小林裕介

小林裕介さん

小林裕介
Voice Navi -ボイスナビ-

声優になりたいけど、どうすればいいのかわからない……。でも大丈夫。夢を叶えた先輩からのメッセージには、そんな悩みを解決してくれるヒントが満載です。今回は、アミューズメントメディア総合学院(以下、AMG)の卒業生で、現在声優として活躍中の小林裕介さんが登場。AMG時代のエピソードや声優を目指す人へのメッセージなどをお届けします。

小林裕介

小林裕介さん
こばやしゆうすけ●3月25日生まれ、東京都出身。ゆーりんプロ所属。主な出演作は、アニメ『現実主義勇者の王国再建記』ソーマ・カズヤ、『Re:ゼロから始める異世界生活』ナツキ・スバル、『Dr.STONE』千空など。

年齢を理由に声優を諦める必要はありません!

最初に声優になりたいと思ったのはいつですか?

声優の存在は中学生の頃から認識していたんですが、高校2年生の時に友達に「声優が好きなんだ」って話をしたら、「じゃあ、なればいいじゃん」って言われて。その時初めて「一般人がなれるものなんだ」と知ったんですよ。声優って、小さい時から英才教育を受けた人しかなれないと勝手に思っていて(笑)。その友達の一言で「目指してみよう」と思いました。でも親に反対されたんですね。当時は今ほど声優という職業が一般に認知されてなかったので、親が反対するのも当然かなと思いますけど。僕は熱意を持って、それこそAMGの資料とかも集めて親を説得しようとしたんですけど、話を聞いてくれず……。高校卒業後は大学に進学しました。

それで一旦諦めたんですか?

いや、正直諦めてはいなくて、大学に行きながらこっそりと専門学校に通おうと思っていました。でも、たまたま入った空手サークルがガチガチの体育会系で、週5で稽古に出ないといけなくなり、しかも理系の大学だったので授業もビッシリとあって。バイトもできないので専門学校に通うお金もなく、現実的に「無理だな……」と思って。大学3年の頃には、心のどこかでは声優に憧れつつも、周りの就活の波に飲まれて就職しました。その頃は正直諦めてはいましたね。

それで大学卒業後に就職したんですね。

はい。でも同じ毎日を繰り返すことにつまらなさを感じてしまって、土日の休みに歌のレッスンを受けることにしたんです。そこの先生が「声優に興味があるならやった方がいい」と背中を押してくれて、AMGに通うようになりました。あの時の先生には感謝です。

AMGに入ろうと思った理由は?

実は高校2年生の時に、AMGの体験説明会を受けたことがあって、その時面談してくれた先生がすごく親身に話を聞いてくださったんです。「親にも言ってなくて、どうしたら説得できますかね」と聞いたら、「皆さん、こういうふうに説得してますよ」と説明してくれて。そんなに親身になってくださるなんてなかなかないと思って、「入るならここにしよう」と思ったんです。そういうことがあって、社会人になって「もう一度目指してみよう」と思った時、真っ先に思いついたのがAMGでした。しかも社会人向けの日曜日コースがあったので、自分にぴったりだと思って。そのコースには社会人や大学生、以前事務所に入っていたけど、もう一回勉強し直したい人など、いろんな人たちがいました。

AMGで学んで、特に思い出に残っていることは?

最初の半年で進級テストに受かってマスタークラスに入ったんですけど、マスタークラスでは音響監督さん、脚本家さん、現役の声優さんからのお話を聞く授業が多くて、正直「実技を学びたいな」っていう気持ちが強かったんですね。そんな時、学園祭の「アフレコライブ」に参加してすごく楽しかったのを覚えています。アニメに声をあてるのが楽しみでこの業界を目指したので、他の人たちが演じているのを見るのも面白かったですね。

インターンシップでお仕事も経験したんですよね。

はい。でも最初に1回経験した後、なかなかチャンスをもらえなくて……。実はもう一つ決まってたお仕事があったんですよ。でもそれが僕ではなくなり、同じクラスの別の人がやったというのを知って、「こんな身近な人に取られるんだ!?」とヘコみました。ただ良い意味で毎週授業があったし、「そこで挽回するチャンスはくるだろう」と思って、前向きにレッスンに取り組んでいたと思います。「その人が使われたってことは、今の僕にないものがあるんだろう」と思って、その人を研究対象にしたりして。

AMGで学んで成長したと思うことは?

技術面で言うと、マイク前の立ち方、台本の持ち方、マイクの入れ替わり方など基礎的なことですね。ここをちゃんと教わっていたので、現場に出ても何も心配はなかったです。また「挨拶をしっかりやろう」と言われていて、教務室に入る時には必ず「失礼します。マスタークラスの小林祐介です」と挨拶していました。現場に出て、大きな声で挨拶をするのって、慣れてないとなかなか難しいんです。でもそれをちゃんとできたのは、徹底した指導があったからだと思います。

AMGで学んで良かったと思ったことは?

何より助かったのが”AMG卒業生”という肩書きです。現場に行ってAMGの先輩方に「僕、AMG卒業生です」と言うと、皆さん「そうなんだ。何期生なの?」「あの先生、大変だったでしょ」と話をするきっかけがもらえました。現場に出ると、AMG卒業生って多いんですよ。AMGを卒業したこと自体が現場になじむ大きな理由の一つになっていたので、正直一番ありがたかったです。

AMGを卒業後、事務所に所属されてから壁に当たったことは?

