アミューズメントメディア総合学院オリジナルアニメCM『BLUE – l i n e・s t e p・b r u s h -』が公開! 監督:斉藤健吾 × 声優:黒木ほの香のスペシャル対談

「夢を諦めきれなかった若者たち」を描くオリジナルアニメーション

アミューズメントメディア総合学院(以下AMG)25周年を記念したアニメCM『BLUE – l i n e・s t e p・b r u s h -』は、同校の卒業生が中心となった制作された。ともにAMG出身であり、監督を務めた斉藤健吾さんと、アオイ役を演じた黒木ほの香さんに、作品の魅力と制作秘話を伺った。

 

■監督:斉藤健吾 × 声優:黒木ほの香 スペシャルインタビュー

――今回のアニメCMの監督を引き受けたいきさつを教えてください。

斉藤 コミケで知りあった中武さん(※1)から「学校のCMを作る企画があるので、キャラクターデザインと作画監督をお願いしたい」という連絡をもらったのがきっかけです。それから打ち合わせをしていくうちに、監督もどうですかと。僕は作画監督として原画を描いたりするのが本業ですから、監督業にはあまり興味がなかったのが本音で、最初は乗り気じゃなかったんです。でも、いろいろ考えるうちにこの作品でやりたいことが出てきて、もしそれをやらせてもらえるなら挑戦してみようかなと。

※1:中武哲也 『進撃の巨人』『甲鉄城のカバネリ』などを手掛けるプロデューサー(2000年AMG卒)

――そこから企画のストーリーを考えたのですか?

斉藤 中武さん、岸本さん(※2)と3人でモツ焼きを食べながら話しました(笑)。どんな方向性にするかをざっくりと考えた結果、ストーリーがあるものでやりたいなと。テーマは僕自身も経験がある「夢を諦めきれなかった若者たち」。キャラクターが3人いて、みんなバラバラのストーリーだけど、大きな流れとして同じ方向を向いていくような作品にしたいと話しました。

※2:岸本卓 『ハイキュー!!』『僕だけがいない街』などを手がける脚本家

――キャストはどのように選考したのでしょうか?

斉藤 まずはAMGのほうで卒業生を何人かピックアップしてもらいました。その後、音響監督から「自然な生の演技ができる人がほしい」とオファーをさせていただき、アオイ役に黒木さんを選ばせてもらいました。
黒木 ありがとうございます。アオイはどういう性格の女の子なのか知らされていなかったので、イラストを見て、わりとかわいらしいイメージで作っていきました。台本を読んで映像を観て「こういう子なのかな」と想像しながら演じたところ、「かわいい要素は少なめでいい。もうちょっとナチュラルな感じで」といった指示をいただきながら何度かトライして今の形に落ち着きました。キャラクター3人とも漠然とした不安を抱えながら日常をこなしている印象で、どういうアプローチでお芝居を作っていくのかが難しかったです。台本と映像だけだと、どういう考えを持った子なのかが見えにくくて。でも、だからこそ作品を見た人たちが自分に当てはめやすいのかなとも思いました。
斉藤 そういった普遍性は意識して作っています。ツバサは童顔だけど22歳くらいの設定です。全員を高校生にしなくてもいいんじゃないかなと思ったので。
黒木 制服、着ていないですもんね。
斉藤 実際、僕がAMGに通っているときも、30歳くらいでアニメーターを目指している人もいましたから。

――制作の過程で、特に大変だったことは?

斉藤 絵コンテを描くのが一番辛かったです。1分半の作品ですが、TVアニメのような長尺のカットをあまり使わなかったんですよ。まず曲が決まっていて、その曲のテンポに合わせていくので、長くても1カット2~3秒。TVアニメだと30分で300カットが平均ですが、今回のCMは1分半で70カットくらいあったので、これは苦しかった。もうやりたくないなと(笑)。
黒木 さまざまな方々が関わっていて、しかも1年も前から動いてきたプロジェクトです。そんな大切な作品に私たちは最後に声を吹き込むわけなので、それまで積み上げてきた作品の雰囲気や完成度を壊さないようにすることがプレッシャーでした。アオイちゃんの「青いな」というセリフで本編が終わりますが、その一言がいちばん苦労しました。20テイクくらい録り直したかもしれません。ここをカッコよく決めないとCMの格が下がってしまうので。

――完成したCMを見たときの感想は?

