春川芽生【声優図鑑 by 声優グランプリ】

春川芽生「期待を外すことが期待どおり。“ひらめき”をみなさんにも楽しんでもらえる声優に」【声優図鑑 by 声優グランプリ】

春川芽生【声優図鑑 by 声優グランプリ】

キャラクターの裏に隠された声優たちの素顔に迫る、インタビュー企画『声優図鑑 by声優グランプリ』。

今回登場するのは、『ウマ娘 プリティーダービー』のシンボリクリスエス役などを演じる春川芽生さん。大阪出身でモデルや映像の経験を積んでから声優の道へ。口数少ないキャラクターだけど中の人は関西らしくボケていて…という春川さんの人柄が気になっている人も多いのでは。学生時代の思い出や、声優としての活動についてじっくりうかがいました。

春川芽生【声優図鑑 by 声優グランプリ】

春川芽生
はるかわめいく●8月11日生まれ。スターダストプロモーション所属。主な出演作は、ゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』(シンボリクリスエス)、配信『春川芽生と松田彩希の 〇〇ボーダーライン』ほか。

オフィシャルサイト:https://stardust-va.com/actor/meiku_harukawa/
Twitter:https://twitter.com/meiku_harukawa
Instagram:https://www.instagram.com/meiku_harukawa/?hl=ja

★春川さんの手書きプロフィール公開中!
https://ch.nicovideo.jp/seigura/blomaga/ar2158641

服より漫画とたこ焼きが好きだったモデル時代

――春川さんはファッション雑誌『nicola』のモデルとして、中学1年のときに芸能界デビューしていますね。
中学1年の夏、私は1週間同じ服を着るような健康優良児でしたけど、小学生の時から色つきのリップを使っているおしゃれな女の子が同学年にいて。その子が持っていた『nicola』を見た友だちがオーディションに興味を持って、私も誘われて一緒に受けたのがきっかけでした。

――春川さんは健康優良児…?
滑り台でいろんな遊び方をするくらいアクティブで、今でも残っている傷があります(笑)。小学校が終わったら約束もないまま公園に行って友だちと遊ぶような子供でしたね。一人で遊ぶことも多くて、絵を描いたり、おじいちゃんからもらった小さな電子ピアノで遊んだり。でも服にはこだわりがあったみたいです。迷彩のパンツと、黄色のインナーと、でっかいロゴつきのカーキの半袖Tシャツをずっと着ていたので。

――アクティブさが全面に出ていますね(笑)。ニコモ時代の思い出というと?
同期で入った子たちの中では元気とかスポーティとか、クール担当をすることが多かったと思います。どちらかというと、私服ページより秋の運動会とか、企画ページに出ることが多かったりして。男装の企画を持ち込んだこともあるし、写真で構成する漫画の原作を描かせてもらったことも。

春川芽生【声優図鑑 by 声優グランプリ】

――だんだん洋服にも興味を持つように?
周りの子に影響されて、ちょっとずつ。足や胸元がちょっと出るような大人びた服が好きで、レザージャケットやニーハイブーツを合わせたりしていて。中学2年の頃が特にそうで、10cm以上あるヒールを履いてUSJに行くことも。でも当時は服よりも、遊びに行ったときのたこ焼きや漫画にお給料を使ってました。漫画は表紙買いをするのも好きで。

――たこ焼きっていうのが大阪らしいですね。漫画はどんな作品を?
祖父母の家に置いてあった『HUNTER×HUNTER』とかを、1巻からではなく、途中の過激な戦闘シーンから読み始めちゃって。そんなふうに手探りで読んでいたら、今度は行きつけだったお好み焼き屋さんに『らんま1/2』が置いてあって。色々と読み漁っていくうちにどんどん好きになっていきました。

――それで、表紙買いもするように。
はい。表紙買いは『PandoraHearts』とか、Gファンタジーの漫画が多かった気がしますね。本が大きいのが良くて。そのほかに読んだのは、『あまつき』とか、少女漫画だと『近キョリ恋愛』とか。友だちから聞いた『会長はメイド様!』や少女漫画の短編集も…。あ、池山田剛さんのシリーズも好きだったな〜。『ちゃお』も買ってた! 香り玉とかの付録目当てでしたけど、ちゃおっ子でした。気づいたら家に何千冊も溜まってましたね。今、記憶がよみがえりました!

