“人に見せたくないような恥ずかしい部分を歌詞に乗せてもらえた” 羽多野渉9thシングル「フワリ フワリ」インタビュー

声優、そしてアーティストとして活躍し続けている羽多野渉さんが、11月27日に9thシングル「フワリ フワリ」をリリース。発売を直前に控えた羽多野さんに、今回のシングルに込めた思いをうかがった。

「フワリ フワリ」は原点回帰にして、一歩先へと踏み出した一枚

――2011年に「はじまりの日に」でCDデビュー。そして2019年11月27日には9枚目のシングル「フワリ フワリ」をリリースします。

8年という年数を考えるとあっという間ですよね。それは本当に感謝すべきことで、シングルも1枚、2枚と出させていただき今回で9枚目、さらにアルバムも2枚、ミニアルバムもあったりと本当にいろいろなジャンルの音楽に触れ、そのたびに新しい発見と出会いが楽しくて……。こうして「あっという間」と感じるのはこの8年間がそれだけ充実していたからなんでしょうね。

――その8年で、デビュー当時に掲げていた目標はどう変化してきましたか?

僕の音楽活動の目標も8年前からずっと変わっていなくて、1年でも長く楽しい音楽を続けて、皆さんに少しでも多くの歌をお届けできればいいなと思いながら活動してきました。そしてせっかく音楽という演技以外での表現の場をいただけるということで、聞いてくださる人たちに羽多野渉の新しい面も見ていただきたいと模索しながらの8年間でしたね。

――9thシングルとなる「フワリ フワリ」。そのテーマは?

原点回帰とさらなる前進です。収録の3曲は事前に大まかなプロットを書かせてもらっていて、1曲目の「フワリ フワリ」は男性目線で大人になりきれない男が自問自答しながら不器用ながらも自分を愛していくお話、2曲目の「オモイノカタチ」は女性目線、3曲目の「Re Intro」は羽多野渉目線という構成になっています。

――「フワリ フワリ」の主人公は羽多野さんだと思っていましたが別人だったんですね。

捉え方は人それぞれですので、そう感じてもらえることがまずうれしいですね。「フワリ フワリ」は不器用な男が自問自答しながらもようやく自分のことを認められた、「心がフワリ」となる瞬間の気持ちを歌っている曲なんですが、作詞の椎名慶治さんもそういった解釈の広がりも狙って僕に近いワードを入れてくれたんだと思います。それからMVでダメな大人を演じているのが僕なので、そのあたりも影響しているのではないかと……(笑)。

――たしかに8年前にコンビニでアルバイトをしていた純朴な青年(※「はじまりの日に」のMV)が堕落した大人になっちゃったのかと思いました!

そこは世界観としてつながってはいないんですけれどね……(笑)。今回、「はじまりの日に」で使った公園を「フワリ フワリ」でも使用させてもらったんですよ。シーンのイメージも全然違いますし、エモさもいっさいないんですが「同じ場所なのにこうも印象が違うのか!」みたいなギャップも感じてもらえるんじゃないかと思います。

――楽曲の制作陣を見てみると作詞は先ほどの椎名さんに野口圭さん、作曲は椎名さんに永谷喬夫さんと豪華布陣になっています。

楽曲に関しては永谷さんにお願いしていたんですが、ちょうどSURFACEさんがツアー中ということもあり、お忙しい時期だったんです。そんなタイミングなのに、相方の椎名さんから「羽多野くん! 俺もやるよ! いいよね?」とお手紙をいただいて、むしろこちらが「いいんですか!?」という流れでこんな豪華布陣になりました(笑)。SURFACEのお二人とは佐藤拓也くんと一緒にやっているラジオ番組のテーマ曲「Scat Babys Show!!」を作ってもらったご縁もあり、また野口さんも過去にSURFACE楽曲をたくさん手掛けられている方。そんな3人が一曲に力を注いでくださったことは本当に幸せでありがたいですよね。その楽曲は曲が派手になればなるほど歌詞に書かれた主人公の内面の悩みが際立っていく内容になっています。ひたすらかっこいい音楽にかっこいい歌詞を乗せると構えちゃう部分もあるんですが、今回は人に見せたくないような恥ずかしい部分を歌詞に乗せてもらえたので、気負わず気持ちよく歌わせてもらえました。

――「かっこいい×かっこいい」は気負ってしまうと?

声優としてキャラクターを演じる際にはそれはとてもありがたいんですが、歌は羽多野渉名義ですからね(笑)。だからというわけでもないんですが、MVでも逆再生を初めとするコミカルな動きを入れたりと、過去にないくらい遊んでもらいましたし、衣装に関しても外でも家でも着ていたら恥ずかしいと思うような格好になっています(笑)。

――そうはいいつつも、セリフパートなど十分かっこいい内容かと思うのですが?

