【声優道】國府田マリ子さん「『好き』のパワーをエネルギーに」

吹けば飛ぶような精神状態で現場に臨んでいた新人時代

仕事の現場に出てからは、楽しいこともつらいこともいろいろありました。現場では、その場面で求められている〝芝居の中の歯車としての自分〟と〝役者としての自分〟、その両方を満たさないといけない。ただ演出家さんの要求されるお芝居だけでもだめ。それだったら、(役者は)誰でもいいということになっちゃう。この役、國府田という役者にやらせて良かった、という結果が欲しかったから。当然ながら教科書がないので、本当に試行錯誤の連続でした。

アニメーションは子供の頃から大好きだったので、現場に行くとワクワクしていました。とにかく皆さんに迷惑をかけないようにまず、動線確認、マイクの位置を確認。数本のマイクを全員で使うからです。でもときどき入りそびれちゃったりすることもありました。今はデジタルなのでNGを出してもすぐ戻せますが、当時はフィルムでしたから、NGって今より大ごとだった気がします。緊張してて心臓どきどきです。「これでいいのかな?」「あ、違ったかな?」って、吹けば飛ぶような精神状態でアフレコ現場にいました。

今はわくわく、アフレコしています。OAを観て自分の芝居をチェックしますが、その頃の私はOAまで待てなくて、OA前の作業を見せてもらっていました。アフレコが終わったあとで、スタッフの皆さんが音楽を入れたり、口とセリフを合わせたりする作業も、その現場に入れていただいて台本を見ながら、「ここの芝居は、こうだったなぁ……」とチェックしたり反省したり。こうすると、全体が見えて、すごく勉強になりました。努力というわけではなく、自分ができないから、わからないから、できるように、わかるようになりたかった。

今までに1回だけ辞めようと思ったことがあります。一人暮らしをしていて、寝る時間もなくて、なんか情けない、弱い気持ちになってしまう。そんなとき、一緒に一つのことを目指して頑張っていたスタッフさんと、夢のベクトルの方向がいつのまにかズレてしまった。……あのとき、「もうおうちに帰りたい。辞めて帰ろうかな」と初めて母に弱音を吐きました。電話口で母が私にこう言ったんです。「何言ってるの? 自分で決めた道でしょ。頑張りなさい」って。ありがとうお母さん。そうだよね。自分で選んで自分で踏み出した道だよね……。帰ろうと思ったのは、後にも先にもその1回だけです。もしこれから辞めようと思うことがあるとすれば、嫌なことがあって辞めるんじゃなく、もっと大切なものができたとき、もしくはやり切ったとき、だと思います。「もう私が表現することはないや」と思えたら辞めるかもしれないです。でも今のところ、まったくそういう気配はなくて、まだまだやりたいこと、伝えたいこと、感じたいこといっぱいです!!

「好きだ!」というパワーは何よりも強いエネルギー

本当に『声優グランプリ』さんとは創刊のときから一緒に歩んできたので、家族のようです。そして数々の伝説(笑)と思い出がいっぱいです。いつも愛情いっぱいに撮影していただいています。写真集の撮影でスペインに行ったことも思い出深いです。撮影スケジュールをゆったりめに調整していただいていて、一人でコルドバの街を散策したりしました。撮影も、息の合ったチームで動いていてすごく楽しかったです。

ありがたいことに雑誌のお仕事、ラジオや音楽、いろんなお仕事をさせていただいています。改めて思うのですが、私は今のお仕事、そして今自分がいるこの世界が本当に大好きなんです、上手に言葉にできないけれど。自分が携わった、自分が表現した、その作品をたくさんの人たちに伝えることができて、共感してもらうことができる……。何より、ジャンルを越えて、言葉も国も、年齢さえも飛び越えて共感し合える、伝えられる、それが私にはとても魅力的です。

アニメーション。言葉の壁を越えて、年齢だって超えて、世界中に伝えられる。宇宙進出も夢じゃないかも、ってときどき感じます。たとえば、火星の人が観ても「これ、面白いなぁ、素敵だなぁ」っていう作品だって絶対作れると思う。歌も、どこの国に行っても、子供たちから、おじいちゃんおばあちゃんまで通じ合うことができる。よくみんなで「この歌いいよね」「戦場に投入すれば、きっと平和になる」なんて、スタッフの皆さんとよく話しています(笑)。そういう、未知数な、奇跡を起こせる、そんなお仕事をしてる。ものすごく幸せです。幸せが一回じゃ足りません。Happy! Happy! Happy! です!

何か一つのことを「好きだ」と思うパワーって何よりもすごい。そして、きっと誰にでもあるパワー。キミにも、私にも。いつもどんなときも、「大好き」というパワーが何よりも強いエネルギーになっています。

(2012年インタビュー)

桜木学園癒やし部・2年B組 町々まどか