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植田佳奈「『マリア様』で作品の座長の役割と意味を学んだ」《『THE PLAY BACK』第1弾》「マリア様がみてる」伊藤美紀×植田佳奈 対談インタビュー 後編

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U-NEXTによるアニメ名作との“再会”プロジェクト「THE PLAY BACK」

2000年代に人気を博した「その時代のマスターピース」とも呼べるアニメ作品をピックアップしていくという企画がU-NEXTで進行中。「THE PLAYBACK」と銘打たれたその第1弾企画は『マリア様がみてる』。同作で主役の福沢祐巳を演じた植田佳奈さん、その祐巳にとって一番親愛な上級生・小笠原祥子を演じた伊藤美紀さん。作中で言う紅薔薇姉妹によるCMや対談トーク映像が、現在U-NEXTの公式YouTubeで公開中だ。seigura.comでは、このCMやトーク映像撮影の感想、改めて作品やキャラクターに対して思うことなどをお二人に伺った。取材中も終始アットホームで、お互いを自然にキャラ名で呼び合うなど、まるで作品世界そのもののようなムードの中、『マリア様』の思い出話に花が咲いた今回のインタビュー。その後編をお届けしよう。★インタビュー前編はこちらから⇒https://seigura.com/news/76362/

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■飾らない素朴さが魅力の祐巳と、全てがザ・お嬢様の祥子

──作品の話に移りますが、当時演じる上で意識されていたことは?
植田 祐巳はあの世界の中では比較的庶民の家庭……それでも多少は裕福なんだとは思いますけど。そういう家の子なんですよ。ですから、特にお嬢様言葉みたいな口調は意識はしてなかったです。祐巳を演じるにあたっては、変な色を付けないこと。役者としてお芝居をしようとすると「上手く聞かせたい」とか「ここはメリハリを付けて演じたい」というような風になりがちなんですけど、祐巳に関しては、真っ直ぐに台本の台詞として書いてあることをそのまま伝えるように。何も考えないでお芝居をするというのを、すごく意識してアフレコしてました。
伊藤 私の方は、完全にお嬢様という感じですから……お家やそれまで育ってきた環境を一生懸命想像して、なるべく外れないように。お話の中にもありますけど、ハンバーガーショップに行ったことがないとか、ジーンズもはいたことがないっていう生活を送っている。それって私達の日常生活からしたら、あり得ないじゃないですか。
植田 ウフフ(笑)。
伊藤 そうした浮き世離れした部分が、狙った感じといいますか、わざとらしくなくならないように。それが私(祥子)の日常なんだっていうところを目指して、なるべく普段から下世話なことをしないようにとか、言葉遣いも丁寧にしようとか(笑)。それと、当時の私は子育て真っ最中で、娘だしこれはちょうど良いと思って「××さん、これをやりましょうね」みたいに接したりとか。そんな風にやっておりましたの(笑)。

──祥子様の意外に庶民の常識を知らない「ボケ」の面を演じる時は、普段の凛とした時とのギャップは意識されていたんですか?
mikiitoh伊藤 そこで声のトーンとかを意識して変えたりしていたことは、まずないです。やっぱりその時の雰囲気と、祐巳とのやりとりの中での自然体という感じですね。なるべく作らずに……。そうやって出てきた「芝居」です。その状況を理解して「私はお嬢様だから、こんなところに足を踏み入れたことはない。でも祐巳が連れてきてくれたところだから、興味もあるし、絶対楽しいところに違いない!」っていう感覚に、自分自身がなるみたいな。作ろうとしてではなく、その場で自然に出てきた感じなんです。

──ああいうシーンでの祥子様は、グッと柔らかくて可愛らしい部分が芝居としても顔をのぞかせる感じがしたので、ギャップ感を意識されていたのかと思っていました。
伊藤 とにかく自分の知らない世界に連れてこられたから、頼りになるのは祐巳しかいない!そういう感じかなぁ?

