【声優道】冨永みーなさん「仕事が巡ってくる法則」

レギュラーの仕事の終わりは新しい仕事が入るチャンス

このお仕事を始めて45年になりますが、本当にありがたいことに、お仕事が途切れることがなかったんです。長寿番組のナレーションやアニメ作品に携わらせていただいていたからだと思います。1週間お仕事が一つもなかったことは、ここ40年ないんじゃないかな。

一つのお仕事が終わるときに「終わっちゃうんだ。春からどうなるんだろう?」と思うこともありました。でも、レポーターのお仕事や、モノマネ番組に出させていただいたり、新しいことにも挑戦していたので、ネガティブにならずに忙しくしていられたのかもしれません。ラジオ番組の企画で「こういうものをやってみよう」と考えて動いたりして、楽しんでいました。

それに、私の中には〝仕事が巡ってくる法則〟があるんです。仕事がいっぱいある人って、いい運気をもっているというか、イキイキしているんですよね。だから、逆にイキイキしていることを保っていれば大丈夫だって、思っています(笑)。

ちょっと考え方を変えれば、一つの仕事が終わってその時間が空いたら、そこには新しい仕事が入るチャンスが生まれるわけですよね。レギュラーの仕事が入っている時間帯には、新しい仕事は入れられないわけですから。それを20~30代で感じられるようになり、オーディションに落ちてもしょげなくなりました。空いたら「そこは新しい場所、白い場所」って思えるように自然に訓練されてきましたね。

「カツオできるか?」と聞かれて思わず「できません」と言った

声の仕事で大変なのは、体調管理かなって思います。今日も明日も元気じゃないといけないから。今思っているのは、「カツオくんには風邪を引かせられない」ということ。風邪を引いているお話ならいいんですけど、自分のせいで役の設定と違うことになるのは悔しいんです。

私がカツオくんをやらせていただくことになったきっかけをお話ししますと……まず『サザエさん』には、磯野家の隣のウキエさん役で出させていただきました。10年くらいやっていて、そのほかにも早川さんだったり、エレベーターガールだったり、いろんな役をやらせていただいていました。

ある日の収録後にディレクターさんから呼ばれて、「カツオできるか?」と聞かれたんです。その頃、カツオくん役の高橋和枝さんの具合が悪いのは存じ上げていましたし、「できます」なんて絶対言えないから、「できません」と言ったんです。でも「ちょっとやってみよう」と言われて、スタジオでその日のカツオくんのセリフを全部やりました。不思議な感覚でしたね。それまであまり男の子役をやっていなかったこともありますし。私は和枝さんのことが大好きで、その和枝さんが演じるカツオの素晴らしさを目のあたりにしていたので、どうしても和枝さんのカツオをなぞるような感じになってしまって……。どうしたらいいのかわからず、混乱しました。

結局、次の週から和枝さんが入院されて、ディレクターさんから「入院の間だけやってくれ」と言われてやることになりました。そのディレクターさんは役の演技という部分を大事にされている方だったので、「その方がやれと言うのだから、私にもできる可能性があるのかもしれない」と思いました。「自分でも違和感はあるけど仕方ない。申し訳ないけど、やらせていただこう」という思いでした。

そして、やるからには「和枝さんは、カツオに対して何を大切にしていたんだろう?」と、自分なりに考えてやりました。和枝さんには絶対に戻ってきていただきたかったのですが、それは叶わず、私が3代目カツオを名乗ることになってしまいました。和枝さんはベッドの上で「みーなちゃんならいい」って言ってくださったと聞いて、とてもうれしく心強かったです。

桜木学園癒やし部・2年B組 町々まどか