伊駒ゆりえ

伊駒ゆりえ「みなさんに元気をお届けしたい。きれいごとじゃなくて、本当に思ってます」【声優図鑑 by 声優グランプリ】

伊駒ゆりえ

キャラクターの裏に隠された声優たちの素顔に迫る、インタビュー企画『声優図鑑 by声優グランプリ』。

今回登場するのは、TVアニメ『【推しの子】』のルビー役などを演じる伊駒ゆりえさん。小さな頃から芝居やエンタメに触れてきた歴史を振り返りながら、スクール時代の思い出、声優としてやり遂げたいことなどをお話していただきました。

伊駒ゆりえ

伊駒ゆりえ
いごまゆりえ●2月24日生まれ。東京都出身。81プロデュース所属。主な出演作は、アニメ『【推しの子】』(ルビー/星野瑠美衣)、『異世界はスマートフォンとともに。2』(スラス)、『メガトン級ムサシ』(オペレーター)ほか。

オフィシャルサイト:https://www.81produce.co.jp/
Twitter:https://twitter.com/igoma_y

★伊駒さんの手書きプロフィール公開中!
https://ch.nicovideo.jp/seigura/blomaga/ar2160482

人生の先輩はミッキーマウスさん

――小学生のときに見た学芸会で、お芝居に興味を持ったそうですね。
はい。小学2年生のとき、6年生がやっていた演劇がすごくかっこよくて、私も6年生になったら主役をやりたいなって。実際に6年生で主役を演じたとき、お芝居の楽しさに気づきました。その時は役者や声優になりたいと思っていたわけではないのですが、将来お芝居に関わるお仕事ができたらいいなってぼんやり思っていました。

――お芝居のどんなところに惹かれたんですか?
他の人間になれるなんて面白いなって小学2年生ながらに衝撃を受けました。その頃の自分に会ったら伝えたいですね、声優になったら、それこそ動物や無機物にもなれるんだよって。

――ステージに立って脚光を浴びたとき、どんな気持ちだったんでしょう。
ひとりでステージの真ん中に立って手を振り、別れを告げる……というシーンがあって。自分じゃない誰かを表現して、見ている方たちから楽しんでもらえたという、しびれるような感覚はすごく覚えています。

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――他では得られない感覚でしょうね。ディズニー作品も子どもの頃から好きだったとか。
毎年、家族旅行みたいな形で行く機会があったので、ずっと好きですね。人を楽しませるエンターテイメントとして、私にとって人生の先輩はミッキーマウスさんだし、尊敬する人はウォルト・ディズニーさんなんですよ。

――ミッキーマウスが「好き」というより「人生の先輩」なんですね!?
勝手にですけど(笑)。楽しむために来ている人でいっぱいになった、あの空間がすごく好きで。ひとりでベンチに3時間くらい座って、みんなが笑いながら歩く姿とか、ショーを楽しみに待つ姿を眺めていることもあります。

――声のお仕事に携わりたいと思ったきっかけは?
パークの中にいると、アトラクションの案内の声とか、いろんな声が聴こえるんですよ。「そのアトラクションや物語の中で、こういう立場の人なのかな〜」っていうのがわかる、役割を持った声が印象的で。「あ、これやってみたいな」って直感だったと思います。いつかパークの中から自分の声が聴こえてくるようなお仕事をしたいなって思いました。

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濃密な専門学校時代。ずっとメラメラしてました

――それから、アミューズメントメディア総合学院に入学を。
声優になろうって思った3日後には専門学校にいました。「絶対受かってこの道に進む!」と勝手に思いながら。受からなかったらどうしてたんですかね。それを考えると怖いです(笑)。無計画も甚だしいですけど、この勢いの良さは自分でも好きなところなので、いい意味で活かしていきたいと思います。

――勢いは大事ですよね。専門学校ではどんなことを学びましたか?
声のお仕事もやっぱり人と人との関わりが大事なんだな、ということです。私が通っていたのは週に一回のクラスで、社会人の方もいたし、年齢もさまざま。育ってきた環境が違う人たちと一緒に学んで、コミュニケーションを通して人となりを知っていくのは興味深いことでしたね。それは今でも、ものすごく感じることですけど。

