【声優道】三石琴乃さん「『やってみたい』と思った時点で、それが向いている仕事」

学校見学や体験授業など
自分の目で確かめてみるべき

最近ではアニメのほかにもゲーム、パチンコなど、声優の活躍の場も広がってきているようにも見えますが、だからといって、プロの声優として生き残っていくチャンスが増えているということではありません。デビューしたはいいものの、いつの間にかすっかり見なくなってしまった人もたくさんいます。私の実感としては、やはり強いのは個性的な人だということ。周囲で活躍している声優さんたちもとても個性豊かな方たちばかりで、一緒にお仕事するたびに「なんて私は普通なんだろう」とヘコむことも多いです。

ですから、声優になりたいからといって、ただ学校でセリフを映像に合わせる勉強をするのではなく、できるだけたくさんの経験をして人と触れ合い、演技の深みや幅を広げていく努力もしてほしいなと感じています。でもそれがいちばん困ってしまうんですよね。私も養成所時代、講師に同じことを言われたけど、いったい何をどうすればいいのかさっぱりわかりませんでした。たとえば、趣味をとことん極めるとか、映画や芝居を観たり、スポーツしたりするのもよし。アルバイトも面白い、地域のボランティアに参加するのも素晴らしい。旅行だっていいし、本当に何でもあり。一見無駄に見えるようなことでも、何があなたを感動させてくれるかなんて誰にもわかりませんよね。つらくて悲しいマイナスな体験だって、役者を目指すなら逆に心をとぎすませてくれる。図らずともあなたの武器になっていくでしょう。常に心を乾いたスポンジにしておいて、何でも吸収してほしいです。何を経験し、何を実感し、どんな感動をしたのか。それは将来間違いなくあなたにしかない個性になると思います。

今は私たちの時代とは違って声優の養成所や専門学校もたくさんあり、一見、声優への道が広く開かれているように見えるかもしれません。ですが、必ずしもそういうわけではないのだということは、頭に入れておいてほしいなと思っています。これから自分の選んだ道に向かって一歩を踏み出そうと声優学校を探しているのならば、広告からの情報に頼らず、実際に足を運んで自分の目で確かめてみるべきだと思います。学校見学や体験授業を重ねれば、自分に合った場所が絶対に見つかるはずです。すてきな恩師や先輩、仲間たちと出会えるかは自分しだいなのだから、面倒臭がったり横着してしまったりしては絶対にダメ。そういう姿勢は、きっと演技にも表れてしまうものです。一にも二にも、自分から動いてみること。とにかくこれがとても大事です 。

好きな気持ちは、夢を叶える力
今できる努力を進んでしてみて

もしかしたら、声優になりたいと思いながらも「自分には向いていないんじゃないか」と不安になっている人もいるかもしれません。ですが、「やってみたい」と思った時点で、もう向いているのだと私は思います。もちろん、それは長く続く階段の第一歩なのだと思いますが、とにかく最初の一段を上がらないことには続いていかないわけですから、とても大事な一歩です。その一歩を踏み出したうえで、学校に行くお金もないし、時間もないし……と悩んでいるのならば、まず今日からできることを始めてみるといいと思います。

オススメしたいのは、新聞の音読。新聞などで学べる一般常識はとても重要なスキルですし、つっかえずに一発で読めるような学力も、必要不可欠な力です。自分が今こうして夢を目指して進んで行けることに対する家族や周囲への感謝の気持ちをもって、今できる努力を自分から進んでしていくことが、声優だけに限らず、夢を叶えるための大きな力になるはずです。

(2008年インタビュー)