福山潤

【インタビュー】福山潤 5thシングル「NEW DRAMA PARADISE」本日1月18日(水)発売!【声グラweb限定】

【インタビュー】福山潤 5thシングル「NEW DRAMA PARADISE」本日1月18日(水)発売!【声グラweb限定】

現在放送中のTVアニメ『吸血鬼すぐ死ぬ2』で、OPテーマ「NEW DRAMA PARADISE」を歌う福山潤さんにインタビュー。楽曲制作の裏側や、『吸死』のアフレコ現場について語っていただきました。第1期に続き2度目のOPテーマを制作した福山さんですが、だからこその“葛藤”もあったようで……。

地名を特定せずとも気づかせる歌詞の妙

――第1期のOPテーマ「DIES IN NO TIME」と違い、今回は作詞に福山さんのクレジットが入っていませんが、制作にはどのように関わりましたか?

関わり方自体はほぼ同じです。松井さん(※作詞家・松井洋平さん。2ndシングル「Tightrope」以降すべてのシングルで福山さんと作詞を務める)と、一緒にやらせてもらうときは、いろんなやり方で作詞をしているんですよ。「Tightrope」のときは、松井さんに枠組みを作ってもらって、後から僕がワードを出していくという方法でしたし、「Moving」(3rdシングル「dis-communicate」カップリング)は、僕がまず1コーラスを作って、2コーラスを松井さんに渡して、オチを僕が作るというリレー形式をとりました。それこそ、「DIES IN NO TIME」のときは音数が多かったので、アイデアとワード出しをひとまず打ち合わせして、そのワードを音にはめていく工程は松井さんに委ねました。

 ――曲によってメロディもリズムも違いますし、それぞれに適したやり方があるんでしょうね。

 今回は、制作の都合上時間がタイトで、僕の作業の割合を増やすと納期に間に合わないとわかっていたので、打ち合わせをしたあとはすべて松井さんに委ねたんですよ。なのでクレジットから抜いてもらいました。「僕の割合が少ないので」と。僕がやったことといえば最初の打ち合わせと、上がってきた歌詞を見て2カ所だけ変更をお願いしたことくらいですね。松井さんは、打ち合わせの段階で方向性を理解してくれますし、なおかつ打ち合わせで出た入れたい要素を全部歌詞に入れてくれるんです。今回は前作以上に作詞の時間がなかったはずなんですけど、素晴らしい詞に仕上げてくれました。

 ――では、最初の打ち合わせではどんな話し合いがあったのでしょうか?

 「DIES IN NO TIME」は、ドラルクとロナルドの二人をメインに置いていたんですが、今回はその二人だけじゃなく、新横浜にいるみんなをメインにして「一人じゃない。“みんな”なんだ」というところが歌詞のテーマになりました。あとは、ロケーションも入れたいので「(作品の舞台である)新横浜を入れましょう」と。「だけど、新横浜と特定できるようなワードを入れるのはやめましょう」「だけど、特定のものを歌いましょう」という話になりました。

 ――難しそうですが、すごく面白いアイデアですね。

 そこでまず、新横浜のいいところを挙げていったんですけど、住んでいるわけじゃないからあまり浮かばず。いろいろ考えた結果、ちょっと視点を変えて“新横浜という新しい土地に来た人”の視点で、その土地を語るような詞にすることにしたんです。アニメも第2期になると、1期で出会った人たちはあらかじめいて、そこに新しいキャラクターを迎えていきますよね。その新しいキャラクター側に立った歌にしようと。そうすれば人も大勢出てくるので。

 ――当初の「新横のみんなをメインにする」という部分もしっかり描けますね。

 そうして、“親交を深めていく”という流れもわかりやすいしありなんでしょうけど……この作品のテイストを考えると、そうじゃないんですよね。握手やハイタッチをするイメージではなくて、ぶつけ合うようにして仲良くなっていく。それがしっくり来るなと思っていました。歌詞に〈手をはたく〉という部分がありますけど、これは打ち合わせの段階で出ていたワードですね。

 

「前作はうまく行きすぎた」2作目の葛藤

 ――歌詞を読んでいくと、打ち合わせの内容が丁寧かつテンポよく反映されていることがわかりますが、先ほど言っていた「2カ所だけ変更をお願いした」歌詞というのは?

