【声優道】緑川光さん「〝王子様〟を捨てること」

『聖闘士星矢Ω』の主人公・光牙役で
まさか、こんなにまた叫ぶことになろうとは!

最近では『聖闘士星矢Ω』で熱血タイプの主人公・光牙を演じましたが、オーディションには行ったものの、あんなど真ん中なキャラクターを自分が演じることになるとは思わなかったので、びっくりしましたね。

でも、声優が自分で勝手に線引きしちゃいけないのかなって。自分の中での叫び納めは『スクライド』だったのですが、あのときも年齢的にそこまで若いわけではなかったので『星矢』が決まったときは「まさか、こんなにまた叫ぶことになろうとは!」と思っていたんですけど、あれから年数がたっているわりには思ったよりもやれなくはなかった。

うれしかったのは、神谷浩史くんとかが「観てますよ! すごいですね!」と言ってくれたこと。僕が45歳くらいでああいう役をやれていると、下の世代が自信になるというんです。たしかに僕も『星矢』で古谷徹さんや水島裕さんとご一緒できたのはうれしかったし、自信になるわけですよ。僕より上の人が誰もそういう役をやっていなかったら、さびしいですからね。でも、やっている人がいる。だから自分も後ろの人たちのために頑張ろうかなというのはありましたね。

声優を目指したいのだったら
一度〝王子様〟を切り離したほうがいい

今の声優業界にどういう人が求められるのかというと、それがわかると楽なんでしょうね。多分わからないですよ。業界がどんどん様変わりしているから、今求められていても、何年か後にはもっと違う形の人が求められる世の中になっているかもしれない。とりあえず若手に必要なのはパワフルさ……だと思うのですが、いろいろなところに教えに行って思うのは、生気がないんですよね。教室には来ているけど、みんな目が死んでいるぞ、と。せっかく来ているんだったら、もうちょっと前のめりに参加してくれたらいいのにというのは思いますね。積極的に質問できる人、アピールできる人が結局は残っていくから、そのくらいの心構えで参加したほうがいいのになと。

これから声優を目指す人へ、いちばん言わずにいられないのは「声まねはとりあえず控えよう」ということです。今は自分でお芝居して録音したものを簡単に発表できるような世の中になっているし、声まねも趣味でやっている分には構わないんだけど、それを職業にしたいとなったときにナチュラルな芝居がわからなくなる傾向にあると思うんです。

かっこいいキャラクターをやっている声優さんって不細工なキャラクターもできるし、普通の芝居も求められるし、ナレーションとかCMとかいろんなことを器用にこなさなくちゃいけないんですよ。僕も塾生時代には変にかっこつける癖があって、塾長に「いつまでも王子様やってろ」と言われたことがありました。いずれは王子様みたいな役ができるようになるのかもしれないけど、そればかりに特化してしまうのは遠回りなんです。

それよりは発声練習や早口言葉をやっておいたほうがいいし、その若さでしか体験できない、学校での友達とのコミュニケーションとかに触れてほしいなあって。一見、声優とは関係なさそうだけど、それが近道だったりするんですよね。たとえばガヤとかで「はい!」ってすぐに入っていけて、いいお芝居を聴かせてくれる人って、やっぱり目をつけられますからね。「あの子、積極的だし、機転も利くし、今度入れてみようか」となったりしますから。

「かっこいい役ができるから」という理由で残っていくわけでは決してないので、声優を目指したいのだったら一度〝王子様〟を切り離したほうが近道かもしれないです。

(2014年インタビュー)