さんは、世間的にダメな母親という烙印を押されることに恐怖を感じており、公共の支援に頼れません。だから、再び、その元カレと関係を持ってしまいます。

そんな中で彼女は、本当に天真爛漫で、高校生活を明るく謳歌していました。友達にも恵まれ、チャリティー活動を積極的に行い、周りからの信頼も絶大です。そんな彼女に、名門演劇大学から、入学オーディションへの招待メールが届きます。彼女の夢は、アーティストになることでした。しかし、そんな中、さまざまな困難が彼女を襲います。

でも彼女は、頑なに、周りの援助を拒むのでした。

この作品は、一見爽やかな青春映画にも見えますが、そこで描く内容は、貧しさと、リアルな心理描写でした。彼女は、人には親切を振りまくのに、自分に向けられる親切は拒絶し続けます。きっとどこかに、人からの親切を抱えきれない恐怖みたいなものがあるのかもしれません。借りたとして、すぐに返せるのが当たり前なのだとしたら、それは恵まれてて、返せないかもしれない。その確証がない。まずそのことを自覚するのも、自尊心が大きく傷つく。そんな状況下の中で、無意識に頼れない心が出来上がっていってしまったのかもしれません。彼女の笑顔の裏にある、静かにさりげなく、でも深い問題は、この物語の「傷つく」という心理描写をリアルに浮かび上がらせます。

もう、これでもかというくらいの逆境に、胸が痛みます。頼れない彼女の気持ちを思うと余計に辛い。でも最後には、彼女が周りの人たちに真っ直ぐ向き合ってきたからこその、最高のプレゼントが待っていました。とにかく、キャストの皆様のお芝居が最高で、涙が止まりません。繊細で、でも深い愛を感じることができる彼らのお芝居に、見終わった後はものすごく前向きな気持ちにさせられます。

僕はこのアフレコのワンシーンで、アンバーの歌を聴きながらピアノを弾くシーンがあるのですが、そこでは本当に、屋比久さんの歌を聴きながらアフレコをさせてもらいました。もうね、どこまでもまっすぐまっすぐ心に届く歌でした。本当に素晴らしい。涙が出るほど素晴らしいのです。うまいとか、そんな一言じゃ言い表せない、気持ちに届く歌声。僕もこんな歌を歌えるようになりたいと心から思ったワンシーン。ぜひ観てもらいたいです。

このような作品に吹き替えで参加できたこと、本当に幸せに思いました。やっぱり吹き替えっていいな、最高です。タイ役で出てるので見てくださいね(笑)。

次回の「畠中祐のゆっくりすくすく」は、10月31日(土)に更新予定! お楽しみに!

畠中さんに質問!

Q:自分のテーマソングを決めるとしたらは何の曲にしますか?(和歌山県・オフトンスキー)

オフトンスキーさん質問ありがとうございます!!!
そうですねぇ、サンボマスターのできっのないをやらなくちゃですかね!(笑)

畠中祐が今、答えます!!!

畠中さんが動画でも質問にお答えしていきます。
今回のお便りのテーマは「あなたの理想の老後を教えてください!

次回のお便りのテーマは「あなたの新人・新人さんとのエピソード」です。畠中さんとも交流のある小林千晃さんが10月4日(日)20時より声グラオトメチャンネルで「小林千晃の魔王道」という新番組を開始されます。チャンネルでは新人の小林千晃さんにかっこいい姿を見せるべく、畠中さんもラジオ「俺にかまわず先に行け!」により力を入れてくれることでしょう……! というわけで、今回は皆さんから新人時代のエピソードや新人さんとのエピソードを大募集! たくさんのおたよりをお待ちしております!

畠中さんへの質問&お便りを大募集!


    はたなかたすく
    8月17日生まれ。神奈川県出身。賢プロダクション所属。主な出演作はアニメ『俺が好きなのは妹だけど妹じゃない』(永見祐)、『バジリスク ~桜花忍法帖~』(甲賀八郎)、『ダイヤのA ActⅡ』(浅田浩文)、『うしおととら』(蒼月潮)、『KING OF PRISM by PrettyRhythm』(香賀美タイガ)ほか。