斉藤 うまくできたところもできなかったところもあるのですが、それはそれでいいと思っています。僕自身、挑戦でしたから。制作の途中で妻に「こういう感じのCMなんだ。話も青臭くてね」と話したら「いいんじゃないの、それで」って。初めてですから、青臭くていいんじゃないかと。自分のできることを精一杯やれましたし。最後のセリフも、もともとは「青臭いなあ」だったんです。
黒木 そうだったんですね。
斉藤 最終的には「青いな」だけにしました。空が青いこと、そして“自分が青い”という意味もあります。
黒木 私は、もう完璧な作品だなと思いました。まず絵が魅力的でとてもきれいなんです。ローファーのつややかな感じとか、髪が水に濡れた感じとか、瞳に映る東京タワーのちょっと揺れている感じを見て「すごい! めちゃめちゃ気合い入ってる! 熱の高いものができてる!」と感じました。アンダーグラフさんが手掛けた曲「イキル」に合わせてリズミカルにカットが変わる感じや、最初はうつむきがちだった3人が「夢を追いかけたい」と言葉にしてから明るく開けていく感じ、そして赤信号が青に変わったり、ドアが開いたり……。そういうところがすごく計算されていて感動しました。
斉藤 わかってくれて、すごくうれしいなあ。
黒木 何となくやりたいことはあるけど、いまいち一歩が踏み出せないという人たちに、このCMはめちゃめちゃ刺さると思います。そして、そういう人たちがこの業界に入ってこられるように背中を押せるCMになっていると感じました。

――オンエア後、反響はいかがですか?

黒木 ファンの方は「母校のCMに出るなんてすごい」「期待の星ですね」と言ってくださり、すごくありがたいです。期待の星は言いすぎですけど(笑)。このCMに出ることを母に知らせたら「あんた、AMGの顔やん。認められてるってことやん!」というメッセージが届いて、実際にCMを見た後には「ナチュラルで透明感あって、めっちゃ良い芝居してるやん!」と(笑)。母は頑張って私をAMGに入れてくれたので嬉しかったです。

――お二人とも卒業生ですが、母校のCM制作に関わることについては?

黒木 出演が決まったときは、すごいことになったなと責任を感じました。卒業生の方々が作り上げる作品のキャストに私を選んでいただけたわけですから「期待に応えたい。やってやるぜ!」と、気持ちが盛り上がりましたね。
斉藤 僕は母校のCMだからと言って、そこまでテンションが上がることはなく(笑)、あくまでも仕事の一つとして作りました。ただ、監督をやることになってからは、プレッシャーというか……どんなものを作り上げればいろんな人に見てもらえるだろう? 何を伝えられるだろう? ということをすごく考えた気がします。
黒木 今でもAMGのOBとは連絡を取り合ったりしています。現場で初対面の人でも、AMG同士で話すことはよくありますし。
斉藤 僕らクリエイターも、卒業生同士で仕事をお願いしたりしています。今回のCMでも、アオイが髪を束ねたりタツヤが走っていたりするシーンは、同期の人たちに手伝ってもらいました。