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――そのときの学びが今につながっているんですね。
いろんな人がいるなかで作品が出来上がっていると思うので。相手がどんな人なのか興味を持って、年齢関係なくいっぱい話したいなって思ってました。私、まったく人見知りしないんです。でも、相手は人見知りするかもしれないから、その距離感は大事にしていました。

――充実した学校生活だったことが伝わってきます。
めちゃめちゃ充実してました。良いことも反省することも、これだけたくさんのことが一気に自分に降りかかることはこの先ないだろうって思えるくらい、濃密でした。自分で進みたい道を決め、学費も自分で払っていましたし、家族にもあらゆる場面で助けてもらっていたので、「それ以上のものを絶対に持って帰りたい!」という気持ちで、ずっとメラメラしてたなって。

その気持ちは今の活動にもつながっていて。応援してくださる皆さまに、どうにかして、何か一つでも元気になれるものをお届けしたいなって。きれいごとに聞こえるかもしれませんが、本当に思ってます……。いやもう、ウォルト・ディズニーさんが私の先生なので。私、“ひとりディズニーランド”みたいになりたくて…!

ルビーちゃんになりたくて震えが止まらなかった

――『推しの子』のルビー役は、TVアニメの初レギュラーだったそうですね。
事務所に所属してから最初に受けたアニメのオーディションでした。テープオーディションのあとにスタジオオーディションを……という流れで、勝手が何もわからない状態で受けていました。

――オーディションでは原作者の赤坂アカさんたちから「本物ルビーが来た」と言われていたとか。
本当にありがたいです。原作の大ファンで、アニメ化されたらルビーちゃんを演じたいってずっと前から思っていたので。もしかしたらルビーちゃんに選んでいただけるかもしれないという場所で、自分の可能性を見てもらえることが嬉しかったですし、心の余裕もお芝居の余裕もないから、とにかく楽しむしかないなと。やれるだけやったら悔いなく帰ろうっていう前向きな気持ちでした。

――役を勝ち取るかどうかは別として、伊駒さんにとっては長年夢見た舞台だったんですね。
はい。私、あたふたしてしまうので緊張しているように見られるんですけど、心の中ではすごく楽しんでいて。でも、その場から解放されたときはすごかったです。帰りの駅まで歩きながら、震えが止まらなくて。もう絶対にルビーちゃんになりたくて! 別の人がルビーちゃんを演じるなんて絶対に嫌だ! って。負けず嫌いですね(笑)。

――ルビーへの強い想いが伝わってきます。ルビーの魅力はどんなところですか?
原作を読んだときは、自分に近い存在だなって勝手に思っていた部分はあって。アニメの10話にも出てくる「こけて当たり前、楽しく挑もうよ」ってセリフがものすごく好きで、何回も原作のその場面を読んでオーディションに挑みましたし、収録が行われていた期間も何回も見返しました。ルビーちゃんみたいになりたいっていう憧れなのかもしれません。

ルビーちゃんは本当にいい子なんです……! やると決めたときの気持ちの強さや行動力も、素敵なところ。それがプラスに働くこともあれば、逆に道が逸れちゃうこともありますけど。それをひっくるめて、あれだけ真摯に、まっすぐに突き進めるなんて、素敵だなと思いますね。

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――こうしてお話していると、そういう一面は伊駒さんとかぶるところがあるような気がします。初めてのキャラソンはどうでしたか?
ちょうどアイ役の高橋李依さんとご飯に行かせていただいたとき、次の日に李依さんのキャラソンの収録があることをうかがって。可能であれば現場を見学させてもらえないかと、その場で李依さんに相談したんです。ありがたいことに、李依さんが歌に向き合う姿を間近で見学させていただきました。

アイはルビーちゃんにとっても、ずっと近くで見て、憧れて、音楽を聴いてきた存在。収録前に李依さんが歌うアイの歌を聞けたことは、すごくいい経験だったと思います。

――収録でも、よりルビーちゃんの気持ちに寄り添うことができたのでは?
そうですね。ルビーちゃんは歌があまり得意ではない設定ですけど、私のなかでは、上手じゃなくても、気持ちを120%届けようとするのがルビーちゃんの歌唱。練習もきっといっぱいしたと思うんです。ファンのことをすごく考える子だし、アイドルとしての気持ちが強いので。それを自分で表現できるのか不安はずっとありましたけど、とにかく届いてほしい、届けなきゃって思いながら、歌を通してルビーちゃんの気持ちを120%伝えることを、収録ではずっと考えていました。

