福山潤さんが新たな表現媒体、Audibleで「オーディオファースト作品」を朗読!
世界最大級のオーディオブック及び音声コンテンツ制作・配信サービスであるAmazonオーディブル(以下、Audible)は、2024年5月にオーディオファースト作品を2作品リリース。芥川賞作家である金原ひとみさんによる『ナチュラルボーンチキン』が5月17日(金)に、直木賞作家の大沢在昌さんによる『夜刑事(ヨルデカ)』が5月24日(金)より配信されています。
今回、『夜刑事(ヨルデカ)』の朗読を務める福山潤さんに【seigura.com限定】でインタビュー! ハードボイルドでユニークな作品世界の表現、活字より先に音声で配信される「オーディオファースト作品」ならではの魅力やその展望などお話しいただきました。
孤立しながらも群体のために動くということにカタルシスを感じました
――主人公は「ヴァンパイアウイルス」に感染し特殊な能力を得るも、組織内外から孤立した存在。共感できる点や印象的に感じた点をお聞かせください。
組織に関わらず、これまでの慣習といったものに異分子となるものを群体は拒絶する傾向にありますから、何か多数の意見や価値観と異なるものを提示すれば、その反応は日常生活や普段の環境の中であっても起こるものだと思います。そういった経験は一つ一つは挙げあませんが多く経験してきた記憶はあります。しかし、そこには自身の抗えない性(サガ)と言いますか、生き方にもつながるわけで。主人公が孤立感を持ちながらも、所属するその群体の為に動くということには惹きつけられるカタルシスがあると感じました。
――実際に「ヴァンパイアウイルス」に感染したとしたら声優としてはどんな活動になりそうでしょうか?
夜の収録にとても強くなりますし、深夜ラジオや早朝の番組用のナレーションなどの収録には即対応できそうですね(笑)。眼に関しては暗闇でも字が読めるのであれば、モニターの光源を気にしておくくらいでよさそうです。感染で身体が強くなるのであれば声帯も強化されるので万々歳ですし、回復力も上がるならば叫び放題ですね。仕事は基本的にスタジオ内なので、日光を気にしなくていいなら声優に限っていえば「ヴァンパイアウイルス」に感染してもいい事ばかりな気がします。
――収録やディレクションはどのように行われましたでしょうか。
口の体力もあるので、一日3時間、約50ページを目安に収録していました。基本的に読みは僕に任せてくれていたので、聞こえ方や読み間違い、アクセントの確認など、主観的にカバーできないところを全面的にディレクションでチェックしていただきました。
ワンシーンに数人以上筋骨隆々の男が出てこないことを願っていました(笑)
――作品の世界観を表現するのに、特に意識したこと、苦労したことなどはありますでしょうか。
ハードな語りとユーモアあるニュアンスのところも混在していますが、地の文が三人称ではなく、一人称の主観で語っているので読む分には違和感なく入ってきました。あとは聞き手側の違和感が無いようには気を付けたつもりではありますが、そこは皆様に聞いていただいてのジャッジになりますね。
――作品には老若男女・多国籍なキャラクターが多数登場しましたが、全てお一人で演じられていました。
そこは難しい事ばかりでした。例えば黙読と音読の見方の違いです。基本的に黙読している段階では頭で誰が喋っているのかが分かれば不都合はありません。ただ小説は書き方の都合上、話者が台詞の後にしかわからない書き方をすることが多く、それが朗読になると読み方・語り方で人物を判別する分、かぎかっこごとに誰が話者なのかを記して朗読しないと、作業としてはややこしいモノがありました。また実演に関していえば、ハードボイルド物は筋骨隆々な人物が多く出てくるのですが、自分の声のレンジとして普通にやってしまうと細めの肉体のイメージになってしまいます。その肉体感を鑑みてワンシーンに数人以上筋骨隆々の男が出てこないことを願っていました(笑)。
――特にお気に入りの場面をお聞かせ下さい。
主人公の刑事・岬田の上司に当たる前川課長とのシーンが個人的に気に入っています。ドライでもあり、部下としての仲間の意識も見えて、面白いと感じていました。
娯楽と利便という現代のニーズに応えたものだと感じています
――Audibleの「オーディオファースト作品」を朗読することになった際の感想をお聞かせください。
大変光栄ですし、楽しみでもありました。朗読は読み物としてあるものを音読することが基本ですので、先ず最初に音声から触れて頂けるというのは、作品の音読世界を先入観の少ない状態で始められるという、読み手としてはありがたいジャンルだと僕は感じました。
――Audibleやオーディオブックは普段ご利用になりますか?またどのような場面でよくお聴きになりますか?