事務所に入ってしばらくは、ずーっと壁でしたね。オーディションはすべて落ちていました。ある時、初めて最終オーディションの3人まで残ったことがあって、当時のマネージャーも「これはいけるだろう」と言ってくれてたんです。でも結局は受からなくて。マネージャーからも「ここでとれなかったら、今後難しいかもしれないなあ」とある種死刑宣告のようなものを受けてしまって。マネージャーに見放されたら僕らはやりようがないので、「もう辞めるかな」くらいのところまで追い詰められました。あれは僕の中では一番の壁でした。
1年ほどそういう時期を経験して、何かの動画でたまたま「カッコいい戦闘シーン集」を見つけたんですね。それを見て「めちゃくちゃカッコいいな。誰がやってるんだろう」と思ったら、その最終オーディションで受かった人だったんです。当時心のどこかで「絶対自分は負けてない。運が悪かったんだ」なんて思っていたけど、その人を見て「俺、この人に全然勝ってねえじゃん。なんでこの人と同じぐらい上手いと思ってたんだろう?」って。そこで初めて自分の実力をしっかりと把握して、そこから「とにかくこの人ぐらいにはならないといけない」と思って動き始めた感じですね。

最初は辛い時期が続いたわけですね。

事務所に入っていきなり仕事が来るとは思ってませんでしたから、それは覚悟の上だったんですけどね。ただ僕は「声の仕事をしたい」と思ってたのに、来る仕事って”顔出し”が多かったんですよ。CMとか企業のVP動画とか。そもそも僕は顔を出したくなくて声優というジャンルを選んだので、戸惑いは大きかったですね。でも何の実績もないのに「声の仕事がやりたいんです」って言える生意気さもなくて。最初の1、2年はそんな感じでしたね。オーディションを受けても結局合否の結果しか知らされないので、自分の何がダメだったのかもわからない。「どこに向かっていけばいいのかな?」という不安の中で3年目、4年目と過ぎて。アニメ「ウィッチクラフトワークス」(2014年)のオーディションに受かるまでの4年間でアニメは1、2件しかなかったです。

その頃は、どうやってモチベーションを保っていましたか?

何でしょうね? 僕もちょっと思い出せないです(笑)。ただ当時は、うちの事務所に新井里美さんやアニメの現場に出ている先輩方がいらっしゃったので、「その人たちがいる限りは、モブでも何でも現場に入れるチャンスはあるだろう」と思っていましたね。また当時のマネージャーが僕を押してくださっていたので、「とにかく頑張っていれば、きっといつか出られるだろう」という漠然としたものにしがみついていたと思います。まぁ僕よりももっと大変な思いをしている方もいるとは思いますが、僕としては密度の濃い下積み時代でしたね。

今後やってみたいことはありますか?
以前、自分が座長となって舞台やボイスドラマを作りたいと仰っていましたが……。

はい。ボイスドラマは一つ作ったんですよ。すごく楽しかったんですけど、お芝居をやること以上にやることが多くて……、ちょっと大変すぎましたね。自分で全部やったんですよ。パッケージのデザインを決めるなどCDを作る過程はもちろん、販売ルートを決めたり、お金の計算をしたり。

全部やったんですか? すごいですね。

それをやってみて分かったことは、「やっぱり僕は芝居をやるのが一番好き」ということ(笑)。なので今後は、僕が作りたいものを提案して、それを作ってくださるスタッフさんを集めて、自分は演者として参加する、という形ならやるかもしれません。それをやるにはある程度資金も必要になるので、今すぐじゃないけど、いずれはやりたいと思っています。

これから声優を目指す皆さんへ、アドバイスをお願いします。

まず、僕自身が社会人を経て声優デビューできましたから、「年齢を理由に尻込みする必要はない」とはっきり言いたいです。そして、演技の勉強をすることも大事ですが、それ以外のスキルを身につけることも大事だと思います。今は何のスキルが活きるか本当にわからない時代。社会人を経験した方なら当たり前に持っている一般常識が、こちらの業界に来ると意外と重宝されることもあるんです。僕なんか仕事でフォークリフトを運転していただけなのに、それを生放送で披露することになるとは思いませんでした(笑)。それまで培ったものすべて活かせる機会があるのが芸能界だと思います。英検を持っていれば、英語を喋るキャラクターを演じる時に活かせますし、クイズ番組だって、良い大学を出ているだけでオファーが来たりしますから。「使えるものは全部使う」くらいのハングリー精神を持って取り組んでほしいです。

アミューズメントメディア総合学院

「制作現場こそ、最高の教育現場」という理念の下、昨年はのべ200人以上の在校生がインターンシップによりプロの現場を経験。その経験は「芸歴」となり、プロダクション直接所属への大きなアドバンテージとなっている。実際、プロダクション直接所属率は驚異の66%を誇る。「プロダクション所属学内オーディション」では、70社以上のプロダクションが来校。オーディションは1社ずつ行われるので、1日1日集中して受験できるという恵まれた環境に加え、受験エントリーに制限を設けていないので、多くの合格チャンスがある。

【公式ホームページ】
https://www.amgakuin.co.jp/