千々和竜策

千々和竜策

千々和竜策

実力派声優の千々和竜策さん。目立ちたがりやで、表現するのが大好きという千々和さんにとって声優はまさに天職! 自らの経験から、声優志望者への真摯なメッセージは要チェック!

プロフィール

ちぢわりゅうさく……5月27日生まれ。プロダクション・エース。

洋画『ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則』レナード・ホフスタッター役、『アントラージュ★オレたちのハリウッド』エリック"E"マーフィー役、『G.I.ジョー』ブレーカー役、アニメ『薄桜鬼』伊東甲子太郎役、『銀河鉄道物語』村瀬龍作役、『バジリスク甲賀忍法帖』風待将監、『吉宗』悪代官役、『シュヴァリエ』オルレアン公、ゲーム『428 ~封鎖された渋谷で~』安田大成 ほか。

Vol.1 脇役には主人公にない楽しさがある! この楽しさ、あまり気づかれたくないな、だって楽しいんだもん!

声優になりたいと思ったきっかけは?

アニメや外画などを見て、「あ、この人は面白い演技をするな」と思うと、エンドロールで声優さんの名前を必ずチェックするような子供でした。テレビ番組をまるごと録音して繰り返し聞いたりして、音に対してとても敏感だったように思います。小学生の頃なんか、周りがアイドルのレコードを買っていたのに、僕は効果音のレコードを買ったりして(笑)。それを使ってラジオドラマを作っていました。もちろん、遊び半分程度なんだけど、人前で何かをすることが大好きな、出たがりで、目立ちたがりの性分は「何かを表現したい」という思いが常にあったからだと思います。
中学生の頃から始めたバンド活動は、かなり熱を入れてやっていました。音楽の専門学校に通って、真剣にプロになろうと思っていたんですが、結局挫折。「じゃあ、何をやろう」と考えたときに、子供の頃から同じように憧れだった声優の世界に入ろう! と決めました。自分を表現する別の方法として、新たにチャレンジしようと思ったんですね。

子供の頃に見た、記憶に残っている作品があれば教えてください。

『ルパンⅢ世』とか『ど根性ガエル』とか『侍ジャイアンツ』とか好きで見ていたんですが、中でも強烈だったのは、映画『がんばれ!! タブチくん!!』ですね。主人公を西田敏行さんが演じていらして、脇を羽佐間道夫さん、青野武さん、富山敬さんなど大ベテランが固めていました。とにかくギャグの限りを尽くしたアニメで、アニメでこんな表現していいんだって思うくらい、テレビで観ていたものとははみ出していたんです。今から思えば、それが僕にすごく影響を与えているのかもしれません。カッコいいストーリーももちろん好きですが、人を笑わせたい、という今のスタンスはココから来ているんでしょうね。

声優デビューはいつですか?

2002年頃かな。OVAの「日本昔話」のアニメに何本か出させていただきました。アニメって収録のときに絵ができていないことが多いんですが、そのときは、すでに絵ができていて、すごく入りやすかった。それでも、芸が未熟だったのでその絵についていくことができず、悔しい思いをしました。ただ、そのときご一緒した先輩方が皆とても優しくて、和気あいあいとした雰囲気だったので、初めての現場としてはとても恵まれたなと思っています。

声優になるためにどんな勉強をされましたか?

声優の養成学校で習うこと以外に、何かを訓練したと言えることはあまりないんですが、日常生活の中で感情を動かすことは常に意識していました。表現者にとって、感情豊かであることは大切ですからね。いろんなものを観て、感じて、吸収しようと。
この世界、新人のうちは声優としての自分のイメージが固定していないので、ふり幅広く、若い役も老け役も振られるんです。そんなときは、自分の中の引き出しから、必死になって何かを引きずり出さなくちゃいけない。そこで、これまでどれだけのものを観察して、吸収してきたかが大事になってくるんですよね。面白いのは、警察官って偉そうだなって思っている人が演じる警察官は、偉そうな警察官になっちゃうこと。自分の目線がそのままキャラクターに反映されることもあるから、あまり偏った目線で物事を見ていてはだめですよ。

声優の仕事の魅力とは?

年齢も、性別も国籍も、人間でなくても、表現できるっていうことじゃないでしょうか。その役を演じたときにはじめて、いままで自分になかったものが、むにゅっと出てくるのが快感だったりして(笑)。
最近、「オカマ」の役をいただく機会があるのですが、普段の自分では全然出てこない部分なのに、いざ収録がはじまるとオカマになれちゃう。自分にこんな一面があったのかって驚きつつも、それを楽しんでいますね。
最近でいうと、『薄桜鬼』の伊東甲子太郎役。すごくかっこいいキャラなんですけど、なぜかオネエ言葉なんです。これはもうけ役だ! って思いまして(笑)、ゲーム版ではやりたい放題やらせていただきました。アニメ版ではまた違った演出で、妖しく淡々と、やらせていただき、同じキャラクターでもこんなに違うんだ! ってすごく楽しかったですね。脇役の方が色をつけられるのでやっていても楽しいですね。

脇役の魅力を教えてください。

主人公にはない楽しさが脇役にはありますね。主人公は外すことができないラインがあるんですが、脇役はいかにそのラインをはみ出すか、っていうのがひとつの基準になってくるんです。演じちゃったもん勝ち! みたいなね。ラインがどこにあるかっていうのがわかると、声優として一つ強くなれるんじゃないでしょうか。その魅力に気付いてしまうと、もうのめりこんじゃいます。だから、できれば若い人にはその楽しさに気付かれたくないなあ・・・だって楽しいんだもん(笑)。

(取材:2010年6月28日)

Vol.2 今は楽しくってしょうがない! 声優の仕事は最後の仕上げ。だから皆の思いを絶対に裏切らない。

印象に残った作品や、役柄は?