──植田さんから見て、祐巳に憧れるところは?
植田 誰からも愛されて育った感じでしょうか。あれは天性のものなので、そこにすごく憧れます。祐巳がいるだけで、なんだかホッとするんですよね。ひときわ明るいわけでもないし、ものすごく包容力が高いわけでもない。そんなに特徴らしいものがない、本当に「普通」っていう言葉が似合う子なのに、なぜこんなにも魅力的なんだろう?っていうのは、昔からものすごく羨ましかったです。だから、最初に祐巳が祥子様の妹になるかもしれないとなった時に、同学年の1年生の子たちが「なんであの子が?」みたいに……やっかみに近いような感じで不思議に思われたんだろうなって。

──それが、2年生の時のバレンタインの話では「祐巳様には隠れファンが多い」と言われてましたよね。
植田 そうなんですよ。そんな周りをホッとさせる祐巳の不思議な魅力には、でも山百合会のみんなは最初から気がついてるんですよね。志麻子さんは序盤に「祥子様の妹は、祐巳さんしかいない」みたいな話をしてくれてたりとか。そういう不思議な魅力に憧れます。

──伊藤さんから見ての、祥子様に憧れるところは?
伊藤 女性なら、一度はああいう立場になってみたいと思いますよね。一生続けるのは、ちょっと厳しいかもしれないですけど(笑)。一年間くらいだったら、あんな人生を送ってみたいですよね〜。きっと楽しいだろうなって。
植田 (笑)。
伊藤 そういうところかなぁ〜。

──演じている中で、リリアン女学院というか山百合会のような環境自体にも憧れを感じたりはしましたか?
植田 私は元々宝塚に行きたかった人なので、ああいう「女性の園」みたいな世界はメチャメチャ憧れでした。宝塚も、どちらかと言えば先輩方=お姉様の世界なので。だから『マリア様』の出演が決まった時はとにかく嬉しかったです。

──ちょっと、その疑似体験ができたみたいな感じですか?
植田 そうです。まさに疑似体験でした。
伊藤 私はずっと共学校で学んできましたので、新たなる世界に飛び込んだような感じでしたね。実際はどうなのかは分からないですけど、女子高ってきっとこういう感じなのかなぁ?って思いながら楽しんでました。

■紅薔薇姉妹、松平瞳子を多いに語る!

──紅薔薇姉妹役のお二人が揃っているので、瞳子のことを伺いたいのですが。
植田 う〜ん、瞳子ちゃんはそれはそれは嫌いでしたよ、私は(一同・笑)。もちろん、最初はですよ。出てきた時は、本当に嫌な子だなぁって感じてました。「レイニーブルー」と「パラソルをさして」の辺りは、原作を読んでいてもメチャメチャ瞳子ちゃんが嫌な子に見えて。

