お金をためて、専門学校に入学しました
――声優になるための第一歩を踏み出したのは、いつ頃ですか?
第一歩というと……中学校3年生ですかね。小学生の頃から声優になりたいと思っていたものの、なんとなくまわりには言いづらくて、家族にも友達にも言わずに過ごしていたんです。だけど、中学校3年生になって進路の話をするようになり、友達に打ち明けたら「えっ、めっちゃいいじゃん!」と肯定してくれて。それをきっかけに気持ちが切り替わり、「ちゃんと目指そう!」と思うようになりました。そうして、「まずは専門学校に通って勉強しよう」って。
――では、いつ頃から専門学校に通い始めたのでしょう?
実は、社会人2年目からなんです。うちは母子家庭だったので、専門学校に通うためのお金を自分でためたかったんです。なので、高校を卒業してすぐに就職してお金をためて、社会人2年目から専門学校の夜間コースに入学しました。平日は普通に働いて、日曜に専門学校に行くという生活を送っていましたね。
――どんなお仕事をしていたんですか?
コールセンターです。声を使ったお仕事のほうがいいなと思って。言葉遣いに関しても、すごく勉強になりました。
――では、専門学校はいかがでしたか?
すっごく楽しかったです! 演劇部に所属していたことはあったんですけど、ちゃんとした指導は専門学校で初めて受けたので新鮮でした。日曜日を楽しみに仕事を頑張るみたいな感じでしたね。専門学校に通いながら、事務所に所属するためのオーディションも受けていたのですが、それはちょっと緊張しましたね……。事務所別のオーディションのほかに、30社くらいが集まるドラフトオーディションもあるんですけど、そのドラフトオーディションで緊張しすぎて。一生懸命考えてきた自己PRを全部飛ばしちゃったことがあるんです(笑)。しかも、カメラまであったので余計にわけがわからなくなって、「わー! 忘れちゃいました!」って(笑)。その後に、「忘れてしまったんですけど、言いたいことだけ言います」と意気込みを伝えたら、そのオーディションの結果がいちばん良かったんですよ。ちょっと複雑な気持ちでした(笑)。
――そういったオーディションを経て、ゆーりんプロに所属するんですよね。
はい。オーディション後は、合格を頂いた事務所さんから「養成所合格です」とか、「ジュニア所属です」「準所属です」とそれぞれ言っていただいて、そこから自分に合う事務所を選ぶという流れになるんです。ゆーりんプロには預かり所属で合格したんですけど、ナレーションにも強い事務所だと聞いていたので、ここにしようと。
――ナレーションにも興味があったんですね。
そうなんです。専門学校はお芝居の勉強がメインだったので、この事務所に入ってナレーションの技術も磨きたいと思ったのが理由です。働いていた会社の都合上、すぐに辞めて所属というわけにはいかず。半年後に会社を辞めてから、ゆーりんプロの預かり所属になりました。その半年間も専門学校には通っていたので、トータルで1年半は通ったことになります。
悔しさを払拭してようやく前に進めた気がします
――現在(2026年)、事務所に所属して2年目とのこと。初めて出演した作品は何ですか?
『BanG Dream! Our Notes』(以下、『アワーノーツ』)です。預かり所属の最後のほうに受けたオーディションで、ジュニア所属に上がったばかりの頃に『アワーノーツ』の合格もいただきました。
――合格と聞いたときは、どんなお気持ちでしたか?
アルバイトの休憩時間、椅子に座ってボケーッとしているときにマネージャーさんからお電話をいただいて、最初は「……え?」となりました(笑)。それから、「やったー、ありがとうございます」と電話を切ったんですけど、アルバイトを終えて家に帰ってから喜びがグッ!と湧いてきましたね。ドッキリだったらどうしようと疑ってしまうくらい信じられない気持ちもありつつ、でもうれしくて。日がたつにつれ「本当に合格したんだ」「初めてのお仕事が決まったんだ」と実感しました。
――ご家族には報告しましたか?
はい。情報解禁まで詳しいことは言えませんでしたが、「初めてのお仕事が決まったよ」とだけ報告しました。母はさっぱりした人なので「へー、良かったじゃん」で終わりだったんですけど、姉はすごく喜んでくれましたね(笑)。アニメ好きで声優の世界に関しては昔から詳しい人だったので、「すごいね!」「ここから大変だろうけど、頑張ってね」と言ってもらえました。けんかしてきたお姉ちゃんがこんなに喜んでくれるんだ!と、うれしかったです。
――そんなにけんかしていたんですか?
実家で一緒に暮らしている頃は、エアコンをどっちが消すかで論争になるくらいでした。「お姉ちゃんのほうがリモコンに近いんだから、お姉ちゃんが消してよ!」って。本当にくだらないですよね(笑)。
――『アワーノーツ』の収録はいかがでしたか?
