憧れのステージと語っていた念願のビルボードライブ。アコースティック編成で、食事を楽しみながら約1時間、音楽を楽しむ特別な時間を共有した。
9月6日(日)に行われた、ビルボードライブ横浜での2ndステージの模様をレポートします。
ライブって楽しいんだということを、ただただ感じてほしい
楠木ともりの音楽の世界をじっくりと、間近で味わえるビルボードライブ。
開演前、観客はテーブルに並ぶ料理やお酒を味わいながら、ライブのスタートを待っている。ビルボードライブならではの公演限定オリジナルメニューは「コーヒーゼリーとマスカルポーネのパフェ」とカクテル「Reverie Verte」(レヴェリー・ヴェルト)。カクテルを嗜む人が多く、パフェは本人の好物をかけ合わせたそうで、ティラミス・コーヒーゼリー・あんずが口の中で複雑に絡み合い絶妙なハーモニーを奏でるという、ここでしか味わえないスイーツになっていた。
食事を楽しんでいるところで開演時間になり、バンドメンバーがステージにスタンバイすると、少し遅れて楠木ともりが客席を通ってステージに立つ。
拍手が響く中、ピアノの美しいイントロが流れると、会場がスッと音楽に集中していく。優しい歌声で楠木が歌い始めたのは「sketchbook」。ピアノと歌だけのところから、アコースティックギターやウッドベース、ウィンドチャイムやドラムなどの音が加わっていき、美しいアンサンブルを奏でていく。

1曲目でグッと世界に引き込んでいくのは、彼女のライブではならではの導入だ。
今度はドラムのリズムに合わせて、他の楽器が音を重ねていく。ファットに響くウォーキングベースなど、ジャジーなアレンジの「よりみち」は大人な装い。
緩急自在に歌う楠木に、サウンドも寄り添い、全体で盛り上がっていく。アウトロでは、おもむろに足元のケースからトランペットを取り出し、それを奏で、彼女自身が奏者に加わり音楽を楽しんでいた。

大きな拍手が起こる中、「楠木ともりです。『Tomori Kusunoki Billboard Live “LESS is MORE”』へようこそお越しくださいました!私にとっては念願のビルボードライブということで、楽しみにして横浜に来ました」と挨拶をし、みんなで集まれたことを祝して、オリジナルカクテルを持って乾杯をする。
「今日は突然、“立て”とか“歌え”とか言わないので(笑)。カクテルのReverie Verteは“緑の白昼夢”という意味なんですけど、まどろんで楽しんで、心地良い時間を過ごしていただけたらと思います」と伝える。
ちなみに、彼女がトランペットをライブで披露するのはかなり久々で、2019年以来になるのだが、そのことを言わないあたりもスマートでカッコいい。

続いて、ピアノのイントロから始まった「ハミダシモノ」。完全にバラードなアレンジで、1コーラス目はかなりゆったりと歌っていく。静かな音楽だと、時折食器の音が響いてくるので、それがビルボードライブ独自の雰囲気と醸し出しているように感じた。ピアノと歌だけで構築し、2コーラス目から少しずつテンポを速め、歌に感情を深く入れていくと、それに合わせて鍵盤を叩く音も強くなる。
2人だけの呼吸で音楽を奏で、場の空気を作り上げていった。
続く「青天の霹靂」は、グルーヴィでおしゃれなアコースティックアレンジ。ボーカルも、そのグルーヴに心地よさそうにノリながら、脱力感も交えて歌っていく。激しい原曲とはまったく違う方向性で聴かせた2曲は、曲の奥深さやメロディの良さを感じさせてくれるものだった。

「今回はアコースティックライブなので、いつもと曲の雰囲気が違っていると思います。今回のタイトル“LESS is MORE”は、建築用語で“少ないほうが豊かである”という意味があるんですけど、音楽もこれに当てはまることがあるなと思いました。昨今、盛り盛りな音楽がはやっているのを感じるんですけど、私がメジャーデビュー前にお仕事で立たせてもらったライブは、アコースティックライブが最初なので、ルーツなんです」と振り返る。
そして「アコースティックでゆったり聴く音楽、ライブって楽しいんだということを、ただただ感じてほしいという真っ直ぐな思いだけで今回のタイトルを付けたので、いろんな音に耳を傾けて楽しんでいただければと思います」と言い、再びライブへと戻る。