 意味を変えたりはしていないですが、〈なんにも成してなくたってなすのさ群れを〉は、もともと「群れをなしたってなにも成さなくたっていいじゃない」というような言い回しだったんです。そこを倒置にして「群れ」を強調させつつ、「なんにも成していないんです」という気持ちの部分も立たせました。言葉の納まりもそっちの方がいいのかなと。

 で、もう一つは、〈ここに来たなら踊らにゃ損ちゅうことなんじゃない?〉です。最初は「ここに来たなら踊らなきゃ損っていうことなんじゃない?」という言い方だったので、方言に変えました。「踊らなきゃ損っていうことなんじゃない?」の「っていう」に、カドがあるなと思ったんですよ。そこを「ちゅう」に変えて、“段差”をなくした感じです。「踊る阿呆に見る阿呆 同じ阿呆なら踊らにゃ損々」に結びつけたかったという気持ちもあります。

 ――阿波おどりの歌い出しですね。

 結局、このアニメはアホばっかり出てきますし、いろんなアホが登場するじゃないですか。潜在的にそういう精神が備わっているんじゃないかなと思ったので、意味があるわけではないですが方言にさせてもらいました。しかも、ここに方言を入れることでストレンジャー(※外国人・異邦人などの意)だということもなんとなく伝わるかなと思いました。

――また、『DIES IN NO TIME』は、アフレコ前に制作されたと聞きました。対する今作は、作品に対する理解度もかなり高まった状態で制作に入れたかと思いますが、やりやすさは感じましたか?

 あ、すごくやりにくかったです!

――逆に。

 ですね。というのも、『DIES IN NO TIME』がうまくいきすぎたんですよ。当時はまだアフレコも始まっていないけれど、原作が面白いことはわかっていたから「ドタバタができるね」「作詞も含めてギミックがいろいろ作れるね」と思っていましたし、実際にアニメも面白くて、最終回ではエンディングにも使ってもらったりして。うまくハマりすぎちゃったんです。これを受けて第2期のOP制作となったとき、松井さんとの打ち合わせの第一声が「やりづらいっすね」だったんです。おそらくこの時、僕と松井さんは同じことを考えていたでしょうね。なのでまず、「DIES IN NO TIME」みたいにしようというのをやめましょう、と。「あれを一つの成功例として考えるのをやめましょう」「あれは偶然だから、今回も偶然を狙いましょう」と念頭に置いて、制作に入ったのを覚えています。

 

過酷なアフレコで特に苦労しているのは……?

 ――カップリング「路地裏からの空」は、サウンドの雰囲気が大きく異なる楽曲になりましたね。

 いやぁ、これまた楽しい曲になりました。前々から「歌謡曲をやりたいです」と言っていたんです。久保田早紀さんの「異邦人」とか八神純子さんの曲のような、壮大な、もしくは叙情的な曲がいいなと。で、表題曲の制作後に松井さんと話したときにもその話を伝えたんです。歌謡曲って、旅をする曲が多いじゃないですか。新たに訪れた土地でのことを描くじゃないですか。それは、「NEW DRAMA PARADISE」でやりましたよね?と。

――たしかに。歌謡曲の歌詞のスタンダードは、表題ですでにやっていますね。

 だから、「カップリングは逆です。どこにも行かないし何もしない歌謡曲にしましょう」という話をしました。なので、よく歌詞を見ていただくとわかるんですけど、いろんなロケーションが入っているし、〈渡り鳥〉とかも出てくるんですけど、この主人公は何もしていないしどこにも行っていないんです。