初レギュラーをいただけた『銀河鉄道物語』の村瀬龍作役ですね。僕は決して村瀬のように男らしいわけでも腕っ節が強いわけでもないのですが、当時師事していた塩屋翼さんに呼んでもらえたんです。ガタイはそこそこいいので、がっしりした声が出ると思ってもらえたのかな。現場ではデビューしたての僕が、先輩方より偉い隊長役なので恐縮しながらも怒鳴っていましたね(笑)。嬉しかったのは、最初、村瀬はただの「村瀬」だったんですが、ライターさんに「違和感が全然ないので村瀬の下の名前を千々和さんからとって龍作とさせていただきます」って言われたこと。こんなに光栄なことはないですね。

仕事をする際に心がけていることは?

声優ですので、喉を大事にしようと心がけています。僕は喉が弱い方ではなかったので最初のうちはノーケアだったんです。でも、仕事が立て込んでいたり無理をしちゃうと、声がかすれてしまって。それでも「やる気がない」って思われたくないので大声を出しちゃったり。以前、風邪を引いてしまったことがあって、家を出るときは大丈夫だったんですが、現場に行ったら声が違っていて・・・。そこで「帰っていいよ」といわれてしまったんです。放送に穴を開けることはなかったんですが、翌週録り直しになってしまうし、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいでしたね。それからはもう加湿器をしっかりつけて、コンディションを常に保とう、喉を大事にしようと心がけています。今は、決して手は抜かないですが、自分の身体を見つつ、ペース配分をすることができるようになりました。

失敗は引きずっちゃう方ですか?

役者って、矛盾しているようですが「繊細でありつつ、鈍感であれ」というのが大事だと思うんです。感覚は研ぎ澄まして、全てのものに敏感に反応しなければいけない。その反面、言われたことに萎縮してしまうのは絶対にNG。さらに大胆に踏み込むぐらいの気持ちでないと。言ってる方も、人間性を否定しているわけではなく、仕事上のことなので、終わったらあっけらかんとしていますね(笑)。だから、これを見ている皆も、現場でミスをしたら「すいません! もう1回お願いします!」って。その場では気にしないで、後でゆっくり反省すればいいんじゃないかな? 失敗を避けて無難な道を選ぶよりも、大胆にチャレンジした方が楽しいと思いますよ。

声優になってよかったと思うことは?

楽しくてしょうがないですよ。 自分でこうだ、と思える演技ができたとき、ものすごい充足感を感じます。楽しくて顔が崩れっぱなし、みたいな(笑)。なかなかないことなんですが、実は今、そんな状態なんです。外画で『ビッグバン★セオリー』の主役をやらせていただいているんですが、ありがたいことに僕が好きなコメディで、等身大で演じられる役をいただけたんです。コメディの現場なので、アドリブが面白いんですよ。台本を変えないまでもそれぞれニュアンスを込めて演技する。顔は笑っていても、勝負の世界。皆さん、いかに見てくださっている方に笑ってもらえるかを真剣に考えているんです。
アニメにしろ、外画にしろ、声優がやる作業は最後の仕上げです。ここに来るまでに多くの人たちの思いや、努力、期待がある。僕たちはそれに応えなくちゃいけないんです。だから、皆さんから求められているところは絶対にはずさないのはもちろん、期待していた以上に良かった! と思ってもらえるように取り組みたいですね。だから、声優の仕事ってとても責任重大だと思いますよ。

今後の目標を教えてください。

常に現場にいて、仕事を続けていきたいですね。そういう状態に身をおいてこそ、新しいことに触れられ、どんどん成長していくことができるんだと思います。これからも前にどんどん出て、何かを表現していきたいと思っています。

声優になりたい方へのメッセージをお願いします。

夢を実現できるかどうかは、「なれたらいいな」という気持ちなのか、「絶対なってやる」という気持ちなのか、という違いだと思います。声優になるんだ、という信念を貫き通せる人が最終的に夢をかなえることができるんじゃないかな。すごく生意気なんですが、僕も若いころは根拠のない自信があったんです(笑)。技術的にも下手だって分かっているのに、きっと出来るはずだって心に決めて取り組んでいました。
若いときって皆迷うし、どうしたらいいかわからないって思うのはわかるんです。でもね、「どうしたらいいですか?」って言っているうちはなれない。本当にやりたいなら、後先考えずにやり始めること。始めてみると、自分が何をすべきなのかが見えてくると思いますよ。声優って特別な才能が必要な職業じゃないから、前向きな気持ちさえあれば誰にでもなれるものだと思うんです。かわいい声や変わった声なんて皆が思うほど必要とされていません。100人いれば、100通りの演じ方があって、それが個性になるんだから。自分こそ声優になるんだ! っていう強い信念を持って、時間がかかっても諦めないことが一番大事だと思います。

(取材:2010年6月28日)

千々和竜策さん主演! 『ビッグバン★セオリー』

千々和さん主演の外国ドラマ『ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則』は、

スカパー(ch.360)、スカパーHD(ch.647)、スカパーe2(ch.310)、
全国のケーブルテレビ局
ブロードバンドTVで放送中!