苦手意識はあったけど周りからの後押しで声優部に

――モデルの仕事を軸に、テレビや映画、舞台などの仕事も経験され、2020年には事務所の声優部に移籍していますね。
オーディションを受けるときに方向性をしぼっていこうという話になり、舞台では女性のファンの方が多かったので、よりショートカットにする案が出たり。でも大きな成果が出たわけではなく、「何をやっていきたい?」という話になって。

2.5次元の舞台をやりたかったけど当時は女性にとって狭き門だったし、もともと『ラブライブ!』や『バンドリ!』が好きで、自分で声をあてて録音するのが趣味だったことを思い出したんです。自分では当たり前だと思ってたけど、「それは“好き”なんだよ。そっちの方向に進んだほうがいんじゃない?」と周りの方から後押ししていただいて。

その時にはもう声優部も立ち上がっており、同じ舞台に出ていた会沢紗弥ちゃんを通じて声優部とつながったんです。

春川芽生【声優図鑑 by 声優グランプリ】

――それはまた運命的な出会いというか。
でも結局自分では何も決められてないんです…。上京するときも、美術系の大学に行こうかどうか迷っていたら、「ダメなら辞めればいいし、それまでやってみたら?」と背中を押してくださる方がいて。

――いろんな方の後押しがあって、最終的には自分で「やってみよう」という気持ちに?
そうですね。適性的な面での苦手意識あったんですよ。すぐ緊張するし、多分印象よりかはおしゃべりが好きなわけではないし。声も、幼い頃から電話口で「ぼく?」って言われることがあって、イヤではなかったけど、声に自信があるわけではなかったので。

先輩方やキャラクターに助けられてます

――声優としての初仕事は、YouTubeのジャンプチャンネルで公開されたボイスコミックだったそうですね。
はい。初めてで不安だったから、オーディションで認めていただくことで、ちゃんと自分で納得して収録に向かえたと思います。受かったとき、うれしかったな〜。しかも『HUNTER×HUNTER』のパロディせりふが入っていたのがまた印象的でした(笑)。「登録よろしく!」って言わせていただいたこともコミコミで、これで運使い果たした〜って思うくらいうれしかったです!

――幸先いいスタートでしたね。そして声優のお仕事で2つ目に決まったのが『ウマ娘 プリティーダービー』のシンボリクリスエス役。
私、経歴ないから…「知らんよ?」って思いました(笑)。ビッグコンテンツだし、歌もあるし…。声優部に移ってから1年間は映像の仕事をしていて、ちょうど役が決まったくらいからレッスンが始まって。それまでは歌やダンスのレッスンがなかったので、「ありがたい!」と思いながら受けていたけど、行っただけで自信がつくわけではなく。

むしろ、コロナ禍で人にあんまり会ってなかったのもあって、緊張しぃがぶり返して、しかも個人レッスンだと勝手に思っていたから…。20代半ばにもなって、年下の先輩たちを前にボロボロ泣いた記憶があります…。

春川芽生【声優図鑑 by 声優グランプリ】

――だんだんと慣れていったんですか?
完全克服はしてないです。やっぱり今でも声を使うことや何かを披露することに対して緊張するので。ひどいときは、配信が終わって家に帰って玄関から5時間動けないとか…一日何も食べれないとか…。そのままぐったりして、大丈夫かなって心配しながらSNSを見たり。でも、『ウマ娘』で表に出させてもらえる回数が増えるにつれて、「緊張するのが悪いことではない」っていうマインドになってきました。

――役が決まってすぐに、ベルーナドームでのライブイベント(2022年11月)もありました。
それもまた「知らんよ?」と思いながら(笑)。実際の失敗談として、リハーサルで立ち位置がわからなくなり、ダンサーさんに混じっていたんですよ。そんな時にゴールドシップ役の上田瞳さんがつとめる円陣で「大丈夫。ライブは出たものが全部正解だと思っていいから」と緊張をほぐすよう仰ってくださったのを聞いて、そういう心持ちでいいのか!よし!と。本番でも、ちゃ〜んと最初のうまぴょい伝説で決めポーズの手を間違えるだけで済みました(笑)。

また厄介なのが、身長があるので堂々としているように見えるんですよ。緊張してますっていうのが嘘っぽくなるから、途中で言うのをやめました。そしたら、言霊なのか、緊張しないようになってきたんです。ちょっとずつ強くなっている気はしますね。

――先輩に助けてもらえるのはありがたいですね。
役に助けられることもあります! 「みんな元気〜?」って感じの役だとプレッシャーがありそうだけど、堂々と立っているだけでオーラを感じてもらえる役なので。

春川芽生【声優図鑑 by 声優グランプリ】

――ウマ娘のCDシリーズ第10弾『WINNING LIVE 10』には、初のキャラソンとなる『THE SUPER STRONG S』が収録されましたね。
英語を話すキャラクターだから、仮歌を聴き込んだり、ネットで発音を調べたりするんだけど、歌とセリフの発音って違うから、「Rの発音ヘン?」って英語を話せる子に確認したりして…。ほかにも、ガイドメロはつける? どうしたら奥行きのある歌い方になる? などの葛藤は多くて。その日にやったことが正解だと思ってやったけど…。

