曲ごとに異なる表情が光る、“等身大のMEI”を詰め込んだ1枚
──では、各楽曲についても聞かせてください。1曲目の「Faraway」は、表題曲でもあり、ご自身の“推し曲”とうかがいました。
「Faraway」は私の声をいちばん活かせるように作っていただいた楽曲なんです。プロデューサーとも高速道路を夜にドライブしているような流れる風景が目に浮かぶような曲にしたかったとお話しながら作り上げていきました。歌いやすさもあるし、実は新しい歌い方にもチャレンジしていて。シティポップっぽさもあって、懐かしさがありつつ、ずっと車で聴いていたくなるような曲だなと思います。都会のネオンに囲まれた風景を走るイメージというか、そんな情景が浮かぶような楽曲ですね。
──サウンドも心地よくて、テンポ感も絶妙でした。
そうなんです。ゆるやかなのにテンポは遅すぎず、乗って聴ける。MV撮影もこの曲だったんですけど、ダンスも意外と激しめで、滑らかさと繊細さが求められる振付でした。フォーメーションがない分、自分の身体で空間を埋めるような振付構成になっていて、すごく新鮮でした。
──ソロとしての初MVという点でも、印象深い作品になったのでは?
グリーンバックで撮影して、後からCGで世界観を構築していただいて。完成映像は想像以上に美しくて感動しました。「Faraway」の世界にぴったりの仕上がりでした。ライブでもこの楽曲をどう見せるか、表情の付け方や間の取り方をいろいろ試してみたいと思っています。
──続いて「romance」についてもお聞きします。先ほどの「Faraway」とはまた違って、ちょっとかわいらしさやエフェクトが印象的なミドルナンバーですよね。
ちょっと懐かしい感じもありますし、音の質感や言葉選びにもかわいらしさがあって。女性らしさがすごく出ている曲だと思います。最初に聴いたとき、「こういうテイストもあるんだ!」って、自分でも新鮮でした。
──言葉選びが本当に繊細で、情景が浮かぶような曲ですよね。
個人的にも、感情が表に出やすい楽曲だなと思っています。「Faraway」が少しクールで情景寄りだったのに対して、「romance」は“誰かに伝えたい気持ち”が真っすぐ描かれている。だから、歌っていても自然と気持ちが入りますし、ライブでの表現にもすごく幅がありそうだなと感じています。
──「My birthday」は、タイトルからは明るくてハッピーな曲を想像する方も多いと思いますが、実際に聴いてみるとちょっと違った印象を受けました。どこか物悲しさや素直になれない気持ちが漂っていて……。
どこか寂しさや素直になれない気持ちが漂っていて、ただの“お祝い”じゃないところがこの曲の魅力だと思っています。私自身、昔から「誰と過ごすか」を大切にしてきたので、その想いが歌詞に反映されていてとても嬉しかったです。実は「何を⾷べるかよりも 誰と⾷べるかが⼤切」というフレーズはプロデューサーに私が話したことが反映されているんです(笑)。
――MEIさんは誰かとの関係性を大切にしてきたタイプなんですね。
そうですね。私にとって、誕生日って“何をもらうか”よりも“誰と過ごすか”がすごく大事なんです。小さい頃から家族が多くて、三姉妹の家庭だったんですけど、“誰かの誕生日には必ず全員で集まる”という決まりがあって。だから、誕生日をひとりで過ごすことのほうが、プレゼントがないよりもずっと寂しいと感じるんです。一緒にいてくれるだけで、十分に幸せだなって思えるタイプですね。
──となると、歌っていて共感できるポイントが多いですか?
多いですね。感情をストレートに乗せやすくて、特に“哀”や“怒”に近いニュアンスが自然と出てくる曲でした。実は“楽しい”とか“嬉しい”って、表現が難しいんですよ。演技でもそうですが、シンプルな喜びの表現ほど奥が深くて。この曲は、その対極のリアルな感情を丁寧に表現できてよかったです。
──「Proof of Love」は、アクセサリーの描写が印象的でした。
私、アクセサリーが本当に好きで、特にピアスはファンの方から誕生日プレゼントでいただくこともあるくらいで(笑)。ピアス集めてますって公言しているくらいなんですけど、歌詞の中に出てくるピアスやネックレスの繊細さ、輝きっていう表現が、今回のアルバムのコンセプトとすごくマッチしていて。後々プロデューサーに聞いたら偶然だと聞いてびっくりしましたが、それだけに運命を感じてしまいました。
──メロディや構成で気に入っている部分はありますか?
この曲のメロディもすごく好きで……特にサビ終わりの心に決めたあとのフレーズとか、Bメロのコード進行が切なくて、美しくて。個人的にめちゃくちゃ刺さってます。
――具体的な表現が多いですよね。
“クロス”って、実はネックレスのことを指してるんですよ。本当は“ネックレス”って言葉にしようって話もあったんですけど、ちょっと直接的すぎるかなっていうことで、すごく迷われていて。でも、“ネックレスって、胸元=ハートの近くにあるものだから、歌詞のテーマ的にこれがぴったりなんじゃないか”っていう流れになって、最終的に“クロス”という表現に落ち着いたんです。そういう細かい言葉選びのセンスも含めて、すごく丁寧に作っていただけた楽曲だなって思います。