林原めぐみ

【声グラ限定】『SHAMAN KING』のOP・EDテーマを歌う林原めぐみさんが語る制作秘話

林原めぐみ

この4月から、約20年ぶりに完全新作として展開しているTVアニメ『SHAMAN KING』。主題歌を歌うのは、恐山アンナとしても出演する林原めぐみさん。疾走感あふれるOPテーマ「Soul salvation」、音声合成ソフトを使ったように聞こえるデジタルサウンドなEDテーマ「#ボクノユビサキ」。それぞれの曲の制作秘話を中心に、たっぷりとお話を伺いました

越えなきゃと思っているときは越えられない。越えることを辞めた時に、本当の意味で越えられる

――OPテーマの「Soul salvation」は、作詞:MEGUMI 作曲・編曲:たかはしごうさん。2000年版『シャーマンキング』OPテーマ「Over Soul」と同じ布陣です。
今回の『SHAMAN KING』は、あくまで“新作”という捉え方をしています。だから曲についても「かつての楽曲の影を追わない道」と「20年前から好きでいてくれる人に対するリスペクトを残す道」という、二つの方法がありました。楽曲をコンペにしたところ、力強い曲や真新しい曲など、たくさんの曲が200曲ほど集まったみたいです。私はある程度厳選されたものを聞きましたけど。ただ、どの曲もどこか「Over Soul」を追いかけているように感じてしまって。それだと意味がないなと決めかねていたところに、たかはしごうさんが「Soul salvation」のデモを上げてきてくれたんです。それを聴いたとき「ああ、これしかないな」と。「Over Soul」でも「Northern lights」(2000年版の後期OPテーマ)でもない。とにかく今の『SHAMAN KING』の歌だと思えたので、この曲に決めました。それで「詞はどうする?」ってなって「私? そうだよね」という流れです(笑)。

──詞はすぐに出来上がったのでしょうか?
「Over Soul」を越えなければいけないという気持ちが自分を縛りつけていたのか、今回、歌詞がなかなか湧きませんでした。デモを作ってくれた方たちが「Over Soul」の面影を追いかけていたように、私自身も知らず知らずのうちに追いかけてしまっていたみたいです。今はSNSの時代ですし、皆さん思ったことをダイレクトに発言されます。エゴサーチをしなくても、なにかしら、どこからか情報が入ってきてしまうことがあって。気にしていないつもりでも「みんなの期待に応えられるだろうか」と、うっすらその影におびえていたのかもしれません。原作を読み直しても「この言葉、もらおうかなと」といったあさましい読み方をしてしまっていて、「これは作詞じゃないな」と思いとどまったりして。もちろん結果として作品と同じ言葉が入ることはあって良いと思っています。でもこれではいけないなと。

──難産だったんですね。なにか突破口となった出来事はあったのでしょうか?
変に思うかもしれませんが、自粛期間中にYouTubeを通じてスライム作りに出会ったことが大きかったですね。100均の洗濯のりと薬局にあるホウ砂であのスライムを簡単に作れることを知り「ちょっとやってみようかなと」と軽い気持ちで試してみたところ、すごく面白かったんですよ。食紅を何滴か垂らすだけで真っ赤になったりピンクになったり、一瞬で世界がガラッと変わる。そんな部分が、どこかお芝居にもつながるように感じました。

──まさかのスライム作りがきっかけだったんですね。
私は常に透明な状態でいるけど、そこにブルーが入って綾波レイになったり、赤が入ったらリナ=インバースになったりする。そういったことを考えながら、色が変わる様子や手触りを感じているのが心地良かった。そんなときにふと、誰に頼まれるでもなく「神様ってこんなふうに人間をつくったのかな…」なんて思ったら「あれ?誰に頼まれたわけでもなく?」「あれあれ?私はやりたくて『SHAMAN KING』の歌をやっているんだよね」なんで誰かに命令されたかのような気持ちになっていたんだろうと、解放されちゃったんです。そうしたらいきなり、1番の歌詞ができたんです。「越えなきゃ」と思っていたときには使えなかった<越えて行こう>という言葉を冒頭に置いて。越えなきゃと思っているときは越えられない。越えることを辞めた時に、本当の意味で越えられるんだ──と。そこで一つ自由を手に入れて、あとは作品のことを考えながら作っていきました。この気づきは、もうすでにシャーマンキングなわけです。

――2番にはまた違った思いがあるように感じていますが、いかがでしょうか?
キャラクターの顔を色濃く意識したのが1番で、2番は20年ぶりに息を吹き返さなければならなかった意味を今一度考えて、20年前にはなかったものを目の当たりにしている子どもたちに向けて書きました。今の子どもたちは見るつもりのない情報に触れることも多いと思うんですよ。例えば好きな芸能人が結婚したと思ったら浮気をして叩かれて……。それこそ世の中から抹消されるようなやり口で叩かれる。深い愛だと思っていたはずが、一瞬で裏切りに姿を変えて、それがことさら大きく報道されてしまう。もちろん浮気を肯定するわけではありませんが、あくまで家族間の問題ですし、報道されている時点で十分な鉄槌じゃないかなって思うんです。日頃からそういった情報や話題に触れていると、人を好きになる気持ちそのものもどこかで信じられなくなってしまう気がして。例えばお父さんが仕事で帰宅が遅かっただけで不安になっちゃうことがあるかもしれないし、今の子供たちは他人と連絡が取りやすい分、例えば自分だけ入っていないSNSのグループがあるとか、友情もちゃんと確かめないのに、壊れやすい状況もあると思うんですよね。