でも、楽しかったです。ほかのウマ娘さんとどうやって違いを出そうとか、高音曲が多いけど自分は喉をひらいて太ましく歌い切ろうとか、自分でこうしたい!って考えながらキャラソンを歌うのが自分の夢でもあったので。

――結果、とてもかっこいい仕上がりに。ファンのみなさんからの反応をどう受け止めていますか?
みなさん、優しいです…! 知識が豊富なので、「こうなんだよ」と教えていただいたりして。モデル出身で映像をやってきて、いきなり2次元の役が決まって。そんな自分を受け入れてくださることにありがたさを感じながら、「追いつかないと」「自分のことだけやってる場合じゃない」っていう気持ちが加速して。安心してるばかりじゃいけないな、と思っています。

――自分にプレッシャーをかけていくタイプなんでしょうか。
シンボリクリスエスもそうなんですよね。仕事人で、必要なところでバシッと決める。誰かというより自分と戦い、一番しんどいところで頑張る役なので。

――しっかり伴走されているんですね。これはもう、春川さんしか演じられない役ではないかと思えてきます。
いえいえっ…!そんなことは決してないんですけど、そう思ってやるしかないし、やるからには、この役のおいしさをどこで作れるかなあと。ハズすっていうボケは関西でいろいろやってきたので、日本語ではあまり聞かないようなヘンな音を出してみたりして。挑戦の多い作品なので、演じる側が遊んでもいいのかも、と解釈させていただいているんです。それが、「ここがシュールで好きだった」などと言ってもらえると、いいふうに映って良かったって思います。

――いろいろ仕掛けているんですね。
最初は追いかけている感じでしたけど、ほかのウマ娘さんの感じを見ながら必死に引き出しを探すうちに、ちょっと自分に寄せてもいいのかなと思えてきて。リスペクトしつつ、追いかけつつ、自分らしさみたいなのを上乗せで。

春川芽生【声優図鑑 by 声優グランプリ】

作品や役と出会ったときの“ひらめき”を大事に

――プライベートはどんなふうに過ごしていますか? 以前は絵を描くのが好きだったそうですが。
じつは最近、絵よりも歌のほうに興味が移っていて(笑)。

――歌はもともと好きだったんですか?
大好きでした! カラオケは週4で行ってました。だいたい6時間のフリーパックで! かっこいい声とかかわいい声とか、いろいろ練習するのが楽しかったんだと思います。中学校の時に初音ミクちゃんブームがきてから、ボカロが大好きになって。これも周りからの影響なんですよ。流行にくわしい子が持ってきたのを聴いてみたら、機械っぽいのがおもしろかったり、人が歌えるテンポじゃないからこそキャッチーだったりして。自分でも好きな歌い手さんを広めるようになりました。

――歌をお仕事にしたいという気持ちも?
それはまったく。カラオケでも、どこでボケるかとか、そういう練習ばかりしていたので(笑)。学校に軽音部もありましたけど、演劇部のほうがタメになるかなっていう感じで。半分くらいは台本を書く担当で、コメディ劇みたいなのばかり書いていましたけど。

――ボケの練習って、さすがですね(笑)。最近はどんな音楽を聴いていますか?
最近よく聴くのはSHOWーGOさん。メロウな感じのヒューマンビートボクサーさんで、日本の風情みたいなのを切り取りながら、MVも全部自分で手がけていて。発信されている音楽はもちろん、自分のできる範囲で最大限やりますっていう生き様に憧れます。私はいろんな方に背中を押してもらって今の仕事をしているので、自分が好きなものがわかっていて、自分らしく表現されている方に憧れるんです。

――これから声優として、どんなことをしていきたいですか?
こんなに飛び級で、最先端で活躍されている先輩方と一緒にできるってなかなかないことなので、一回一回を大事にしたいですし、私は7色の声を出せるタイプではないので、「この人はこの声」って長く演じられる役でがんばっていきたい野望もあります。「こういうチャレンジ企画もやるんだ」とか、「作詞もするんだ」とか、毎回の報告を楽しんでいただける声優になりたいです。

――いい意味で期待を外していくようなイメージでしょうか。
期待を外すことが期待どおりというか。もちろんやりたいことは2次元と関わることなので、そこに主軸を置きつつ、ジャンルを超えていろんな作品や役に出会えることが大好きなので。それによって得られる新しい視点とか、ひらめきを大事にしたいんです。それを、みなさんにも楽しんでもらえるような声優でいられたら、うれしいなと思います。

春川芽生【声優図鑑 by 声優グランプリ】

【声優図鑑】春川芽生さんのコメント動画

次回の「声優図鑑」をお楽しみに!

撮影=石田潤、取材・文=吉田あき、制作・キャスティング協力=吉村尚紀「オブジェクト」

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