──あの辺りの祐巳にとっての辛い雰囲気の話は、観ていていても印象に残ってます。
kanaueda植田 本当に辛かったですもん。
伊藤 あれは本当に、演じてても苦しくなったよね。
植田 お姉様(伊藤さん)、いつも「違うの!違うの!」って言ってましたよね(笑)。
伊藤 あれはやっぱり私(祥子)がちゃんと話さなかったのが、こじれた元だったと思うの。ちゃんと話せば、祐巳だって分かってくれるのに。あれじゃあ祐巳は誤解するし。やっぱり私(祥子)の責任よね。
植田 でもとにかく、後々に自分の妹(プティスール)にするなんてちょっと考えられないって、あの頃は思ってました。だからこそ、アニメ4期の最後で瞳子ちゃんを妹にしたいと決める……アニメでは瞳子ちゃんにロザリオを実際に渡すところまでは描かれませんでしたけど。それはすごく感慨深かったんですよ。
伊藤 へぇ!
植田 今回見直して思ったのは、瞳子ちゃんが出てきてからがとっても祐巳の成長を感じるんですよ。お姉様に対するトーン……話す声のトーンと、瞳子ちゃんに対するトーンとが、だいぶ違ってて。瞳子ちゃんに関しては辛いこともたくさんありましたけど、その山あり谷ありのドラマがあったからこそ、瞳子ちゃんのことをあそこまで受け入れられるようになったんだなって。振り返ると思います。
伊藤 私にとっては、瞳子ちゃんは「やれやれな子」ですね。
植田 ウフフ(笑)。
伊藤 親戚筋の関係にあるので、そういう可愛さはやっぱりあると思うんですけど、(「レイニーブルー」辺りでの)祐巳を意識してる感じの私(祥子)への瞳子ちゃんの態度は、伊藤美紀としても結構許せない面がありましたね〜(笑)。
植田 瞳子ちゃん、挑発気味なところがありましたからね(笑)。
伊藤 そうそう。ちょっと素直じゃないかな?っていう面が瞳子ちゃんにはあるので。そこは瞳子ちゃんの生い立ちにも関係しているのかもしれないし。そういうところで扱いの難しい子だったりもしたので、「やれやれ」という感じでした。
植田 それと瞳子ちゃんの前に、可南子ちゃんの件もあったりして。だから私の中では祐巳の妹問題というのは、当時からすごく気になっていたんです。でもアニメ4期で「100数えなさい」と瞳子ちゃんに指示したりとか。あの辺りで、もう祐巳の中では瞳子ちゃんは特別な存在なんだなって、私も思ってました。で、私は瞳子ちゃん役のオーディションに立ち会ってたんですよ。確か可南子ちゃん役と一緒の形で、1期の時に普段のアフレコの後にあったんです。そこに(釘宮)理恵ちゃんもいて。私の中では「あ、瞳子ちゃんは理恵ちゃんかな?」って、実は思ってたんです(笑)。
伊藤 そうなんだ!(笑)
植田 実際に理恵ちゃんが瞳子ちゃんに決まったって聞いた時は、なんとなく感じたことがそのまま反映された気がして、メチャメチャ嬉しかったです。理恵ちゃんは、私がデビューしたての頃にお芝居について悩んでいた時、相談に乗ってくれていたんですよ。理恵ちゃんの方がちょっと先輩なので。
伊藤 そうなんだっけ。
植田 そうなんです。それで理恵ちゃんから「頑張りなよ〜、上手くなるしかないんだからさ〜」って結構ざっくばらんな感じで(笑)、それこそ瞳子ちゃんぽくちょっとツンデレな感じで励ましてもらってたのもあって、理恵ちゃんが後々妹になるんだと思うと、嬉しいけれどなんだか私の中ではあべこべな気がして……私としては役者の理恵ちゃんは「お姉ちゃん」だったから。そこはちょっと面白かったです(笑)。
伊藤 そうだったんだ!

──ところで、1期2期での予告はギャグに振りきってて面白いですよね。
植田・伊藤 うんうん、面白かったですね!
伊藤 祥子なのに、ものすごく凄味を効かせて言ってみたりとか(笑)。最初の頃は私たち二人掛け合いで、ちょっと漫才みたいな感じになってたりして。
植田 本当にすごかったなぁ。あそこだけ「別世界」でしたからね。
伊藤 もうはめ外してましたね〜。予告だから秒数が厳密に決まってて。そこに収めるのは大変で。
植田 どこまで攻めて大丈夫なのか?の挑戦でしたね。でもちゃんと、台本通りだったんですよ(笑)。まぁ祐巳は比較的に普段と変わらないことが多かったんですけど。あはは!
伊藤 祥子の方がぶっ飛んでましたね!私、ああいうのが大好きだから!(笑)そこも、配信でも観てというか、聞いて欲しいですね。

■『マリア様』で、作品の座長の役割と意味を学んだ

──植田さんにとっての初の座長(主役)を務めた作品は『マリア様』になるんですか?
植田 たぶんそうだったと思います。確か、お姉様の婚約者・柏木優さん役の檜山修之さんから、1期の打ち入りで「主役にとって大事なことって、分かる?」と言われたんです。
伊藤 うんうん。
植田 その時の私は「しっかりお芝居すること」みたいな、今思えばもうありがちなことを答えたんですよ。若かったなぁって思うんですけど(笑)。そうしたら檜山さんは「それは当たり前のことで、主役=座長に一番必要なことは、現場の空気を作ることなんだよ」って。主役とはいえ新人が現場を引っ張っていくというのが、当時の自分には考えられなくて。実際に現場ではお姉様(伊藤さん)や蓉子様(篠原恵美さん)がすごく引っ張ってくれていたんです。そして聖様(豊口めぐみさん)がムードメーカーになってくれていて。その上で、「自分はどう空気を作っていったら良いのか?」となった時に、檜山さんから「色々な人の架け橋になれよ。ゲストとかで来た人間がその作品を好きにさせるのが、主役やレギュラーキャストの役目なんだよ」って言って下さったのが、すごく印象に残っていて。だから私が主役をやらせてもらえる時には、新人さんが現場に初めて来た時に、溶け込みやすくなるように促してあげたり……例えば「アフレコの後みんなで食事に行くけど、一緒にどう?」とか。「若手はあまり知らないわ」みたいなベテランの方がいらした時には、すごく積極的に話しかけるようにもなりました。誕生日とかのお祝い事があった時には、キャストだけじゃなくてスタッフさんも一緒にワイワイできるような場を作れるように、自分から動いたりとか。そういうことをするようになった切っ掛けの一言でした。