「眠れない feat. 楠木ともり」(MIMiNARI)は、原曲の雰囲気も感じさせつつ、眠れなくて、ちょっとテンションが上がっちゃったのかな?と思ってしまうようなアレンジ。
また、直前でいろんな音に耳を傾けてと言っていた意味がよくわかるくらい、それぞれの楽器の主張が激しく、さまざまな音が絶妙なハーモニーを奏でていた。
「twelve」は原曲のアンビエントな雰囲気を活かして、アコースティック編成で表現していく。途中、彼女の歌だけになる瞬間にはドキッとさせられ、ウッドベースの豊かな響き、ギターやピアノの美しいメロディときらびやかなベルの音など、曲の世界にどんどん引き込まれていくような感覚だった。


歌い終わると「『twelve』は、前回のライブではバンドがいない状態で歌っていたので、バンドでは初アレンジでした」と伝えて、デビュー前のライブでは、よくカヴァー曲を披露していたと話し始める。
「当時は、みんなの好みを合わせたカヴァー曲というより、自分の好きな曲、好きなアーティストの曲を聴いて!という気持ちで歌っていたんですけど、今日も私がリスペクトしていて大事に思っている曲をカヴァーしたいと思います」と言って歌ったのは、さユりの「十億年」。この曲は、バンマスの菊池真義のアコギとボーカルだけで、歌詞を大切にしながら届けていく。
徐々に感情的になっていく歌が、フロアに沁み込んでいくように響き、少しの余韻を残して終わると、続いて、Cö shu Nieの「夢を見せて」をカヴァー。こちらはウィスパーな歌声とおしゃれなアレンジが心地良い。
後半の盛り上がっていく展開も、原曲リスペクトを感じられるアレンジだ。
それも「家に帰ったら原曲も聴いてほしい」と言う彼女のカヴァーに対するスタンスが垣間見られるものだった。
「優等生」だけは、アコースティックではなく、いつもの彼女のライブを彷彿させるバンドアレンジ。ここでは、とても洗練されたパフォーマンスを見せつけていた。


「残すところあと2曲。あっという間すぎて! 今日は“音楽”を楽しんでいただくライブでした。実は9ヶ月ぶりのライブだったので、寂しかったんです。なので、ドキドキする気持ち、楽しみな気持ちを抱えて今日まで来たんですけど、みんなまどろんでくれて、こうやって過ごしてくれたら良いなぁと思っていた空間にしてくれて、感謝の気持ちでいっぱいです。その感謝の気持ちと、また必ず会えたらという気持ちを込めて歌わせていただきます」と言って、「turquoise blue」を奏で始める。
透き通る歌声とサウンドが会場を温かい空気で包み込むと、ラストは、自らギブソンのアコギを手に歌い始めた「それを僕は強さと呼びたい」で締めくくる。
メッセージ性の強いこの曲を、ビルボードという距離が近い空間で届けることで、より心に響くものになっていた。

さまざまなアレンジで、これまで歌ってきた楽曲の新たな魅力に気付かされてくれたライブ。そしてそれは歌と音に酔いしれるぜいたくな時間でもあった。音楽を心から楽しみ、音楽にどっぷり浸れる素晴らしいライブ。またこんな素敵な時間を提供してくれることを、心から願っている。

取材・文/塚越淳一 写真/新家菜々子
◇セットリスト◇
M1. sketchbook
M2.よりみち
M3.ハミダシモノ
M4.青天の霹靂
M5.眠れない feat. 楠木ともり/MIMiNARI
M6.twelve
M7.十億年/さユり
M8.夢を見せて/Cö shu Nie
M9.優等生
M10.turquoise blue
M11. それを僕は強さと呼びたい
◇New Information◇
Tomori Kusunoki Acoustic Live ″LESS is MORE″ in Studio
3週連続で毎週土曜20時に、楠木ともり公式YouTubeチャンネルにてスタジオライブ映像を公開中!
【3-WEEK RELEASE SCHEDULE】
10.03(sat)20:00- よりみち
10.10(sat)20:00- ?????
10.17(sat)20:00- ????????????
■楠木ともり公式YouTubeチャンネルはこちら
https://www.youtube.com/@tomorikusunoki
◇Profile◇
くすのきともり●12月 22日生まれ。ソニー・ミュージックアーティスツ所属。主な出演作はアニメ『正反対な君と僕』(本田梨花子)、『友達の妹が俺にだけウザい』(月ノ森真白)、『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』(レン)、『チェンソーマン』(マキマ)、ゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク』(宵崎奏)ほか。
楠木ともり Official HP https://www.kusunokitomori.com/
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