自分の直感は信じています
──2曲目、「群青Dreaming」はかなり大人っぽい楽曲。攻めましたね!
攻めてます!(笑) 歌詞を見たときに「これは私が歌っていいんですか!?」って思いました。どうアプローチしようかかなり考え、自分が思う、大人っぽいアーティストさんの曲を聴いて、イメージを固めて。
──富田さんが思う大人っぽいアーティストというと?
母は車で音楽をよく聴く人だったんです。だから私自身、小さい頃から聴いていたアーティストさんの曲をよく聴いていて。例えば倖田來未さんとか、宇多田ヒカルさんとか。個人的に語尾の処理の仕方が「大人っぽいなあ」と思うのは椎名林檎さんです。あらためて皆さんの曲を聴きながら、私なりに「大人の女性ってなんだろう?」って考えていました。
──富田さんが考える「大人っぽい女性像」というのは、今の富田さんの等身大というよりはもう少しだけ背伸びした印象ですか?
そうです! 成人していたときに考えていた23歳って、ビジュアル的にも、精神的にも、もっと大人のお姉さんになってる予定だったんです。でもあんまり変わってなくて(笑)。倖田來未さん、椎名林檎さんのような大人の女性像って、これからもっと年齢を重ねて、自分なりの大人っぽさを手に入れたあとに出せる色気や女性らしさのような気がしています。『Prologue』のときは等身大の自分を届けていたんですけど、今回は20代前半だからこそ出せる色気、大人っぽさを切り取りたいなと思っていました。だからちょっと背伸びはするんですけど、大きく背伸びしないようにと意識していました。
──そのバランスが絶妙ですよね。今の富田さんだからこその表現になっている。
それはすごく大事にしています。感覚的に、歌って写真にも似ているような気がしているんです。写真って今の等身大を切り取ったものじゃないですか。歌も写真と一緒で、“今”を切り取れるものだと思っていて。だから踏み込んで、先に先に、と行き急ぐよりも、今できるものを残したアルバムにしたいなと。自分的にも、聴いてくれる人にとっても、思い出になるんじゃないかなと考えています。
──また、「群青Dreaming」の“直感で分かるの”って言葉は、なんだか富田さんらしいなと。直感をいつも大切にされていますよね。
「群青Dreaming」の言葉は“女の勘”というニュアンスではありますが、実際曲選びはいつも直感なんです。候補曲は毎回繰り返し聴いて、いつも「どうしようかな」と迷うんですけど、結果1曲目に聴いて良かったものを選んでいる気がします。これは声優の仕事にも言えることです。年間何十本とオーディションを受ける中で、稀に「あ、この子!」と思うことがあります。そう思うときは受かることが多いんです。そういうこともあって自分の直感は信じていますね。
──3曲目「Catcher」は『錆喰いビスコ』の音楽を担当されていた椿山日南子さんが楽曲を手がけられていますね。
そうなんです! 念願叶ってご一緒できることになりました。『錆喰いビスコ』のエンディング「咆哮」(ビスコ(鈴木崚汰)&ミロ(花江夏樹))をオンエアーで聴いた時に衝撃が走ったんです。「すごい作家さんだ!」って。「いつか私も椿山さんの曲を歌ってみたいなあ」と思いながら過ごしていました。その後、今回の候補曲が揃って聴く機会があって。そのときは作家さんの名前がない状態だったんですけど、直感で「これだ!」選んだ曲が「Catcher」でした。
──あれ? 前もそういうことがありませんでした?(笑)
「ジレンマ」のときのGRPさんもそうでした!(笑) 今回もそんな感じで、ご縁を感じました。この曲は、楽器の使い方、言葉選び……椿山さんの“らしさ”が出ていて素敵だなって。椿山さんに「どんなイメージで書いてくださったんですか?」と聞いたら、椿山さんの中の富田美憂のイメージで書いてくださったらしくて。「受け身よりか攻める印象だったので、ギラギラした感じにしました!」と。
──いつもよりハイトーンな歌声の印象があります。新しい表情が引き出されていますよね。
サビはほぼファルセットで歌っていて。レコーディングしたときは「私には少しキーが高いかも」と思い、半音下げたパターンもやってみたんです。でも原曲のキーのほうが新しさがあって良い!と。自分で聴いていると、良い意味で「自分じゃないみたい!」って思いました。オケが全体的に華やかで。レコーディング用の資料としていただいた音源をいただいていたんですが、その後「ちょっとブラッシュアップしました」と新しい音源をいただいたんですけど、歌を入れた後のトラックダウン時にはさらにブラッシュアップされていて。楽曲のパワーに私の声がついていけるかな、って不安はあったんですけど……でも良いものに仕上がったと思っています。今までにないものを引き出していただいて、感謝の気持ちでいっぱいです。