福圓美里先生、勝部雅さん、紙屋亜理砂さんインタビュー

特別講師:福圓美里先生
ふくえんみさと●1月10日生まれ、東京都出身。シグマ・セブン所属。アニメ『ジョジョの奇妙な冒険スターダストクルセイダース』(イギー役)、『美少女戦士セーラームーンCrystal』(ちびうさ)『ストライクウィッチーズ』(宮藤芳佳)などに出演。

専科生:勝部雅さん
かつべまさし●3月16日生まれ、島根県出身。19歳で上京し、養成所で勉強しながら舞台などに出演。昨年シグマ・セブン声優養成所に入所。「1年目でクラスリーダーを任され、人を見る目が鍛えられました。講師の先生は厳しいですが、生徒一人ひとりをしっかりと見てくれるので、愛を感じます」

専科生:紙屋亜理砂さん
かみやありさ●10月8日生まれ、佐賀県出身。短大卒業後に上京し、シグマ・セブン声優養成所に入所。「ナレーションに強い事務所を探していた時、シグマ・セブンを見つけて、ここで勉強したいと思いました。現役で活躍されている講師の方から、現場のお話を聞けるところも良いと思いました」

――今回、福圓さんの特別レッスンは演技が中心でしたね。

福圓 はい。演技にはいろいろなやり方があるので、今回はこれまでに私がやってきた方法を示して「こういう取り組み方もあるんだよ」と伝えたいと思いました。たとえばセリフというのは感情を表現するものではなくて、人が言葉を発する時には必ず目的があります。その考え方があるかないかで表現の幅が変わってくるので、まずはそこをお伝えしようと。また、テンションをどうやって膨らませると自分の演技にとって有効なのか? など。全体的には「演じるというのはこういう仕事だよ」と伝えるための授業にしました。

――生徒さんたちの印象はいかがでしたか?

福圓 私もシグマ・セブン声優養成所の出身ですが、私たちの頃よりも素直で真っすぐなお芝居をされる生徒さんが多いなあと感じました。みんな本当に上手で、ちょっとした役ならすぐに現場に出てもできると思いました。ただ、長く声優の仕事をしていくには、もう少し技術や考え方があった方がいいかなって。今は等身大の若々しさでやっていけても、30~40歳になった時に、それだけではやっていけなくなる。そこでも戦えるベースを今のうちに少しずつ育てていかないといけません。私も養成所の先生から言われたことがすぐに分からなくても、現場での経験値が上がってきた時に「あの時、先生に言われたのは、このことだったのか」と思い出すことがありました。そんな風に、私が言ったことも、みんなの頭の隅に引っかかってくれればいいなと思います。

――勝部さん、紙屋さんはレッスンを受けていかがでしたか?

勝部 普段講師の方から教えていただくことと違う方向性のお話や、福圓さんが考える実践的なお話が聞けて面白かったです。特に「感情表現するのではなく、目的を持って行動することが芝居である」という考え方が印象的で、すごく勉強になりました。
紙屋 私はアップ(準備練習)の大切さを知りました。最初に自己紹介をして「自分はどういう声優になりたいか」を一人ずつ言っていきました。その後、アップをしてから再度同じことをしたのですが、その時は最初に思っていた「自分をよく見せたい」という意識がなくなって、自分の純粋な思いをストレートに言えました。そういう不思議な感覚がつかめたのは大きな収穫でした。
福圓 最初はみんな「自分を良く見せよう」「良い答えを言おう」とガチガチになっているんですよね。でもアップをするとその欲みたいなものが無くなるんです。みんなすごく生き生きして、表情も明るくなって、出てくる言葉も変わってくる。そういうことを実体験してもらいました。
勝部 僕は、言葉自体はそれほど変わらなかったけど、必死にアップして何も考えられない状態になって、熱い気持ちになっていることが実感できました。

――福圓さんから見た勝部さん、紙屋さんの印象はどうでしたか?

福圓 二人とも印象に残っています。紙屋さんは素直で聡明で、人の気持を考えられて、空気も読める。ただ、ちょっと真面目過ぎるところがあるので、「ちゃんとしなくちゃ」って思いすぎない方がいいかなと思います。勝部さんは自分を装わないし、堂々としていて度胸もある。役者としての資質も良くて、お芝居も本人が意図せずにやったことが効果的だったりするんです。それは才能だから、どんどん伸ばしていってほしいですね。

――逆に、勝部さん、紙屋さんから見た福圓さんの印象は?

紙屋 最初見た時に、すごく可愛らしい方だなと思いました。でも授業を受けているうちに「人としての強さ」や「お芝居への愛」が伝わってきて、自分もそれを受け取ろうと必死でした。想像していた福圓さんのイメージよりも、もっと強い方だと思いました。
勝部 以前福圓さんの舞台を拝見した時も思いましたが、レッスンでお会いした時、声がとても印象的でした。可愛らしく、よく通る声で、クラス全体にしっかり響き渡っていたので「おおーっ」と驚きました。

――この機会に、福圓さんに聞いてみたいことはありますか?

紙屋 養成所に通われていた当時は、どんなことを意識されていましたか?
福圓 毎回の授業はオーディションだと思っていて、学ぶというより「すべてで結果を出したい」という気持ちでした。それが功を奏した部分もあるけど、若い頃はそんな風に思わず、もっと楽しく授業を受ければ良かったかなと思います。毎日緊張しすぎて肩肘張っていましたからね(笑)。それよりは軽い気持ちでトライ&エラーを繰り返して、たくさん失敗しておけばよかったかなって思います。
勝部 なかなか仕事が入らない時は、どんなことをされていましたか?
福圓 私も所属して1年くらいはバイトをしていましたが、仕事が入らない時は、映画や舞台を見るとか、ワークショップに行くとか、「何でもいいからやってみる」ことは大事ですね。それらがすぐ結果に結びつかなくても、後々何かの役に立つこともあるから。大事なのは歩みを止めないこと。変化しない人は魅力がないですから。「1年前の自分よりも変化していたらいいな」って気持ちだけ忘れなければ、何をやっても良い気がします。そして、何かをやるならとことんやった方が良いです。映画にしても、1か月に100本観てノートに作品の良かったことを書き出すとか。人がやらないことをやれば、その分、自分の身になりますから。

――最後に、これから声優を目指す人へメッセージをお願いします。

福圓 今お仕事されている声優さんみんな、この仕事がすごくすごく好きなんです。好きな人しか残らないんですよね。好きな気持ちってパワーがあるんだなって思います。最初は純粋に「好き」と思って勉強を始めても、養成所に入って人と比べられたり、「自分はできないな」と思ったりすると、好きな気持ちが分からなくなってしまうこともあるかもしれません。でも、どうか一番最初にときめいたり高揚した気持を忘れないでほしいなと思います。

やりたいことをやるという喜び楽しさを大切にしていってほしいです。