畠中祐

畠中祐のゆっくりすくすく 第57回

畠中祐

このコラムでは畠中さんのお仕事や好きなもの、感銘を受けた作品などについて語っていきます。

今回選んだ作品は番組『時計仕掛けのオレンジ』。
ずっと見たいと思ってた映画です!スタンリー・キューブリック作品だと、「シャイニング」とか、「2001年宇宙の旅」とか観てきましたが、やっぱりその映像美には毎回驚かされますよね!!この「時計仕掛けのオレンジ」も一体どんな映像美で魅せてくれるのかワクワクしながら映画を見始めました!!!

んー。
んーーー。
うわっ。うっわぁ。
んーーーーーーーーー。

なんだこれは。まあ確かに映像美はすごいですよ。溢れ出るレトロフューチャー感はたまらないし、全体を漂う退廃した感じとか、世界観の作り込まれ方もすごい。ただ、それを上回る暴力。暴力。暴力。もうこれでもかっていうくらい暴力的な映画でした。なんかグロいとかエロいとも違う、ただ暴力による興奮が描かれているんでしょうか。もう、主人公がたまらなくクズでした。

主人公はアレックスという15歳の青年で、彼は仲間を引き連れて、ドラッグ入りのミルクを飲み、興奮状態でホームレスを棍棒で叩きのめしたり、ほかの暴力団と抗争したり、金持ちの家におしいって奥さんをレイプしたり、もう無茶苦茶酷いことをしまくってるやつでした。ところがある日、仲間割れを起こして、事件を起こした夜、アレックスだけが逮捕されてしまう事態が起きます。彼は14年の刑を言い渡され投獄されますが、そこで、「ルドヴィゴ療法」という犯罪者を更生させる新しい治療法の実験台になれば、早く表の世界に出られることを知り、彼は被験者となるのですが、、、

いやぁ、この映画、出てくる登場人物の1人も好きになれませんでした。みんな少し引っかかる胸糞悪さがあります。なので、この主人公が劇中どれだけ悪を捌かれたとしても、悪を捌いてる側のことを全然好きになれないし、ただただスッキリしない感情のみが胸に残ります。

何でこんな胸糞悪いのか。
多分、暴力がこの映画では、割と肯定的に描かれているからかもしれません。暴力はいけない、何かを傷つけてはいけない。この理性は、僕らが最も早く体得するものだと思います。でもその理性を得るまでは、きっと、性的興奮も、暴力で得る興奮も、きっと同じような快楽だったんじゃないでしょうか。小さい頃の僕は、よく蟻の穴に水を流し込んだりほじくりかえして遊んでた記憶があります。今考えると本当にひどいことをしていたと思いますが、当時はそれが楽しかった。その楽しさや興奮は、きっと、この映画の主人公、アレックスのそれと同じものだったのかもしれません。だから、目を塞ぎたくなる。その興奮に見覚えがあるから。だから無茶苦茶、胸糞悪いです。

でもやっぱり全体を漂う雰囲気は洒落ていて、強烈に脳裏に残ります。主人公が暴力を奮いながら口ずさむ「雨に唄えば」の歌が耳から離れません。何と役者さんのアドリブで歌ったのが採用されたとか。いやぁ、すごいセンスです。胸糞悪くさせるセンスが抜群。でも、そんな雰囲気、演出、役者の凄さにやっぱり惹きつけられてしまうんですよね。改めてキューブリックの映画のすごみを感じたような気がします。皆さんはどのような感情に襲われるでしょうか。是非ご覧ください。

次回の「畠中祐のゆっくりすくすく」は、6月26日(土)に更新予定! お楽しみに!

畠中さんに質問!

Q:私も『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』観ました!畠中さんの好きなキャラクターが知りたいです!(岡山県・maan)

maanさん、質問ありがとうございます!!俺はもう旧劇場版のときから、ずっとミサトさんです!!今回もたまりませんでしたね!!

畠中祐が今、答えます!!!

畠中さんが動画でも質問にお答えしていきます。
今回のお便りのテーマは「あなたが最近、思わずツッコミを入れた出来事」です。

次回のお便りのテーマは「あなたのおうちカレーのこだわりポイント」です! たくさんのおたよりをお待ちしております!

畠中さんへの質問&お便りを大募集!


    はたなかたすく
    8月17日生まれ。神奈川県出身。賢プロダクション所属。主な出演作はアニメ『俺が好きなのは妹だけど妹じゃない』(永見祐)、『バジリスク ~桜花忍法帖~』(甲賀八郎)、『ダイヤのA ActⅡ』(浅田浩文)、『うしおととら』(蒼月潮)、『KING OF PRISM by PrettyRhythm』(香賀美タイガ)ほか。