――そう、不思議な歌詞ですよね。ずっと思い出をしゃべっているような、物思いにふけっているような。「何もしていない」と聞いて納得しました。

 何もせず、どこにも行かず、ただただ地元にいる男の歌です。それを歌謡曲として見せたいというオーダーに、松井さんが120%で応えてくれました。もうイメージどおりです。

――レコーディングも楽しかったでしょうね。

 楽しかったですね! このレコーディングの最中は、みんな笑っていましたもん(笑)。歌謡曲として本気で歌ってます。「DIES IN NO TIME」のカップリングは「HEALTH-iNG」という健康診断の歌だったんですけど、その関係性をそのまま持ってきた形ですね。

――今作も見事にまとまったシングルになったんですね。また、『吸血鬼すぐ死ぬ2』についても聞かせてください。取材時点では放送スタートまで3か月ほどありますが、アフレコはどんな状況でしょうか?

 実は、もう終わっています。

――そうなんですか! すごく早いですね。

 制作はとても優秀ですね。正直、なんでそんなスケジュールでできているのかはわからないんです。1期制作時点では2期のことまで考えていないから、第1期のリテイクやパッケージまで含めてすべて終えてからじゃないと2期の制作に取りかかれないはずなので。にもかかわらず、2期のアフレコも1話は100%絵があったんですよ。どんなスケジュールでやったんだろうと不思議ですね。

――2期のアフレコはいかがでしたか? ハイテンションのギャグアニメだけに、1期の頃から過酷だったと聞きますが。

 2期も変わらないですよ。ただ過酷度は、古川(慎)くんと僕でいえば古川くんのほうが高めですね。2期の初回って、初めて観る方を見越してちょっと仕切り直すじゃないですか。この作品で言えば、ロナルドとドラルクの割合を多めにして、初めての人に「この二人がメインになっている、こんな世界観の作品です」と提示すると思うんですけど、実際はそんなことやっていないんですよ。あくまでも次の話を普通にやっていますし、登場人物も最初の段階から多いので、ロナルドが全方位に突っ込まなきゃいけない場面が多いんです。だから大変。

――喉を酷使してしまいそうですよね。以前のインタビューでもそんなお話をされていたかと。

 だから2期が始まる前のラジオで、古川くんと一緒に取り決めをしたんですよ。「テストの段階では(声とテンションを)抑えようね」「テストで抑えていても、お互いに『抑えやがって!』とか思わないようにしようね」って紳士協定を結んでからアフレコに入ったんですね。で、1話が終わり、2話も終わった頃に気付いたんです。古川くんのほうが大変だなって。だから「ごめんな、君が大変だったね」と言ったら、「本当ですよ。話が違うじゃないですか」と言っていました(笑)。

でも、今回も構成が非常にうまくて、各話で頑張るキャラクターの割合ができるかぎり調整されているんですよ。ロナルドがきたら、次はドラルク、そのあとは別の吸血鬼が……という感じで。だからずっと頑張り続けているわけではないので、そこは安心しつつ見ていただけたらと思います。

 

福山潤

ふくやまじゅん●11月26日生まれ。BLACK SHIP所属。主な出演作は、『おそ松さん』(松野一松)、『キングダム』(嬴政)、『暗殺教室』(殺せんせー)、『青の祓魔師』(奥村雪男)、『コードギアス』(ルルーシュ)、『ツルネ ―つながりの一射―』(二階堂永亮)、『老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます』(山野剛史)、『真・進化の実〜知らないうちに勝ち組人生〜』(ゲンペル)ほか。

福山潤5thシングル「NEW DRAMA PARADISE」は、ポニーキャニオンより1月18日リリース。作詞をTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDの松井洋平、作曲をfhánaの佐藤純一が務めている。初回限定盤、通常盤、アニメ盤、きゃにめ限定盤の4形態で、きゃにめ限定盤は24ページのオリジナルブックレットと表題MV、MV&ジャケット撮影メイキング映像が付属。

 

取材・文/松本まゆげ