初めてのアニメ演技は〝アウェー感〟が強かった
私は『GTO』のヒロイン・冬月あずさ役で声優デビューという形になりました。アニメのアフレコ台本を見たのはこのときが初めてでしたし、カット割りを理解して絵をチェックするのも、アドリブの息だけで感情を表現するのも初めて……。そんなスタートだったので、かなり戸惑いました。
幸い、最初の収録日までに時間があったので、山寺宏一さん主演アニメの収録現場を見学させていただき、学ばせていただきました。『GTO』では、この道に入るきっかけをくれた関智一さんとの共演もあり心強かったです。周囲のレギュラーの皆さんに、台本チェックの仕方など技術的なことを実践を通して教わり、本当に支えていただきました。
昨今、声優界はタレント的な事務所の数も多くなりましたし、異業種の方が声優をやる機会も増えていますけど、私が声優デビューした頃は私のような存在はまだ〝アウェー感〟が強かったと思います。それまで舞台や映像の仕事はやっていましたけど、声優としての表現は全くの初心者。制作スタッフの方たちは「折笠さんのもつ芝居の空気感が今までの声優とはちょっと違うことが面白いから」と私を選んでくれたそうです。〝違和感〟が私の個性につながった幸運なデビューだったと思います。
ビッグタイトルのヒロインでデビューしたということで、注目をされ、たくさんのチャンスをいただく機会に恵まれたり、役者仲間の励ましもありました。半面、ライバルからの妬みもそれなりにありました。ですがそのおかげで、仕事に対し、役に対し、真っすぐに誠実でいるあり方をいつも考えていました。心ない周りの目より、自分の〝進む先〟のほうが重要でしたから。
『千年女優』の藤原千代子役で
〝スクリーンデビュー〟の夢が実現
たくさんのキャラクターを演じさせていただくなか、特に印象に残っている作品やキャラクターを挙げるとしたら……選ぶのは難しいですけど、『ヴァンドレッド』のメイア・ギズボーンはその一つです。髪の色が青いキャラクターを演じるのも初めてでしたし(笑)、アニメイベントに初めて出演したのがこの作品で、アニメファンの人がどういう雰囲気なのかもわからなかったですから、クールなキャラクターと自分のギャップに驚かれてしまうかもとドキドキでした。イベントではトークや生アフレコをしましたが、共演者の皆さんが盛り上げてくださり、初めてファンの皆さんに直接感謝をお伝えできたことがとてもうれしかったことを今も覚えています。
劇場版アニメ『千年女優』の藤原千代子は深く印象に残っています。主人公の大女優・藤原千代子の役を、70代を荘司美代子さんが、20~40代を小山茉美さん、少女時代を私、の3人の声優で演じたんです。この作品は、公開されるまでにいろんな海外の映画祭に出されて、その後で日本に戻ってきて公開という形だったので、アフレコしてから随分時間がたってからの公開だったんです。時がたっても色あせない素晴らしい作品です。
アフレコした時期は、声優のお仕事を始めて1年もたっていない頃で、本当に大抜擢でした。周りも大御所の方ばかりで、文字通り必死で演じました。千代子という役も少女時代は特に、ひたむきに駆け抜けるようなキャラクターなので、演じる自分と役がシンクロしていました。振り返ると必死に走っていたあの頃の自分も愛おしいというか……。それと、少女の千代子は映画のシーンが多かったのですが、映画に出演してみたい夢をもっていたかつての自分が(役の上で)いろんな映画で演じていて。とても個人的なことですが「夢が叶った」という喜びもありました。