【声優道】よこざわけい子さん「天才じゃなくていい。努力の積み重ねが実を結ぶ」

数々の有名作品に出演し
芝居の楽しさを実感

今までに演じてきた役はいろいろありますが、『にこにこぷん』のぴっころ役は17年間もやっているうちに自分とイコールになってしまいました。声もほぼ素のままですし、演技も自分のぴっころ的な部分でやっていたので、作るということが必要なかったんです。アニメや洋画だと映像に合わせて演技しなくちゃいけないので、どうしても相手役の演技に集中することができないんです。

ところが『にこにこぷん』は声の演技に合わせてスーツアクターの方が動いてくださるので、ラジオドラマのように演技に集中できました。お互いに交流しながら演技するという、本来の芝居のあるべき姿でもあったので、自分でも『にこにこぷん』を通して成長できたと思います。

『The・かぼちゃワイン』のエルは、私とまったく見た目の違う大きな女の子で、自分のものにするのにかなり苦労した覚えがあります。でもそれだけに印象深い作品になりました。制作が東映動画さんだったんですけど、東映さんは専任の音響監督を置かないんです。必然的にダメ出しが少なくなり、気持ちを途切れさせることなく演じられたんです。やっぱりダメ出しされると集中力が途切れるし、注意されたポイントを気にしながらの演技になるじゃないですか。一貫して演技ができたこともあって、アニメの声をあてるのって楽しいんだな、と気づいたのもこの作品でしたね。

『はいからさんが通る』の花村紅緒は個人的にぜひともやりたい役だったんですが、同局の同時間帯で放映していた前番組の『若草のシャルロット』でヒロインをやっていたことが問題になってしまいました。2作続けてのヒロイン役は前例がないということで、オーディションには受かったものの一度は降ろされたんです。ところが再度オーディションをしてもイメージに合う方がいなかったみたいで、結局私が演じさせていただけることになりました。

『エスパー魔美』に選ばれたときは、本当にうれしかったですね。藤子不二雄作品といえばステータスで、主役なんてベテランの方しかできないと思っていたので、藤子作品に出ることが私にとっての目標の一つだったんです。それまでは、自分の実力よりも一歩先の役を振られることが多かったんですが、いろいろな経験を繰り返してきて、ちょうど演技に自信がもてるようになったくらいにいただいたお話だったので、本当に楽しく演じさせていただきました。

同じ藤子作品『ドラえもん』のドラミちゃんは、優等生でかわいらしいという、一歩間違うとイヤミな役になっちゃうんです。さすがに設定を変えることはできませんが、できるだけ鼻につかないように、かわいらしさを強調して演じた覚えがあります。

『天空の城ラピュタ』も私にとっては代表作なんですが、時間をかけて次第に自分のものにしたテレビシリーズと違って、演じるのはそのときだけじゃないですか。すると、どうしても思い出としては浅くなってしまうんですが、日本を代表する宮崎駿監督の作品に出していただけたことは今でも私の財産ですね。

教えることで改めて
演技について捉え直すことができた

事務所を立ち上げたのは、声優の演技だけでなくナレーションがやりたかったことが直接のきっかけです。俳協では、声優として売れているんだからナレーションをやらなくてもいいじゃないという考えで、積極的に営業してもらえなかったんです。独立して事務所を作ることになったとき、自分の手でいちから育てた人に所属してほしいとの思いから、同時にスクールも立ち上げました。

自分が主催するからには、無責任なことはできないじゃないですか。今までは自分の経験からなんとなくやっていたことも、教えるとなるとちゃんと論理的に説明しなくちゃいけないので、改めて表現というものを考え直すきっかけにもなりましたね。だから、今なら昔演じた役をもっとうまく演じられる自信がありますよ。

ただ、責任をもって教えることに力を入れていくと、どんどん時間を取られて自分がほとんどマスコミ出演ができなくなってしまいましたね。でもスクールの公演を通して演出や舞台美術の世界に触れたり、自分で脚本を書き下ろすようになって、こういう表現の仕方もあるんだなと視野が広がりました。いろいろな分野で芸術を表現できて、とっても楽しんでいます。

私は自分の中で「藤子作品の主役を演じる」「子供番組のキャラクターを演じる」という二つの目標を立てていたんですが、後者は20代の終わりに『にこにこぷん』で、前者も30代になって『エスパー魔美』で叶ってしまいました。それからもいくつもの作品に出演させていただきましたが、スクールを立ち上げたときに自分の演技にはここで一区切り付けてもいいんじゃないかと思えたんです。今でもマスコミに登場しないことを残念がってくださるファンの方もいらっしゃるんですが、私としては満足しています。

桜木学園癒やし部・2年B組 町々まどか