このコラムでは畠中さんのお仕事や好きなもの、感銘を受けた作品などについて語っていきます。
今回選んだ作品は映画『東京物語』。 実はこの映画、大学生時代、冒頭10分だけ見て、それ以降見るのをやめていました。当時映画を見ようと思った僕には、あまりにも早すぎると思ったからです。なんてったってこの映画は1953年の作品、BGMもほとんど使われてなく、ものすごく静かに時が過ぎていきます。 だから、今回もそのイメージがあるので、重い腰が上がらなかったのですが、いや、最近俺、昭和を調べることにハマってるし、この映画を見切ることは、大人になるってことなんじゃないのか!と自分を奮い立たせて観ました。 やられたぜ。確かにこの映画の中に昭和はあったけど、もっともっと奥深い、普遍的な感情がありました。超刺さる。ぶっ刺さる。これ、観る人によっては本当に辛い映画なんじゃないでしょうか。すごく揺さぶられます。 広島、尾道に暮らす老夫婦の2人が、東京に暮らす子供達を訪ねて上京する話なのですが、長男、長女家族共に、日々忙しく働き、最初の方はもてなしたものの、次第に、老夫婦を持て余すようになります。そしてついには、ゆっくりしておいでと、2人を熱海の安旅館に追いやってしまうのです。 そんな中で、戦死した次男の妻である紀子だけが、この老夫婦に、暖かく接してくれます。それは、長男長女家族よりも実際自由が効くからというのもあるかもしれませんが、ある種血の繋がりがないからこその距離感がおりなす自由があるからかもしれません。だからこそ、彼女の行動、思いやりは、ものすごく美しく、胸に温もりを与えてくれます。と同時に、その美しさを持ち続けて、東京で生きることの難しさを想ってしまいます。 最後はネタバレになるので書けませんが、もう本当にものすごく芝居的に大好きなシーンがあります。紀子に対して、年老いた父が「ありがとう。ありがとう」というシーンがあるのですが、感情を込めようとしているわけでもなく、もうなんの気なしにこの言葉を言う姿を見て、観てるこちらは涙が止まりませんでした。もうこう言う芝居を見てると、芝居の上手い下手とかそう言うのはわからなくなると言うか、ただただその圧倒的な「すごさ」に、涙を流すしかないのだなぁともいました。ほんと、こんな芝居してみたいです。 この映画の監督の、小津安二郎さんという人は、とにかく自分の「映画様式」を追求していった人で、同じテーマを繰り返し描いたり、ローアングルのカットや、人物の捉え方も全てが独特で、それを生涯貫き続けたそうです。これはもうまさに「芸」。極めれば極めるほど美しく胸に響く。それを目の当たりにした気がしました。恐るべき映画。ぜひ皆様もご覧ください。 |
次回の「畠中祐のゆっくりすくすく」は、10月30日(土)に更新予定! お楽しみに!
畠中さんに質問!
Q:最近で最もご自身を褒めたくなった瞬間を教えてください!(千葉県・すじこ)
すじこさん!質問ありがとうございます!!!
そうですね、物覚えが悪いからこそ、何か一つのことを覚えられたときには、自分をとんでもなく褒めるようにしてます!!最近だと、家のドアの鍵をこまめに閉める、です!!!閉めるたんびに自分を褒めてます!!!
畠中祐が今、答えます!!!
畠中さんが動画でも質問にお答えしていきます。
今回のお便りのテーマは「あなたの印象に残っているCMソング」です。
次回のお便りのテーマは「あなたの好きなにおいは何ですか?」です!
10月1日は「香水の日」ということであなたの好きなにおいを募集いたします!
「柔軟剤のにおい」「プールのにおい」「ガソリンスタンドのにおい」「映画館のポップコーンのにおい」など。
皆が好きないいにおいから、人には理解されない変わり種でもOKです。
畠中さんへの質問&お便りを大募集!
はたなかたすく
8月17日生まれ。神奈川県出身。賢プロダクション所属。主な出演作はアニメ『RE-MAIN』(猪俣ババヤロ豊)、『MARS RED』(栗栖秀太郎)、『SK∞ エスケーエイト』(喜屋武暦)、『ましろのおと』(田沼総一)、『ダイヤのA ActⅡ』(浅田浩文)、『うしおととら』(蒼月潮)、『KING OF PRISM by PrettyRhythm』(香賀美タイガ)ほか。