──お姉様である伊藤さんからご覧になって、そういう空気は作れていた感じがしましたか?(笑)
植田 ウフフフ(笑)。
伊藤 当時ですか?いやぁ、とにかく私は最初から祐巳(植田さん)を贔屓していたから(笑)。
植田 そうなんですよ! なんでも肯定して下さるんです。そこが逆に受け入れてもらっていることなのかな?って思うんですけど。
伊藤 でも、これほどまでに素敵な作品に仕上がって、みんなの仲が良くなったということは、ちゃんと祐巳ちゃん(植田さん)が、そこはしっかり架け橋になれていたからだったと思います(キッパリ)。
植田 いやぁ〜(照れ)。

■一番良かったことは、『マリア様』という作品に出会えたこと

──当初は1期の1クールだけでのスタートだったと思うのですが、すごく息の長いシリーズになりました。
植田 『マリア様』は1クール単位で全4期でしたけど、アニメと並行してドラマCDもすごくたくさん、しっかりと作って頂いてたんですよ。それも合わせるとそれこそ4クール分以上やっていたなぁという感じがしてました。

──それだけ長く続いてくれたことは、やはり嬉しいですか?
植田 ええ、嬉しいです。
伊藤 自分の好きな作品が、見て下さる方が応援して下さって、その結果として続いていく。それはこの仕事をしていて最高の喜びですよね。本当に嬉しいことです。

──この作品に出会えて良かったことは?
植田 それはもういっぱいありすぎて、「全て!」って言いたいところなんですけど(笑)。その中でも、お姉様(伊藤さん)をはじめとして最高のキャストに出会えたことがあると思います。『マリア様』という作品に出会えたこと自体が一番良かったことではあるんですけど、こんなにもキャラクターとキャストがリンクした作品はなかなかないですし。さらに『マリア様』のキャストのみんながこの作品を愛していて。未だに会うと、すぐにその当時の空気に戻れるっていうのは、本当にこの作品ならではなんです。そうしたキャストのみんなとの出会いが、一番良かったことですね。
伊藤 まず、今野緒雪先生がこの作品を書いて下さったことに、本当にありがとうございますって言いたいです。そこから始まりますね。作品のストーリーも大好きだし、今まさに祐巳(植田さん)が言ってくれたように、キャラとキャストの最高の組み合わせで。しかもあれだけみんなで一致団結して一つの方向に向かって、作品を作り上げていけたこと。全てが上手く行った作品だなぁと思うんです。ですから私も「これ」と絞れないくらい「良かったこと」があります。音楽も含めた画面の雰囲気もとても素晴らしい仕上がりですから。本当に「全て」です。

※インタビュー・構成 ぽろり春草

今回のインタビューとともに、対談トーク映像とメイキング映像、CMもあわせて確認頂きたい。

対談トーク映像&CM

メイキング映像は12月17日にU-NEXTの「THE PLAYBACK」特設ページならびにYouTubeにて無料公開予定となっている。U-NEXTではアニメ『マリア様がみてる』シリーズはもちろん、原作小説やマンガなど関連書籍も配信中。また、本企画を記念した割引キャンペーンも実施中なので、ぜひこの機会に「THE PLAYBACK」とあわせてチェック!

▼U-NEXT『マリア様がみてる』シリーズ
https://video.unext.jp/browse/feature/FET0010252

©今野緒雪/集英社・山百合会
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