そこは別の自分から問いかけられているからなんですよ。このセリフパートは声優だからこそ遊べる部分であり、こだわれる部分。自分でも面白い試みだなって感じていますので、ぜひイヤホンで聴いていただきたいですね。MVでも面白い演出になっていますよ。

変化を楽しんでしまう気持ちは役者の性なのかな?

――2曲目の「オモイノカタチ」は女性目線の曲なんですよね。

3曲の中でいちばん挑戦させていただいた曲でした。ラジオの企画で寺島拓篤くんと『M.O.E.』というユニットを組ませていただいているのですが、女性ボーカルの曲をカバーすることもありまして、そんなときに女性の曲を情感を乗せて歌うと気持ちいいなと感じたんです。なので、今回はそれをオリジナルでできないかというところからスタートしまして、「女性が歌っている曲を、羽多野渉がカバーして歌っている」という設定の曲が完成しました。しっとりとしたバラードに乗せて女性の心の中にある強さや芯のある部分を歌った楽曲は、男性の弱さをかっこいいメロディに乗せて歌った「フワリ フワリ」と対を成す曲になったのではないかなと感じています。

――最近の羽多野さんはロック調の楽曲が多かったので、優しい歌声は懐かしくも新しいなと感じました。

僕としてもそういった変化が楽しいんですよ。これは役者としての性かもしれませんね(笑)。一つの形に収まらない、どんな人にでもなれる自分でいたいという役者としてのスタンスがそのまま一枚のシングルになっているんじゃないかなと思います。

――3曲目の「Re Intro」は羽多野さん目線の楽曲です。

この「Re Intro」に関しては、「はじまりの日に」の続編と考えていただいても構わない内容になっています。タイトルは1番が終わって2番が始まるまでにイントロに戻ることを指す音楽用語の「Re Intro」からきていて、常に終わらない音楽という僕の音楽活動の目標と同じ思いが込められています。また歌詞にはファーストシングルのときに使った言葉をちりばめていただきまして、制作陣の愛情を感じる一曲になりました。

――12月7日、8日にはリリースイベントも予定されていますが、なかでも気になるのが8日に予定されている男性限定のイベントです。

それに関しては寝耳に水のお話で、僕自身が「野郎ども! 行くぞ!」と提案したことではないんですが、こういった場を作っていただけること自体がまずうれしいですよね。どうやらスタッフさんの中で男性限定のイベントもやってみたいという声があり、こういう場を作っていただいたのですが、たしかにこれまでお渡し会にきてくれた男性の皆さんは口をそろえたかのように「男ですいません……」という反応で(笑)。だけど今回の「フワリ  フワリ」はそういった肩身の狭い男性視点の曲でもありますので、そんな皆さんの心を開放できる場を提供できたらいいなと。もちろん大阪で2回、東京で2回と通常どおりのリリースイベントもありますので、女性も安心してご参加いただけたらなと思っています。そして何よりこのようなイベントは面と向かってお礼が言えることがうれしいんですよ。遠くから足を運んでくださる人もいらっしゃいますし、本当に皆さんいつもありがとうございます!

――9thシングルの発売日が11月27日と迫っていますね。

今回のシングルには自分がこれまで歩いてきた軌跡、そして新たな羽多野渉と音楽とこれからを3曲それぞれに込めさせていただきました。これからも大切に歌っていきたい楽曲がまた増えましたので、皆さんにもそんな3曲を聴いてもらい、いろいろと想像してもらえたら幸せです。

プロフィール

はたのわたる●3月13日生まれ。81プロデュース所属。主な出演作はTVアニメ『私、能力は平均値でって言ったよね!』ナノちゃん、『あんさんぶるスターズ!』乙狩アドニス、『ジモトがジャパン』ヒデほか

9thシングル「フワリ フワリ」

11月27日発売の羽多野渉9thシングル。表題曲の作曲には4thシングル「Hikari」の永谷喬夫氏に加え、椎名慶治氏が参加。また「Re Intro」では1st シングル「はじまりの日に」の山下洋介氏らを起用するなど、羽多野渉の原点回帰とさらなる前進が詰まった一枚となっている。


【CD+DVD盤】2,310円(税込)


【CD 盤】1,650円(税込)

発売・販売:エイベックス・ピクチャーズ

2020年大阪・東京にてライブツアーの開催が決定!

2020年大阪・東京にてライブツアーの開催が決定!
3月13日は羽多野渉さんの誕生日当日。
記念すべき一日を一緒に過ごしましょう!

Wataru Hatano LIVE Tour 2020(仮)

2020年3月 8日(日)大阪 Zepp Namba ※2公演予定
2020年3月13日(金)東京 中野サンプラザ ※1公演予定

羽多野渉オフィシャルHP
https://hatanowataru.dive2ent.com/

取材・文/田中克佳