――これからAMGに入ってくる後輩に向けて、メッセージをお願いします。

斉藤 自分の好きなことを見つけてほしいですね。アニメーターになるなら絵を描くことはもちろん、描く以外にも好きなことをやっておくと、描く上でも説得力が増すし、絵の質がすごく上がるので。僕自身も絵がうまくなってきたと思えたのがここ3年くらいですが、ずっと描き続けてきたことに加え、自分の好きなことを見つめる時間が大切だったのかなと感じています。そして、今回監督をやっていくうちにやりたいことがいろいろと出てきたので、今はまた監督をやってみたいと思っています。絵コンテはちょっとやりたくないけど(笑)。
黒木 好きなことを突き詰めるのも大事だけど、今まであまり触れてこなかったことや興味がもてなかったことにも積極的にアプローチして知ろうとする姿勢が大事です。特に声優を目指すなら、自分が得たものが将来何の役に立つかわからないですから。それは、卒業して現場に出てから思ったりするものかもしれません。AMGで学んで役に立ったことは「台本を大切にするけど、大切にしない」ということ。つまり、台本に書いてあることだけを表現していてはダメで、書かれていないことも自分で見つけたり作り出したりして表現していくべきだなと。それが正解になるかはわかりませんが、そういう練習をしておかないと、いざ現場に出たときに対応できません。また、学生の間はいろんなことに挑戦して、失敗して学ぶことも大切だと思います。皆さん、頑張ってください!

 

■プロフィール


斉藤健吾
さいとうけんご●8月10日生まれ。『異能バトルは異世界の中で』『SSSS.GRIDMAN』『Fate/Grand Order 絶対魔獣戦線バビロニア』など数々の人気作品で作画監督を務める今注目のアニメーターの一人。現在は、2020年1月に立ち上がったアニメ制作会社「Yostar Pictures」の取締役に就任している。


黒木ほの香
くろきほのか●10月21日生まれ。大阪府出身。スターダストプロモーション所属。主な出演作は、アニメ『八十亀ちゃんかんさつにっき 2さつめ』(一天前紫春)、『ひとりぼっちの○○生活』(栗枝衣抄)、『セントールの悩み』(犬養未散)、ゲーム『アイドルマスター シャイニーカラーズ』(大崎甘奈)、『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』(リヴィア・メディロス)ほか。

AMGオリジナルアニメーション『BLUE – l i n e・s t e p・b r u s h -』

壁にぶつかり、苦しみ悩む3人。アオイ、タツヤ、ツバサがそれぞれの場所で、 新しい自分探しのため走り出す、オムニバス形式のショートストーリー。

プロデューサーに『進撃の巨人』『甲鉄城のカバネリ』などのヒット作を手掛ける中武哲也(2000年AMG卒)をはじめ、作画監督には『プロメア ガロ編(作画監督)』『SSSS. GRIDMAN(総作画監督)』などで知られる人気アニメーター・斉藤健吾(2009年卒)を起用。キャラクターデザインはVOCALOID初音ミク関連の商品イラストを担当するなど、多方面で活躍中のU35(ウミコ/2011年卒)が担当。脚本は『ハイキュー!!』『僕だけがいない街』などの話題作を手がける気鋭の脚本家・岸本卓。楽曲「イキル」は、2004 年に「ツバサ」でメジャーデビューを果たし、『弱虫ペダル』のED 曲「風を呼べ」など数々のヒット曲を世に送り出したアンダーグラフが担当している。声の出演は、アオイ(黒木ほの香/2017年AMG卒)、ツバサ(柿原徹也/2003年AMG卒)、タツヤ(土岐隼一/2014年AMG卒)。

https://www.amgakuin.co.jp/contents/special/blue/

■アミューズメントメディア総合学院
http://www.AMGakuin.co.jp/

独自のシステムにより、在学中からゲーム、アニメ、イラスト、小説などのコンテンツを作ることができ、それを商品として市場に送り出すことも可能。通常のレッスンのほかに公演、学内イベントなどの機会も多く、また充実のインターンシップ制度により在学中からプロの仕事を経験することもできる。声優学科からは、柿原徹也さん、羽多野渉さん、伊藤かな恵さん、芹澤優さん、小林裕介さん、加藤英美里さんら、多くの卒業生を輩出している。