1日5時間くらいの収録を5回ほどやったんですけど、初日は何を持っていけばいいのかすらわからなくて。分厚い台本と、筆箱、お水、のどあめ、アクセント辞典を詰め込んで行きました。そうしたら、「アクセント辞典をそのまま持ってくる人、久しぶりに見た!」と言われちゃいました。皆さん、スマホアプリ版の辞典で確認するらしくて、わざわざ重い辞典を持ってこないよって。それが、けっこう恥ずかしかったです(笑)。でも、持ってきたからにはと思って、ちゃんと使いましたけどね!
――収録自体も緊張したのでは? 初めてのお仕事ですし。
そうですね。でも収録に関しては、「まだ経験不足だな」という思いのほうが強いです。「この表現、いいね」と言っていただけることもありましたけど、ディレクションを受けてお芝居をガラッと変えるといった対応力がまだまだで。自分で聞き直してみて「さっきと全然変わってないじゃん!」と気づいた時は、とてもショックでした。優しくアドバイスをくださる温かい現場ではあったんですけど、うまく対応できない自分が悔しくて……。泣きながら帰った日もあります。
――その悔しさは、どのように払拭しましたか?
「何度か同じディレクションを受けたな」と気づいた部分は、次の収録までに対策していくようにしました。そうしたら、収録を重ねるごとにスムーズに進むようになっていきましたね。あと、特に大事なシーンの収録は、「自分で持ってきたものを思い切りぶつけたい!」と考えていて。一度、自分が思うままにやってみたんです。そうしたら、音響監督さんとシナリオライターさんから「めっちゃ良かったよ!」と言っていただけて……。その時、ようやくちょっと前に進めた感じがしましたね。
――収録を重ねて、着実に成長したんですね。ちなみに、アニメの現場に参加したことは?
この前、初めて入らせていただきました! 名前のない女子生徒役を1回だけやったんですけど、すごく良い経験になりましたね。
――先輩方と一緒にお芝居できますもんね。
そうなんですよ。経験量といい技術量といい、何もかもが若手の私と全然違うと思って。見ているだけですごく勉強になりました! それに、皆さん優しいんですよ。一瞬しか出ない私がご挨拶をしてもいいのかなと不安に思いつつご挨拶したら、一人ひとり椅子から立って所属と名前を言ってくださって。何て優しい方々なんだ!って。私もこういう声優さんになりたいとあらためて思いましたね。
――ところで、そんな薬師寺さんの休日の過ごし方は?
ずーっと寝ている日もあれば、ずーっと友達と外で遊んでいる日もあります。事務所の子や同期の子とお出かけするときは、少しでも勉強になればと美術館に行ったり映画を観たり落語を観たりしていますね。
――家でも外でも、楽しみを見つけられるタイプなんですね。
そうですね。一度でもお出かけした日は、家に帰ってからもう一度外に出てお散歩したりします。きれいなお花が咲いていたら写真を撮ったり、おいしいパン屋さんを見つけてまた来よう!と思ったり。
――パンがお好きなんですか?
大好きです! パンよりはお米のほうが太りにくいと聞いたので、白米を食べるようにしているんですけど、たまに恋しくなっちゃいます。お出かけした先でパン屋さんを見つけると、ふらーっと入ってしまいますし、「一つだけ!」と決めていたはずなのに、気づいたら三つ買っていることも(笑)。そんな休日が楽しいです。
~声優未来予想図~
Q:これからどんな声優を目指したいですか?
1年後の私 アニメに名前のある役で出演する!
役名のありなしに関わらず、どんな役でも大事だと思うんですけど、声優になろうと決めた時一番に思い描いたのがアニメのメインキャストだったので。やっぱり、その思いは強いですね。1年で叶うかな……? いや、叶えます!
3年後の私 幅広い分野で活動する!
アニメ、ゲーム、朗読劇はもちろん、舞台などにも出てお芝居の経験値を増やしたいです。あとは芝居に限らず何でもできたら! 例えば作品関連の企画とかで、バンジージャンプを飛んだりもしたいですね! 何でもやってみたいタイプなので、「飛んでみて!」と言われたら「わかりました! わーっ!」っていけちゃうと思うんです(笑)。
5年後の私 声優アワードを獲る!
5年後というか5年以内に叶えたいことなんですけど、声優アワードで賞を獲りたいです。アニメを観ていてすごいなと思った声優さんがよく受賞されているイメージなので、「自分もあの場に立ちたい」と強く思うようになりました。今の私には高すぎる目標ですけど、目標は高いくらいがちょうどいいので! 5年後までには……叶えます!
10年後の私 ナレーションのお仕事をする!
CMナレーションや、映画が始まる前の広告のナレーションを聞いていると、すごくワクワクして、自分もやってみたいと思うようになったんです。ナレーションに強い今の事務所でナレーションの技術を磨いて、この頃にはナレーターとしてもお仕事を頂けるようになっていたらいいなと思います。
撮影/石田 潤 ヘアメイク/Sweets 取材・文/松本まゆげ
薬師寺李有さん手書きプロフィール
薬師寺李有さんコメント動画
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https://youtu.be/nyKelUEpT78
















