このコラムでは畠中さんのお仕事や好きなもの、感銘を受けた作品などについて語っていきます。
今回選んだ作品は舞台『NODA・MAP「フェイクスピア」』。 でかい劇場で舞台を見たとき、だいたいチケット代は1万円を超えてきます。普通に考えると高い。そりゃ高いですよ。でも、その舞台はいわば「最高の体験をさせてくれる場所」で、そんな体験ができたときは、たとえチケット代が3万円でも5万円でも、本当に見てよかった。ありがとうという気持ちになるものです。 この舞台はまさしくそれ。何にも変え難い経験をくれました。チケット代以上の、何倍もの力をくれます。 すみません、今回は映画では無く舞台の感想です。でも正直、あらすじを詳しく説明すると、ネタバレしてしまう可能性があり、絶対にネタバレなしで観てもらいたいギミックになってますので、あんまり多くを語れないのです。ただ、本当に多くの人に見てもらいたい、その熱量だけで書いていこうと思います。何言ってるかわからなかったらすみません!! まずこの舞台は、劇作家・演出家の野田秀樹さんが主催の演劇企画製作会社でNODA・MAPというチームがプロデュースしています。もちろん、作・演出は野田秀樹さんが務めるのですが、この人の書く作品が本当に独特なのです。 まず野田さんが現れたのは1970年代後半。1960年代などに見られた、新劇のリアリズム演劇に反発する演劇運動とは違う、どちらかというとエンターテイメント性の高い演劇が、小劇場演劇の主流になっていた時代でした。その中でも野田さんは表現が特徴的で、瞬く間に小劇場演劇界を席巻していきます。自らの劇団「夢の遊民社」の成功後、人気絶頂の時に劇団を解散し、そこから一年ロンドンに留学、その後日本に戻ってきた1993年、NODA・MAPを作り出しました。僕は正直、このNODA・MAPが作られてからの、ほんの少しだけしか野田さんの演劇を見たことはないのですが、それでも強烈に脳裏に焼き付く、新しい演劇体験でした。 野田さんの演劇は「言葉遊び」を使ったパワフルでスピーディーなお芝居が特徴です。まず台詞が韻を踏んだり、ダブルミーニングを多用したり、詩的だったり、かなり独特です。それを役者が物凄い速度でパワフルに演じていくもんだから、息つく暇もありません。その圧倒的熱量にいつの間にか飲み込まれていきます。ここで面白いのが、現実なのか夢の中なのかわからない空間を、言葉遊びによって、観客が行ったり来たりさせられるところです。物凄く混乱します。でもその言葉の中に隠された「現実」が、物語が進むにつれて明かされていくのですが、もう、その現実が浮き彫りになる瞬間が鳥肌ものなのです。突如リアルに浮かび上がってきて、その現実に呑まれます。圧巻としか言いようがないのです。例えば「ロープ」という戯曲を読んだ時に、最初これは、プロレスの話なんだと思って読んでいました。でも、最後はプロレスの話じゃなくて、ベトナム戦争の話になってたんです。学生の時に劇場で見た「エッグ」という作品も、オリンピックのエッグという競技を描いた話のはずが、いつの間にか戦時下の満州で起こった悲惨な事件の話になっているのです。もうその濁流のような、舞台終盤にかけての流れに涙が止まらない衝撃を受けます。 今回の舞台も、その野田さんの特徴が炸裂しています。今回のお話は、恐山のイタコさんの話。そこに、若い男性と、歳を重ねた男性の2人が同じタイミングで訪ねてきます。最初はがっつりコメディで、その生き生きとした芝居に釘付けになっていたのですが、、、、もうね、ここから先は是非見てもらいたい。こんな今だからこそ、そこには背中を押してくれる力強いメッセージがあります。高橋一生さん、橋爪功さん、白石加代子さんをはじめとする役者陣の怪演に乗せて、一生胸に残る経験を味わえると思います。7月11日まで東京芸術劇場でやってます。7月15日から25日まで大阪でもやります! どうか間に合ってくれ!! 行けたら観に行ってくれ!! 全く関わってないのにそう思って仕方のない作品です。本当にありがとう。演劇は素晴らしい、そう心から思わせてくれる舞台でした。 |
次回の「畠中祐のゆっくりすくすく」は、7月31日(土)に更新予定! お楽しみに!
畠中さんに質問!
Q:『MARS RED』観てます! 畠中さんは太陽と月、どっちが好きですか?(北海道・天ぷらはかぼちゃしか勝たん)
天ぷらはかぼちゃしか勝たんさん、『MARS RED』見てくれてありがとうございます!!
そうですね、やっぱり太陽が好きですかね。朝目覚めた時に入ってくる朝日が1番好きかもですね!
畠中祐が今、答えます!!!
畠中さんが動画でも質問にお答えしていきます。
今回のお便りのテーマは「あなたのおうちカレーのこだわりポイント」です。
次回のお便りのテーマは「あなたが影響を受けたマンガを教えてください」です!
7月17日は「マンガ」の日ということで、このテーマに決定!
例えば……
・このマンガをきっかけにスポーツを始めた。
・主人公と同じルーティンを取り入れた。
・キャラの口調をマネしてみた。
など、たくさんのおたよりをお待ちしております!
畠中さんへの質問&お便りを大募集!
はたなかたすく
8月17日生まれ。神奈川県出身。賢プロダクション所属。主な出演作はアニメ『RE-MAIN』(猪俣ババヤロ豊)、『MARS RED』(栗栖秀太郎)、『SK∞ エスケーエイト』(喜屋武暦)、『ましろのおと』(田沼総一)、『ダイヤのA ActⅡ』(浅田浩文)、『うしおととら』(蒼月潮)、『KING OF PRISM by PrettyRhythm』(香賀美タイガ)ほか。