今回の出会いを機に触れることになりました。自分は主に向学の為に触れるというかたちになります。朗読する読み手によって価値観は違いますし、聞き手としてはどの様に聞けるものなのか、等々。自分は読み手を生業にしていますので、どうしても黙読という形が中心にはなりますが。
――声優として感じた、ボイスドラマや副音声解説とは違う「オーディオファースト作品」の面白さや特徴などをお聞かせください。
読み聞かせ、という昔からある手法を、娯楽と利便という側面を捉えた現代のニーズに応えたものだと感じています。「本を読む」を「本を聴く」そしてそこから読む、という流れや、読むだけでは補完出来ない情報を音声で補填することも可能ですから、その意義は高いと感じています。
――オーディオファースト作品としてやってみたいことをお聞かせください。
機会があるのであればエッセイや、書評、ルポ、軽快なコメディ作品など小説とはまた違った読み物に挑戦したいですね。そうなるとまたアプローチは全然違うモノになると思いますが。
――あくまで音声が最初の表現方法となる領域で、声優として今後の展望をお聞かせください。
朗読する読み手側ではなく書き手側の選択肢としてですが、「音読される」というギミックを使った創作も可能になってきますので、その中であらたな表現や受け取り方がうまれると刺激的だな、と感じています。読み手側にも、あらかじめ作者の方からの作品ごとの朗読にあたって注意点や注文を踏まえるということもあり得ますし。そういった場所を超えたクリエイティブの交流も面白いのではと思います。
――最後に、読者の皆さんへメッセージをお願いします!
『夜刑事』は読み手として、挑戦的な部分も多く、面白い作品に携わる事が出来ました。耳から入って、聞いた世界を後に読む面白さも皆様に多く体験して頂けましたら幸いです。興味がおありでしたら、ながらの時間の有効活用でも問題ありませんのでこの機会に触れて頂けましたら幸いです。宜しくお願い致します。
■『夜刑事(ヨルデカ)』作品情報
【配信日】5月24日(金)
【Audible作品ページ】https://www.audible.co.jp/pd/B0D49F65BX
《著者》大沢在昌
《朗読》福山潤
【あらすじ】
ヴァンパイアウイルスと呼ばれる未知のウイルスに感染し、夜しか活動できなくなった刑事の岬田は、その代償として、極端に研ぎ澄まされた五感を手に入れた。岬田は、ウイルスに感染した犯罪者たち、そして感染者を排除しようとする活動家たちの思惑に巻き込まれながらも特命任務にあたり、ウイルスを感染させた元恋人の明林を探そうとするーー。警察からも犯罪者からも疎まれた、大沢在昌史上最も孤独なヒーローを描く、傑作エンターテインメント!
【著者・大沢在昌さんコメント】
オーディブル先行という企画に向け、新しいキャラクターを作ろうと思いたった。
主人公は刑事。ある理由で夜しか活動できず、犯罪者だけでなく同じ警察官からも憎まれている。
これまでに書いてきた、どの刑事も孤独で、絶望と背中あわせの日々を生きている。
そんな男の捜査が、福山潤さんの声で血肉を得た。
楽しんでいただきたい。
Information
■Audibleとは
いつでもどこでも気軽に音声でコンテンツを楽しむことができる、世界最大級のオーディオエンターテインメントサービスです。プロのナレーターや俳優、声優が読み上げる豊富なオーディオブックや、ニュースからお笑いまでバラエティあふれるプレミアムなポッドキャストなどを取り揃えています。日本向けの会員プランでは、会員特典として12 万以上の対象作品を聴き放題でお楽しみいただけます。再生速度の調整やスマホでのオフライン再生にも対応。現在、世界11ヶ国(日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、オーストラリア、イタリア、カナダ、インド、スペイン、ブラジル)でサービスを展開。オリジナル作品の制作や、書籍との同時配信など、オーディオエンターテインメントの先駆者として可能性に挑戦し続けています。
【Audible公式サイト】
https://www.audible.co.jp
■オーディオファースト作品とは
「オーディオファースト作品」とは、第一線で活躍中の作家が Audible のために書き下ろしたオリジナル新作です。一番最初に「音声」で表現される、Audible でしか体験できない作品*です。(*Audibleで配信した一定期間後、書籍としても出版されます。)
【オーディオファースト作品一覧】
https://www.audible.co.jp/ep/audio-first-titles