畠中祐

畠中祐のゆっくりすくすく 第59回

畠中祐

このコラムでは畠中さんのお仕事や好きなもの、感銘を受けた作品などについて語っていきます。

今回選んだ作品は映画『地下鉄に乗って』。

最近、ものすごく昔の日本に惹かれます。なぜでしょう。最初は建物でした。東京オリンピックに向けて壊された建物や、これから壊される建物にすごく興味が湧いて、調べ始めました。

そうすると、すごく興味深いことがわかってきました。ほぼその建物たちは1964年のオリンピック前後に建てられた建築物なんです。きっと、このビルが立つ前にはここには別の家々があって、それを壊してこのビルが建ったように、このビルも壊され、また新しくビルが建つ。そんな東京の圧倒的な新陳代謝の速さに圧倒されながら、残されたビル達の最後の瞬間に哀愁を感じます。57年前の東京オリンピックに建てられたビル達は、今やっている東京オリンピックの中、壊され、新しくまたビルが建てられます。

だからこそ、今東京に残っている、昔からあった景色を目に焼き付けておきたい。東京に残ってる「昔」の新しさを、記憶の中にしまっておきたいと思いました。だから、今回の映画のチョイスも、昭和の東京が味わえるこの映画にしようと思いました。

「地下鉄に乗って」この映画は、主人公の小沼真次が、仕事ばかりで家族を顧みることのしなかった父の過去を、地下鉄に乗って過去にタイムスリップすることによって知っていく物語です。この映画、実はネット上では賛否両論です。なぜかと言うと、この映画の中で、主人公は不倫をしており、その不倫相手のみち子との関係が色濃く描かれます。たしかに、これは複雑な気持ちになるかもしれません。でも、それが過去と今をつなぐ伏線になっていくのです。結果ものすごく切ない物語でした。それほど、誰かを愛した、その美しさと切なさが描かれた映画でした。

結局、この映画に出てくる戦中の銀座線地下鉄の車内の光景や、戦後の東京の闇市の混乱、そして1964年の東京オリンピックに沸き立つ新中野も、今はガラッと姿を変え、そのほとんどは今は見れません。そこに必死に生きた人々の姿も、今はもう、ほとんど見れなくなりました。でも確かにそこには熱がって、出会いと別れがあって、愛があった。息子達を愛した父がいて、帰ってこない恋人を想う1人の女性がいた。東京の流れの速さに呑まれ、消えてしまった光景や想い、でも確かにあった想いを、しっかりと目に焼き付けたいと思い、この映画を見ました。すごく切なく胸に響く、味わい深い映画でした。

皆さんも映画の力で、昭和の日本にタイムスリップしてみるのはいかがでしょうか。新しさも、懐かしさも、変わらない想いも、消えてしまう前に、ぜひ記憶に焼き付けていただけたらと、思いました。

次回の「畠中祐のゆっくりすくすく」は、8月28日(土)に更新予定! お楽しみに!

畠中さんに質問!

Q:最近感動した出来事やエピソードはありますか?(和歌山県・まーしゅ。)

まーしゅさん! 質問ありがとうございます!! ブルーインパルスが描いた五輪の輪を、たまたまちょうど頭上で見れたことですかね!

畠中祐が今、答えます!!!

畠中さんが動画でも質問にお答えしていきます。
今回のお便りのテーマは「あなたが影響を受けたマンガを教えてください」です。

次回のお便りのテーマは「あなたのアルバイト経験談を教えてください」です!
8月10日は「バイトの日」ということで、皆さんのアルバイト経験談を教えてください。
アルバイトで勉強になったこと、嬉しかったころ、失敗談、おすすめバイトなど幅広く募集いたします。

畠中さんへの質問&お便りを大募集!


    はたなかたすく
    8月17日生まれ。神奈川県出身。賢プロダクション所属。主な出演作はアニメ『RE-MAIN』(猪俣ババヤロ豊)、『MARS RED』(栗栖秀太郎)、『SK∞ エスケーエイト』(喜屋武暦)、『ましろのおと』(田沼総一)、『ダイヤのA ActⅡ』(浅田浩文)、『うしおととら』(蒼月潮)、『KING OF PRISM by PrettyRhythm』(香賀美タイガ)ほか。