──そのお話を伺うと2番の歌詞<つちかった友情さえ些細な誤解で亀裂を生み出す でも乗り越えて絆となれば揺らがない>という言葉が染みます。
『SHERMAN KING』のテーマは多岐にわたりますが、根底にあるのは“信じる気持ち”。そして、この作品は単なる勝ち負けではない人間ドラマなんです。勝ち進むだけのゲームじゃない、負けは終わりじゃない。たとえ裏切られても、その裏切りには何か理由があったんだろうと受け止め、さらに先の絆を目指す。負けからも裏切りからも学びがあるところが、この作品のすごいところだと思います。「Soul salvation」の日本語訳は“魂の救済”。今の子供たちの気持ちをほんの少しでもすくい上げられたらいいなと。すぐに歌詞の意味が分からなくてもいい。何話か見終わったときでも10年後でも、「ああいう意味だったのか」と染みるような歌になっていればいいなと思っています。

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言霊ってきっとあると思うので、ぜひ若い方たちには“歌ってみた”をやっていただいて楽しんでもらえたら

──EDテーマ「#ボクノユビサキ」は、音声合成ソフト風の歌声が印象的なデジタルナンバーです。
「Soul salvation」はオールドファンに対してのリスペクトや感謝も含んだ楽曲でしたが、エンディングは今の子供たちが親しみやすい曲にしたいなと思って作りました。自分でいろんな曲を聴いてみたり人に話を聞いてみたりして思ったのは、ボーカロイドの楽曲はアーティスト不在の分、余計な情報が入らないので、聴いている人の心にダイレクトに響くのかもしれないということでした。また、生身の人間では再現できない音の高低差、曲の速さなんかもアドレナリン的な刺激になっているかもしれないですよね。例えば昭和の時代に作られた歌が心で味わって脳に染みていくのであれば、ボーカロイドの曲は脳にダイレクトに響いてじわじわ心に下がってくるのかもしれない。「なんと危うく人を魅了する世界なんだろう」と。それがシャーマンの世界観にもリンクしているような気がして、こういうテイストも良いよねと思いました。作曲・編曲を手掛けてくれた要田健さんは元々そういう曲を作る専門の方ではないのですが、「それは面白いですね」と言ってくださり、この形になりました。

──早口パートのあとのクライマックスでは林原さんの肉声混じりの歌声も入っています。
音声合成ソフトの声をずっと聴いていると、疲れると同時に心がもっていかれて“憑かれる”と思ったんです。だからこそ「一回自分が人間だということを思い出してほしい」という願いを込めつつ、最後の部分は林原めぐみの声と音声合成ソフト風の私の歌声をミックスという形にしました。どちらも私の声ではありますが(笑)。言霊ってきっとあると思うので、ぜひ若い方たちには“歌ってみた”をやっていただいて楽しんでもらえたらと思います。口で真似して身体に染みこんできたときに、優しい気持ちになれるような歌詞になっていると思いますし、歌としてはAIっぽい感じがする反面、すごく人間らしい曲に仕上がっています。

──恐山アンナを彷彿とさせる、鮮やかな赤いジャケットも印象的です。
先日発売されたベストアルバム『VINTAGE DENIM』は青でしたが、今作は赤。カラコンにもこだわって、より赤みが強いものを選びました。「Over Soul」では、イメージを投影したいという意味でアンナに近い衣装を着ていましたけど、今作ではアンナのイメージを残しながらも、できるだけ私を隠してほしいとデザイナーさんにお伝えしました。どんなに隠しても隠し切れない芯の強さ、埋もれない強さをテーマにしています。ちょっと難しい要求かなとも思いましたが、デザインを担当してくれた2名の女性がシャーマンの大ファンだったこともあり、すごく話が早かったです(笑)。また、演奏してくれた皆さんもシャーマンのファンで、かつての少年が漏れ出ちゃって、みんな目の中にハートと星が入っているのが見えるほど、尋常じゃない迫力で演奏してくれました。手がちぎれんばかりの勢いでドラムを叩いてくれたり、みんなすごかった(笑)。

──近著『林原めぐみのぜんぶキャラから教わった 今を生き抜く力』(KADOKAWA 刊)でも恐山アンナについて語られています。時代を越えて変わらず愛され続けるキャラクターたちは、林原さんにとってもファンにとっても宝物ですね。
SNSや音楽配信が出てきて、これからもきっといろんなことがどんどん変わっていく。歴史書というわけじゃないけど、「こういう作り方、文化がありました。そしてアニメを飛び出して私生活にダイレクトに役に立ちあれこれが沢山ありました」というのを伝えられたらいいなと。こうやって本に残せただけでも幸せだなと思っています。「Soul salvation」ともども、良かったらこちらも手にとってみてください。

取材・文/逆井マリ

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■林原めぐみニューシングル「Soul salvation」

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M1「Soul salvation」作詞:MEGUMI 作曲・編曲:たかはしごう
(TVアニメ『SHAMAN KING』オープニングテーマ)

M2「#ボクノユビサキ」作詞:MEGUMI 作曲・編曲:要田 健
(TVアニメ『SHAMAN KING』エンディングテーマ)

M3「Soul salvation」off vocal ver.
M4「#ボクノユビサキ」off vocal ver.

価格:¥1,320(税込)
発売中

初回製造分のみデジパック仕様
(ジャケ写表:アーティスト写真/ジャケット裏:原作者・武井宏之描き下ろしイラスト)

▼林原めぐみ公式サイト「MEGUMI HOUSE」:http://king-cr.jp/artist/hayashi/
▼TVアニメ『SHAMAN KING』公式サイト:https://shamanking-project.com/