【声優道】堀内賢雄さん「心の底から役に成りきる」

養成所を立ち上げたのは
より多くの人と関わりたかったから

僕がケンユウオフィスを立ち上げようと思ったきっかけは、12年ほど前に始めたワークショップなんです。僕は他人に教えるのはあまり得意じゃなかったので、古田信幸(※1)から「勉強会のつもりでやってみないか」と声をかけられて始めたんですが、教えているうちに情が移ってくるんですね。当時、僕自身はぷろだくしょんバオバブに所属していたんですが、最初から20年という契約になっていたので、契約期間が切れたらフリーでやっていこうと思っていたんです。でも、いざ独立することになったときに「ワークショップに来ていた人たちをどうにかできないだろうか」と思ったのがそもそもの始まりです。それで事務所を作ってみたんですが、事務所名がいけなかったのか、そのまま自分の名前からとったので「賢雄のことだから冗談だと思った」と信じてもらえなかったこともありました(笑)。

養成所にもそれぞれカラーがあって、なぜかうちにはほかの養成所に通ったけど芽が出なかったとか、さまざまな理由で挫折したっていう人が多いんですよ。声優として売れるか売れないかには、実力だけじゃなくて巡り合わせっていうのもあるんです。最初はみんなヒーローを演じたい、アイドルになりたいと思うものでしょうが、なれるのはほんの一握りじゃないですか。そうやって何年か養成所に通ってみて「自分にはできない」と気づいて挫折しても、やっぱり芝居がやりたいからとケンユウオフィス付属養成所に来るんですよ。それぞれの作品にはたくさんの脇役がいるし、脇役がいなければ作品として成り立たない。脇役でもいいから雑草のように根を張ってしっかりと作品を支えられる、息の長い活躍のできる役者を育てていけたらと思っています。僕自身、役者としてはまだまだ発展途中なんですが、「賢雄さんのような役者になりたいです」と言われるのはやっぱりうれしいですね。

※1:吉田信幸(1958-2017年)・・・声優。堀内賢雄と共にオフィス央(たてかべ和也が代表を務めていた事務所)に所属していた

才能が80%の世界だったとしても
残りの20%で巻き返すこともある

僕が演じる際に気を付けていることは、いかに台本を台本らしくなく読むか、です。これが、たった一言のセリフでも甘くないんですよ。いかに自然な言葉に聴かせるかが演技の基本なんだけど、そこに行き着くまでは何年もかかる。ただ、なかにはあっさりと自然な演技ができちゃう人もいるんです。そういう人に会うと、「やっぱり才能なのかな」と思います。もしかしたら役者というのは、80%が持って生まれた才能で決まってしまう世界なのかもしれませんが、面白いことに、決して天才型ではない人が残りの20%で巻き返すこともある。まるでウサギとカメの童話そっくりですね。

僕もベテランと呼ばれる域に入ってきたのか、年々演技力を試されるようなキャラクターを演じることが多くなってきたような気がします。どんなキャラクターであっても、ただセリフを声に出して読んで終わりというふうにはしたくないんです。やっぱり演じる前は緊張してぴりぴりもするんだけど、演じ終えると山を一つ乗り越えたような快感が味わえるんですよ。それを味わいたいがために生きているようなものですね。最近では『スイートプリキュア♪』のメフィストをやらせてもらえたのが印象に残っていますね。子供向けの作品なんだけど、キャラクターの一人ひとりにドラマがあって、演じ方でいくらでもキャラクター性を深めることができる。そういう作品に参加できたことがうれしいんです。

どうやったら演技がうまくなるかなんて、その人の内面の問題にも関わってきますから、具体的に「こうすればいい」なんて言えるものじゃありません。ただ、真面目すぎてもダメだし、不真面目ならもっとダメだし、演技力の前に滑舌や発声といった技術は当たり前のようにもってないとダメ。まずチャンスがあったら挑戦してみること。そして目標を高くもって、それに近づけるように試行錯誤しつつ努力していくこと。僕だって「いつかは玄田哲章を抜いてやる!」みたいに思いますよ。いや、抜けないんですけどね(笑)。そのくらい上を目指して頑張らない限り、成長なんてできないんです。僕にできるアドバイスなんて、このくらいですね。

(2011年インタビュー)

桜木学園癒やし部・2年B組 町々まどか