――アニメは1話放送後から爆発的な人気になりました。伊駒さんはこの作品のどんなところが面白いと思いましたか?
いろいろな面白さが詰まっている作品ですね。私が印象的だったのは、目の中の輝きです。宇宙が入っているみたいだなと思って。あの目の表現が映像になって、さらに音楽が入って……。
色彩もすごいんです。観てくださった方ならきっとわかってくださると思いますが、たとえば1話でアイとルビーちゃんが踊るシーン。原作では見開き1ページの場面だったんです。そこからも伝わる情報と感情が多くて、考えさせられる余白がありましたし、アニメーションでは、キャラクターはこの場所で生きてるんだなっていう、原作とはまた違った感情が押し寄せてきました。あんなに絵がいきいきと動いてくれるなんて。

――その評判を受け、すでにTVアニメ第2期も決まっていますね。
ものすごく嬉しいですし、私は原作ファンでもあるので、2期をしてもらわないと困るって思っていました(笑)。観ていただきたい場面がいっぱいあるし、この場面に動きと声がついたらどうなるんだろうとか、ルビーちゃんの成長も楽しみ。1期とは違ったところに焦点があたっていくと思うので、ファンとしても楽しみです!

伊駒ゆりえ

自分がもらった倍以上のハッピーをみなさんに

――最近の休日はどんなふうに過ごしていますか?
私本当にディズニーのことばかり考えていて……(笑)。

――では、ディズニーのお話を! 最近の楽しみ方について教えてください。
パークフードが好きなんですよ。限定のフードが出たりとか、ずっと好きだったのになくなってしまって復活してくれないかな〜って思ってるメニューがあったりとか、それぞれに思い入れがあるのが好きなところで。
最近は「ミッキーロングパン」っていうミッキーの形をした長いパンが気になってます。大人気で、朝早くから整理券をもらえないと買えない超レアなパンなので、全然買えなくて。金太郎飴みたいに切って食べたいな〜とずっと思ってたら、同期の子が買ってきてくれたんですよ!

――やっと食べられたんですね。
はい。同期、ありがとう! って思いました。この間は、お仕事が終わってから、その足で舞浜に行き、とりあえずご飯を食べたいなと思ってディズニーシーに入り、ギョウザドッグとビールをいただきました。あんまりお酒飲めないんですけど、あの空間でいただくギョウザドッグとビールが私は好きで。そのあと、予約していたレストランに入って、ひとりでパスタとピザを。

伊駒ゆりえ

――いろいろ食べるんですね。
はい。フードファイト並みに(笑)。おうちにいる時もホームページを見ながら、ここで限定フードを食べて、こういうふうに回って、次はこっちの店でご飯を食べて、スーベニア(フードに付くグッズ)をもらって……と計画を立てているうちに休日が終わっちゃいます。
外周を散歩しに行くこともあります。私、海を見るのも好きで。右手にパーク、左手に海を眺めながら歩くと、パークの中から音が聴こえるし、ポップコーンの香りもするんですよ。こんなことやってると、1日24時間じゃ足りないですね。困っちゃう困っちゃう!

――これから声優として、どんなことをしていきたいですか?
自分の命が消える3秒前までマイク前に立っていたいです。お芝居が本当に楽しいし、お仕事で関わるみなさんが本当に魅力的で、そういう環境のなかでいろいろ学びたいです。それに、自分の表現を通してみなさんの人生が少しでも明るくなる、楽しくなるひとときをお届けしたいというのは、小学2年生から変わらない目標。自分がエンタメからもらった倍以上のハッピーを、みなさんにお届けできたらなって思います。

伊駒ゆりえ

【声優図鑑】伊駒ゆりえさんのコメント動画

次回の「声優図鑑」をお楽しみに!

撮影=石田潤、取材・文=吉田あき、制作・キャスティング協力=吉村尚紀「オブジェクト」

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