椎名へきる

【インタビュー】「『ゆずれない願い』は20代、30代の頃だったら歌えなかった」――椎名へきるセルフカバーアルバム『HARMONY STAR』

椎名へきる
今だからこそ歌うことができた、アニメ主題歌のカバー曲

――ボーナストラックとして90年代のアニメ主題歌が3曲収録されています。
そうなんです! 「ゆずれない願い」とか……。
――椎名さんが主人公の獅堂光を演じた『魔法騎士レイアース』の主題歌ということで、30年の時を経て椎名さんがこれを歌うというのが熱いですよね。
逆に今だからこそ歌わせていただけて、本当によかったなと。これを20代とかで歌おうと思っても、全然歌えなかったと思います。難易度的にもそうですし、(原曲を歌った)田村(直美)さんの偉大さが強すぎて。「ゆずれない願い」って、田村さんの歌声だけで形成されている部分もあるんですよね。節回しとか、歌い回しとか、普通に譜面だけ見て歌ってもああはならないんですよ。譜面に入っていない音がいっぱい入っているから。だから、田村さんのイメージを1回置いておいて、自分の中でもう一度整理するという作業が必要で、それは20代、30代では絶対できなかった。今だからある程度冷静に譜面も見られるし、自分の中のボディコントロールができるから、「こういうふうに歌いたい」と思えばその通りにできると思うんですけど、この偉大なヒットソングを自分の中で消化する作業はすごく重責だったなと思います。
――しかも、ファンの方からの期待値も大きいと思うので。
『魔法騎士レイアース』の光のイメージも皆さんの中では強いと思いますし、ただ、やっぱり光では歌えないので(笑)。光としてはちょっと歌えないので、どうしても椎名へきるにはなってしまうんですけど、私の中で人生を大きく変えた役柄であり、作品でもあるので、大切な思い出として入れておきたいなと思って、歌わせていただきました。
――「ブルーウォーター」にはどんな思い出がありますか?
私が高校1年くらいの時に『ふしぎの海のナディア』がTVで放送されていまして、そのときにずっと観ていて、本当にいい曲だなと思って口ずさんだりしていました。作品自体がとても面白くて、学校の先輩方とかも見ていらっしゃいましたし、話題でしたよね。いつかこの曲を歌いたいなという思いもあったんですけど、なかなか機会がなくて、今回「ブルーウォーター」を歌わせていただけないでしょうか?とお願いした次第です。
――実際に歌ってみて、いかがでしたか?
本当に光栄だったんですけど、これも原曲の森川(美穂)さんのイメージが強いんですよね。ちょっとハスキーな部分というか、あのイメージをどう自分の中で組み込んでいこうかなというのは悩みました。ただ、森川さんは比較的音符を丁寧に歌われていらっしゃる方なので、そういう意味では受け止め方がわかりやすかったですね。この「ブルーウォーター」という音楽に対して、作曲の井上ヨシマサさんの世界観をきちんと具現化されていらっしゃるんだなという解釈で受け止めました。であれば、自分は歌詞の内容を大切に歌っていこうと思って。
――TWO-MIXの「JUST COMMUNICATION」もカバーされています。
これは私の中でも胸熱なんですけれども、昔、文化放送で『SOMETHING DREAMS マルチメディアカウントダウン』という番組のパーソナリティを冨永みーなさんと二人でやらせていただいたんです。アニメソングのカウントダウン番組だったので、1週間に1000通くらいリクエストが来るわけですよ。当時、ハガキで段ボール何箱分も来て、それを番組スタッフが集計して1位から10位まで読み上げていく感じなんですけど、この「JUST COMMUNICATION」は10何週くらいずっとランクインして、常に上位に入っていたんです。私は1コーラスを聴いた後に「〇〇県××市、△△さんからのリクエスト、『JUST COMMUNICATION』。その他大勢の方からいただきました」という文を毎週読んでいて。……さすがに覚えますよね(笑)。
――それはそうですよね。
ものすごく印象深くて、いい曲だったなと。思い出としては、私が当時住んでいた最寄り駅のホームに立っていたときに隣にイヤホンをした若い女の子がいて、大音量で音楽を聴いているんですよ。何だろうな?と耳を傾けたら、それが「JUST COMMUNICATION」だったんです。それくらい一般の人にも広がってヒットした曲だったんですよね。で、この間『SHAMAN KING FLOWERS』で高山みなみさんに何度かお会いしたときに「ああ、そうだ。みなみさんTWO-MIXだ」と思って(笑)、もう一回聴きたいなという気持ちになりました。永野椎菜さんとも「しいなさん」つながりですし、歌わせていただけて本当によかったです。あらためて、いい曲だなと感じました。
――椎名さんと「JUST COMMUNICATION」にどういうつながりがあるのかなと思っていたんですけど、そんな思い出があったんですね。
20代からずっとラジオ番組をいろいろやらせていただいていて、ラジオと共にこの30年歩いてきたなと思っていて、ライブと同様にラジオに対する思いも1番組、1放送局ごとにあるんですよね。その当時の年代の記憶と一緒に。『マルチメディアカウントダウン』もそういう意味でとても大きかったので、この曲は私の「ラジオの青春」です。